恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百三十話 牙刀、しがらみを断ち切るのことその九
「天翔乱姫!」
それを繰り出したのだ。そのうえでだ。
身体を掴んで投げる。そこに牙刀が来た。
頭突きから両腕を前後に広げる。そのうえで。
掌底を繰り出す連続攻撃にかかった。まさに鬼の如き攻撃だった。
「これが俺の渾身の技」
技を出してから言う牙刀だった。
「天龍烈牙だ」
その二つの超必殺技が決め手になった。それでだ。
父も倒れた。しかしだった。
すぐに起き上がる。だがだった。
「ま、まさかここまでやるとは」
「言った筈だ。我々は勝つと」
牙刀がだ。そのふらふらになっている父に言う。
「そして貴様は敗れると」
「狼が敗れるというのか」
「貴様は狼ではない」
父のその言葉をだ。彼は否定した。
そしてだ。こう告げたのである。
「本当の狼は戦い、そしてそこから多くのものを知った者だ」
「それが狼だというのか」
「貴様は戦いしか知らない」
それならばだというのだ。
「それ故にだ。貴様は狼ではないのだ」
「おのれ、では貴様とほたるは」
「狼だ。そして人でもある」
「我とは違うというのか」
「貴様は修羅になった気になっているだけだ」
それが彼だというのだ。
「所詮その程度の輩だったのだ」
「全てを捨てて。戦いだけに生きても」
どうなのか。ほたるもわかった。
「果てはこうなるしかないのね」
「では行くぞ」
牙刀は破った父に背を向けてだ。妹に告げた。
「我等の因果は断ち切られた」
「ええ。それじゃあ」
ほたるもだ。父に背を向けた。そのうえでだ。
二人は共に戦いの場を去った。勝者は明らかだった。
だが、だ。父はだ。
まだ戦おうとする。得意の闇討ちだ。
それを仕掛けようと身構える。だがその彼の前にだ。
一陣の風が吹きだ。張郃と徐晃が現れた。そうしてだ。
彼を侮蔑する目で見つつだ。こう言ったのである。
「所詮は闇討ちしか芸がないのね」
「修羅は修羅でも下種な修羅ね」
これが彼への言葉だった。
「戦いは終わったわ。それでもそうしたことをするのなら」
「私達が相手をするわ」
それぞれだ。槍と大斧を構えて彼に告げた。
そしてだ。一気にだった。
張郃の槍が胸を貫き徐晃の斧がその首を断ち切った。これで全ては終わった。
下郎を成敗した二人はだ。微笑み合いつつ話した。
「よし、これでいいわね」
「ええ。後始末は終わったわ」
「それなら私達もね」
「帰りましょう」
こう話してだった。その屍を後にして森を去ったのだった。
そしてだ。戦いを終えてだ。その帰り道にだ。
ほたるはだ。澄み切った顔でだ。仲間達に言うのだった。
「この世界に来てよかったです」
「それはどうしてだ?」
「親父さんとのしがらみが終わったからか」
グリフォンマスクとマルコがそのほたるに問う。
「それでなのか」
「よかったって言うんだな」
「いえ、そうではなくて」
違うとだ。ほたるは微笑みつつ彼等に話す。
「兄さんと。分かり合えたからです」
「牙刀殿か」
「あの人とか」
「はい、最初は何かって思いましたけれど」
この世界に来てだ。それは本当にだった。
だがそうしたことがあってだ。今はこう言えたのである。
「よかったです。本当に」
「そうか。それは何よりだ」
グリフォンマスクは仮面の中からほたるに声をかけた。
「人は因果を断ち切らなければならないからな」
「だからですね」
「ユーはそれを自分でした」
だからだというのだ。
「それは非常に素晴らしいことだ」
「そうだな。では都に帰りだ」
どうかとだ。マルコも陽気に話す。
「最後の戦いの準備に入ろうか」
「はいっ、そうしましょう」
ほたるの返答はここでも明るいものだった。
「最後の最後まで一緒に戦いましょう」
「うむ、この世界の子供達の為にも」
「気合を入れていくか」
グリフォンマスクとマルコも応える。こうした話をしてだ。
ほたる達は都に戻る。一つの因果が断ち切られた。そしてそのうえでだ。また一つの因果が断ち切られようとしているのだった。
第百三十話 完
2011・12・14
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