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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十九話 ほたる、父を見るのことその十

「感じてきました」
「ほたるもなのね」
「森の中の生きものの気配、昼よりも見えるものが少ないだけ余計に」
「そうじゃ。目だけ見るものではないのじゃ」
 黄蓋は微笑みだ。夜の森の見方をほたるに詳しく話す。
「耳で聞き、そして気配を感じ取りじゃ」
「そうして見るのですね」
「目で見るだけとは限らぬ」
 また話す黄蓋だった。
「そのことへの鍛錬になるのが夜の森なのじゃ」
「だからシャオ達をここに連れて来たのね」
「雪蓮殿や蓮華殿が幼い頃もこうして連れて来たものじゃ」
「目で見るだけじゃないから」
「うむ。シャオ殿は今そうしておる」
「つまりこれも教育なの?」
「そうなるのう。わしは教師ではないがな」
 孫家でのそれは二張だ。三姉妹にとってはかなり厳しい教師である。孫尚香にとっては姉達なぞ問題にならない位怖い存在だ。実は姉達は彼女には怒らないのだ。
 そのことは黄蓋も知っている。そうして孫尚香に話すのである。
「まあこういうことは教えられるからな」
「有り難う。じゃあ勉強させてもらうね」
 にこりと笑ってだ。孫尚香は黄蓋に言った。
「今ここでね」
「うむ。ではほたる殿もな」
「はい、お願いします」
 こうした話をしつつだ。三人は夜の森の中を歩いていく。そしてだ。
 三人同時にだ。眉を鋭くさせた。そのうえでだ。
 彼女達は同時にだ。顔を見合わせて話した。
「来たのう、何かが」
「ええ、何この気配」
 まずはだ。黄蓋と孫尚香が話す。
「この様な物騒な気配は滅多にない」
「オロチとも刹那とも違うわね」
「あの左慈とやらともまた違う」
「これは一体誰なの!?」
「まさか、この気配は」
 ここでだ。ほたるがだ。
 驚愕の顔になりだ。そのうえで言ったのだった。
「父さん!?あの人が」
「何っ、ほたる殿の父君じゃと」
「あの牙刀の目を潰したっていう」
「ひあ、あの人の気配です」
 まさにその男だとだ。ほたるは言うのである。
「間違いありません」
「ううむ、これまで姿を見せなんだが」 
 それはなかった。今までだ。
 しかしここでその気配を感じてだ。黄蓋もだ。
 その手にだ。弓を手にした。孫尚香もだ。
 小弓を出してだ。そのうえで言うのだった。
「出て来なさいよ!いるのはわかってるのよ!」
「そうじゃ。ここにおるな」
 黄蓋もだ。周囲の気配を探りながら言う。
「ほたる殿に何か用か」
「お父さん、一体どうして」
「ほたる、久しいな」
 声だけがだ。娘に言ってきた。
 しかし姿は見せない。その無気味な声だけが彼女に言ってくるのだ。
「見たところ元気な様だな」
「何故あの時お兄ちゃんの目を」
「さてな。しかしだ」
「しかし?」
「その目はなおったな」
 このことは知っていたのだった。彼もだ。
 そのうえでだ。こう娘に言ってくるのだった。
「ならば我とも充分に戦えるな」
「やっぱりお兄ちゃんと」
「牙刀だけではない」
 ほたるにだ。今度はこう告げる声だった。
 
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