イベリス
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第七十七話 夏休みの勉強その十五
「修羅はな」
「救えるのね」
「そうだろうな、実物に会ったことはないが」
生きものと違ってというのだ。
「生きものを救えるならな」
「成程ね」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「餓鬼になるとな」
「人間じゃ無理ね」
「地獄より無理なんじゃないのか」
「地獄の方が下でしょ」
餓鬼道よりはというのだ。
「まだ」
「ある人は餓鬼道の方が酷いと言うな」
地獄道よりもというのだ。
「どうもな」
「そうなの」
「そこまで餓鬼が酷いということだな」
「地獄に堕ちる人って悪人ばかりよね」
「ああ、極悪人ばかりだ」
そう言っていい罪を犯した者達ばかりだというのだ。
「もうな」
「その地獄の亡者よりもなの」
「餓鬼はな」
「さらに酷いっていうの」
「ああ」
そうだというのだ。
「若しかしたらな」
「だから人では救えないのね」
「地獄よりも酷いとなると」
そう考えると、というのだ。
「人間では無理だな」
「そうなるのね」
「学校の勉強に熱心なのはいいことだ」
咲が夏休みもそうであることについてはだ、父はいいとした。
「やっぱり進学したいならな」
「勉強した方がいいわね」
「留年もしないしな」
「一応留年の心配はないみたいね」
咲もこのことは自分でわかっていた。
「有り難いことに」
「赤点は取ってないな」
「一つもね」
「出席も足りてるしな」
「じゃあ大丈夫ね」
「そもそも高校で留年は滅多にないしな」
父はあらかじめという口調でこのことも話した。
「自分に合ったレベルの高校に入学するしな」
「テストでね」
「私立だったら中高一貫もあるが」
「一貫だと尚更?」
「まずないな、だからどんな高校でもな」
「まず留年の心配はないわね」
「中には兄弟で同じ学校に行ってな」
そうしてというのだ。
「二人共留年した人達もいたらしいが」
「そんなこともあるの」
「流石に学校はじまって以来だったらしいな」
「やっぱりそうよね」
「大体留年自体が稀だからな」
「それで私はなのね」
「大丈夫だ、それで今から進学を考えて勉強することもいいが」
それと共にというのだ。
「世の中のそうしたこともな」
「勉強することね」
「いくら勉強が出来ても今夜お父さんが話したみたいな人間だとな」
「意味ないわね」
「失敗するどころじゃない」
人生にというのだ。
「破滅するからな」
「自分がそうなるから」
「人様に迷惑もかけてな」
「どっちもやらかすから」
「ならないことだ、だから人生の勉強もな」
「していくことな」
「そうしていくといい、頑張るんだぞ」
「わかったわ」
咲は父の言葉に頷いた、そうしてだった。
この日は部屋に戻ると寝るまで勉強した、そして次の日も頑張るのだった。
第七十七話 完
2022・9・1
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