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星河の覇皇

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第八十二部第三章 国債の発行その三十六

「三十になる頃にはね」
「当時は薄毛の特効薬もなく」
「もう一気にね」
「それこそですか」
「来たんだよ」 
 何がきたのかは言うまでもなかった。
「それこそね」
「そうですか」
「昔は本当にね」
「薄毛の特効薬がですね」
「なかったからね」 
 これは人類の歴史のうえで長くなかった妙薬だった。
「だから昔は早い人なら二十代からね」
「その若さで、ですか」
「そう、来る人はね」
「来てですか」
「もうね」
「そうなっていましたか」
「件の王も」
 その彼もというのだ。
「二十代でね」
「きて、ですか」
「なくなってしまったんだよ」
「それが気の毒ですね」
「エウロパの人でもだね」
「同じ人として」 
 王妃は同情を込めて言った、尚王妃の髪の毛は豊かで長い白髪だ。実はこれが彼女の内心の自慢の一つでもある。
「思わざるを得ません」
「ご本人は笑っていたらしいよ」
「その薄毛にですか」
「結婚して子供が出来ても」
 この子が後のイギリス王になったことは言うまでもない。
「僕より髪の毛があるよとね」
「言われたのですか」
「自分のその薄毛を笑いの種に出来る」
「出来た人だったのですね」
「その様だね、連合市民であれば」
 それこそとだ、王はこうも話した。
「立派なね」
「器の大きい人としてですね」
「知られていただろうね」
「そうした方でしたか」
「その様だよ」
「そうですか」
「今も歴史に名を残しているし」
「イギリス王としてだけでなく」
 このことだけでも歴史に残るがというのだ、君主の特権の一つとして即位するだけで歴史に名が残るということがあるがイギリス王はとの中でも特にである。
「その器でも」
「人物としてもね」
「そうでしたか」
「二十世紀のイギリスは」
 王は歴史のことをさらに話した。
「二十一世紀に入ってもだけれど」
「確かその頃は」
「女王がずっと君臨していたよ」
「エリザベス二世ですね」
「一世の名を継いだ人だよ」
 処女王と呼ばれイギリスの歴代君主の中でも特に有名な君主の一人だ。
「若くして即位して」
「そうしてでしたね」
「実に長い間王位にあって」
 そのうえでというのだ。
「イギリスの歴史と共にあった人で」
「その王の祖母にあたる方でしたね」
「当時のイギリスは衰退期にあったけれど」
 それでもというのだ。
「国際的な地位は保ち続けた」
「その頃の君主でしたね」
「君主としてしっかりしたものは持っていたよ」
 その女王もというのだ。 
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