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展覧会の絵

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第十四話 泣く女その八

「まずは両手両脚を切断して」
「・・・・・・・・・」
 男は聞いた。十字のその言葉を。だが言葉を出すことはできない。やはりその顎がないことが言葉を奪っていた。言葉は下顎がないと喋れないからだ。
 だからだ。彼は言えない。そして十字はその彼にさらに言っていく。
「目をくり抜き耳を潰すんだ。人間の感覚を完全に奪うんだよ」
「・・・・・・・・・」
「そしてそのうえで晒しものにする。君は死ぬまで晒しものになるんだ」
 その無残な姿でだ。そうなるというのだ。
「君の犯してきた罪に相応しいね。それに」
 さらにだとだ。十字は言っていく。
「君の手下達も皆裁きの代行を下すよ。彼等はどうしようか」
 その残虐な殺し方をだ。十字は無表情で述べていく。
「首を切ろうか。それも生きたまま」
「・・・・・・・・・」
「君は内臓を出したまま人豚になるんだ。今からね」
 こう言ってだ。十字はそのナイフでうつ伏せになっている男の両手両脚の付け根に切り口を入れた。そうしてその両手両脚をその手でだ。
 思いきり引き千切った。恐ろしい力だった。 
 手足を引き千切られた男は絶叫する。しかし声は出ない。下顎がないからだ。
 その男の痛みでもがき苦しむ顔を無表情で見ながらだ。そのうえでだ。
 十字は今度は目に指を入れてくり抜き耳に棒を突き刺した。そうして男を人豚にした。
 そしてそれからだ。呼んだ男のその手下達もだ。
 風の様に舞い肉泥とした。その翌朝だった。
 また警官達が顔を顰めさせていた。そのおぞましい事件現場を見てだ。
 彼等はだ。こう言うのだった。
「またですね」
「ああ、まただな」
「酷いものですね。今度もまた」
「両手両脚が引き千切られてな」
 男の無残な血塗れの中の骸を見ての言葉だ。
「目をくり抜いて耳を潰してか」
「下顎は奇麗に切り取られてますね」
「しかも腹も割かれててな」
 内臓も出されていた。それもだ。
「こんなえげつないホトケははじめてだな」
「全くですよ。何か俺」
 若い警官がだ。呻いた。そして言うのだった。
「もう吐きそうですよ」
「気持ちはわかる。今はだ」
「ちょっと。吐いていいですか?」
「離れたところでそうしてくれ」
 トレンチの刑事が彼に言う。
「俺も何とか我慢してるがな」
「すいません。じゃあ」
 若い警官は離れてそこで袋を出して吐いた。事件現場にはだ。
 所謂野次馬達が集っている。その彼等も呆然となった顔でいる。その無残な死体を見てだ。
 しかも死体は一つではなかった。その他の死体達もだった。
「真っ二つになったり首切断されたり」
「心臓に手を突っ込まれて潰されたりか」
「金玉蹴り潰されてる奴もいますね」
「そんな死体もありますよ」
 とにかくだ。無残な死体ばかりだというのだ。
「これは酷いな」
「ですね。いつも通りですけれど」
「今回は特にえげつないですね」
 警官達が刑事に話す。彼等も吐きそうな顔だ。
 そしてその検死が為されている死体達を見てだ。刑事は今度はこんなことを言った。
「それでだがな」
「ええ、ホシですね」
「それが誰か、ですね」
「絶対に藤会の人間を殺して回ってる奴だ」
 顔を顰めさせてだ。刑事は言った。
「もう百人かそこいらは殺してるがな」
「殺人鬼どころじゃないですね」
「化け物じゃないですかね」
「俺もそんな気がしてきた」
 刑事もだ。そう思えてきたというのだ。
「ここまで酷いとな」
「ですよね。人の手足って引き千切れるんですかね」
「どんな怪力なんですかね」
「それはできる」
 可能だとだ。刑事はそのことについても述べた。 
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