大阪のたんころりん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「本当に」
「そうだね、これだけ柿があったら」
「暫くはね」
「おやつに困らないね」
「私柿大好きなのよ」
結衣はにこりと笑ってこうも言った。
「甘くて美味しいから」
「そうだよね」
「柿があったら」
「それで困らないね」
「ええ、だから嬉しいわ」
「そうだね、しかしね」
ここでだ、敦弥は結衣に話した。
「柿の実を取っていないと妖怪が出るなんて」
「不思議なことね」
「うん、思えばね」
「そうね、ただ実が実ったら」
「食べろってことだね」
「実は食べられて」
柿のそれはというのだ。
「それで置いておいたらね」
「よくないね」
「食べものをね」
それをというのだ。
「それはよくないから」
「それを言う妖怪だね」
「そうね、じゃあね」
結衣は敦弥に顔を向けて話した。
「帰ったらね」
「柿を食べるんだね」
「そうしましょう、まずは私のお家に帰って」
マンションのというのだ。
「それでね」
「そのうえでだね」
「二人でね、今日お母さんいないから」
「えっ、二人きり?」
「彼氏彼女だからいいでしょ」
笑顔でだ、敦弥に話した。
「それも」
「いや、二人きりって」
「嫌?」
「嫌じゃないけれどはじめてだし」
「はじめてでもいいでしょ」
くすりと笑ってだ、結衣は敦弥に話した。
「何でもはじめてがあるから」
「それでなんだ」
「それに今だって二人じゃない」
こうも言うのだった。
「そうでしょ」
「ああ、同じなんだ」
「だからね」
それでというのだ。
「柿はね」
「二人でだね」
「お部屋で食べましょう」
「そうしようね」
「何なら」
結衣はくすりと笑ってこうも言った。
「柿以外も食べる?」
「えっ、それってまさか」
「何かしらね」
自分の言葉に驚く敦弥にくすりと笑って応えた。
そうして二人で結衣の家で一緒に柿を食べた、だが敦弥はこの時は柿以外のものは食べなかった。二人で彼女の家にいるだけで一杯であったので。
大阪のたんころりん 完
2022・11・29
ページ上へ戻る