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ブラックベリー

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第一章

                ブラックベリー
 コーンウォールの話である。
 ガーサという娘は若くして魔女となりこの地で随一の魔法の使い手になっていた、黒い波立つ長い髪の毛に黒い強い光を放つ目に白い肌に長身の鼻の高い女である。
 彼女はもう結婚しているが双子の妹のオールウェン彼女とそっくりであるが髪の毛はブロンドで目の光は穏やかで青い彼女はまだだった。妹は教会にいたが。
 その妹の結婚のことを占ってみたところだった。
「おかしな結果が出たわ」
「おかしな?」
「ええ、貴女は王子様と結婚すると出たけれど」
「王子様と」
「ええ、けれどね」
 それでもとだ、妹を自分の家に迎え入れて話した。
「何が色々とね」
「あるの」
「そうみたいね、ただね」
「ただ?」
「王子様は間もなく貴女の教会に来られるらしいわ」
 オールウェンがいるそこにというのだ。
「そこで一杯のミルクを差し上げたらいいそうよ」
「ミルクをなの」
「そう、それはあるわね」
「いつもね」
 オールウェンはすぐに答えた。
「私も司教様も飲まれているわ」
「だったらね」
「そのミルクをなのね」
「王子様に差し上げたらいいわ」
「そうしたらいいの」
「そうしたら幸せに結ばれるらしいわ」
 妹に占いに使った水晶玉を見せつつ話した。
「ここにはそう出たわ」
「色々あってもなの」
「だからいいわね、貴女はね」
「王子様が来られたら」
「他のものじゃなくてね」
「ミルクをなのね」
「あげなさい、いいわね」
 妹に念押しをして妹も頷いた、そうしてだった。
 暫くして青い上着と白いズボンとマントを羽織った奇麗に切り揃えられた黒髪と森の様な緑の目を持つ少年がオールウェンのいる教会に来た、司教はその少年を見て言った。
「あの方は王子様だ」
「コーンウォールのですか」
「そうだ、トリスタン王子だ」
「あのご高名な」
「兄上であられる王を助けられてな」
「国政に励んでおられる」
「伝説の騎士トリスタン様の名を継がれているな」
 円卓の騎士であった彼のというのだ。
「その方だ」
「あの方がですね」
「ガーサ殿からお話は聞いている」
 司教にしてもだった。
「だからな」
「あの方にですね」
「ミルクを差し上げるのだ」
「わかりました」
 オールウェンは素直に頷いた、そうしてだった。
 王子が遠乗りの中で喉が渇いたので来たと言うとだった。
 オールウェンはミルクを差し出した、するとだ。
 王子は笑顔でだ、こう言った。
「これは有り難い、私はミルクが大好きなのだ」
「そうなのですか」
「だからな」
 それでというのだ。
「この度は心から感謝する」
「そうですか、では」
「有り難く頂く、そしてまた遠乗りでここに来たらな」
 それならとも言うのだった。
「ミルクを頂けるか」
「わかりました」
 オールウェンも頷いた、そうしてだった。
 ミルクを差し出すと王子は美味しそうに飲んでだった。 
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