イベリス

「けれどです」
「今日は今から多くて」
「繁盛してるわね」
「こんな日もあるんですね」
「うちのお店って有名でしょ」
「店長さんが評判ですから」
　占いが当たるとだ。
「お値段も手頃で」
「若い人も来てね」
「それで、ですね」
「結構繁盛してるけれど」
「大抵は夜からですね」
「サラリーマンやＯＬさんが多いわね」
「芸能人や会社の経営者の人もですね」
　そうした人達もというのだ。
「よく来られますね」
「そう、そしてね」
　それでというのだ。
「芸能人の人は一見ね」
「わからないですね」
「サングラスかけて帽子被ってだから」
「そうした人がお店に来られたら」
「目立たない服装でね」
　それでというのだ。
「誰かわからないけれど」
「逆に言うとそうした外見の人はね」
「そこそこ以上に名の知られたですね」
「そうした人よ」　
　芸能界でというのだ。
「それで小山さんもわかるでしょ」
「はい」
　咲もこれまでこの店で働いてきたのでその通りだと頷けた。
「結構来られますね」
「あの世界色々あるからね」
「浮き沈みの激しい世界ですね」
「だからね」
「占いを聞いてですね」
「これからどうしたらいいのかをね」
　占いを通じてというのだ。
「そうしてね」
「芸能界でやっていってるんですね」
「一寸先は闇と言うけれど」　
　世の中はだ。
「芸能界は特にね」
「そうした世界で」
「だからね」
　それでというのだ。
「当たる占い師の人がいたら」
「占ってもらって」
「これからどうすればいいのか聞いてるのよ」
「切実な理由なんですね」
「そうよ、けれどね」
「けれど？」
「芸能界の人ってわかるでしょ」
　咲にこうも言ってきた。
「その外見で」
「誰かはわからなくても」
「素顔は隠して誰かわからなくても」
「もう芸能界だとそうした外見で来ますから」
「この人は芸能界の人だってね」
「わかりますね」
「おおよそね、けれどそれはね」
「お店としてはですね」
「誰かわからなくても」
　それでもというのだ。
「気にしないことよ」
「誰が来られても」
「そうよ、こうしたことを言わないこともね」
　これもというのだ。
「お店のマナーよ」
「常識ですね」
「そうよ」
　その通りだというのだ。
「だからそこは守ってね」
「そうします」
　咲は先輩のその言葉に頷いた。