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イベリス

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第七十七話 夏休みの勉強その九

「ここはこうした店だって言う店員がいたらな」
「本当にその店終わりね」
「そうならない筈がないだろ」
「そうよね」
「だからな」
 それでというのだ。
「お店を潰したくなかったらな」
「もうそんな人は最初から雇わない」
「そうだ、人間そこまで酷いと更正もしないしな」
「酷過ぎて」
「そうなるからな」
 それだけにというのだ。
「だからな」
「それでなのね」
「最初から雇わないことだ」
「世の中酷過ぎると更正もしないっていうわね」
「人間はな、咲もわかってるな」
「聞いてるからね、前からそうした人のことも」 
 咲は父に難しい顔で答えた。
「お父さんも言ってたわね、働かないで図々しくて人のお家に勝手に上がり込んで大飯食べるっていう」
「あの人か」
 知っている、そうした返事だった。
「あの人もそうだな」
「更正しなかったのよね」
「酷過ぎてな」
 それでというのだ。
「今誰からも見放されて行方不明だ」
「そうよね」
「感謝しないで反省しないでな」
「奥さんに養ってもらってそうで逃げられて」
「それでも働かなくてな」
「それでよね」
「一旦ホームレスになってだ」 
 破滅と言っていい状況に陥ってというのだ。
「助けてもらってな」
「衣食住保証してもらって」
「それでも感謝しないでな」
「そうしてくれている人達の悪口言い出して」
「自分が一番偉いと思っていてだ」
 そのうえでというのだ。
「その人達の言っていることに顔を背けてな」
「そんなこと言って」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「親戚のお葬式で家族でもないのに上座に上がってだ」
「別のお葬式で喪主やるつもりだったとか?」
「そんな人間を誰が喪主やらせるんだ」
「ないわよね」
「過去を見てな、その時もお世話になっていてな」
 文句を言っている相手にだ。
「そこでも何も出来ていないのにだ」
「喪主なんて出来ないわね」
「それで出来なくてな」
「不貞腐れたのよね」
「そこで他の人のお葬式でな」
「勝手に上座に上がって」
「お葬式の後の昼食の時にな」
 咲にこの時にと話した。
「それでだ」
「遂に皆から見放されて」
「今行方不明だ、五十過ぎでそうだった」
「五十過ぎでもそこまでわかってなかったの」
「自分はこの世で一番偉いと思っていてもな」
 それでもというのだ。
「何もしたことがないし出来ないし何も持っていなかった」
「何もなかった人ね」
「悪い意味で子供だった」
 五十過ぎでもというのだ。
「だから更正もな」
「しなかったのね」
「その人のことも知ってわかった」
 そうだったというのだ。
「もうな」
「酷過ぎる人は更正しないのね」
「ああ、更正するにもレベルが必要なんだ」
「そうするにもなのね」
「ああ、ある程度の人でもないと」
 さもないと、というのだ。 
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