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イベリス

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第七十三話 何の価値もない思想家その十

「クミズっていうけれど」
「日本でも飲めるの」
「そうよ、そうしたお店もあるのよ」
「そうなのね」
「日本は色々な国のお料理が食べられるから」
 そうした状況があってというのだ。
「それでね」
「モンゴルのお料理もで」
「それでモンゴルのお酒もね」
 そのクミズもというのだ。
「飲めるのよ」
「それも美味しいのかしら」
「多分ね」
「じゃあ機会があったら」
「クミズもなのね」
「飲んでみるわ」
 こう母に答えた。
「機会があったらね」
「そうしてみたらいいわ」
「そうするわね」
 咲も言葉を返した。
「何時かね」
「何でも飲んで食べてみることよ」
 母は笑って話した。
「どんな国のものでもね」
「そうしていいのね」
「別に宗教的なタブーもないでしょ」
「うちの家はね」
「何でも食べていいから」
 だからだというのだ。
「それでよ」
「どんなものでもなのね」
「食べてみて」
 そしてというのだ。
「飲めばね」
「いいのね」
「そうよ、それが美味しいものを楽しむことよ」
「何でもそうすることが」
「偏食だとね」
 それならというのだ。
「どうしてもね」
「その幅が限られるのね」
「そうなるから出来るだけね」
「偏食でなくなることね」
「それに身体にもよくないから」
 偏食はというのだ。
「何でも食べる様にしてね」
「それが一番よね」
「咲は元々好き嫌い少ないけれどね」
「そういえば昔から何でも食べるわ」
 母に言われてこれまでの食事のことを振り返ってだった、咲は実際にこれと言って嫌いなものはないことに気付いて言った。
「お肉もお魚もお野菜もね」
「果物もでしょ」
「何でも食べるわ」
「人参やピーマンも嫌いじゃないわね」
「子供の頃辛いものは苦手だったけれど」
 それでもとだ、咲は自分から言った。
「今は大丈夫だし」
「唐辛子や山葵もね」
「お寿司の山葵も」
 これもというのだ。
「平気になったわ」
「お料理出す方は嬉しいわ」
「何でも食べるから」
「鰯も食べるからね」
「流石に骨は残すけれどね」
 鰯のそれはというのだ。
「中には骨ごと食べる人もいるけれど」
「鰯とかはね」
「土壌も食べるし」
「土壌は基本関東らしいな」 
 父が言ってきた。
「関西じゃ食べないんだ」
「そうなの」
「柳川鍋なんて関西にはないぞ」
「へえ、それは知らなかったわ」
「あくまで関東でな」
 こちらの料理でというのだ。 
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