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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第99話 重力の魔窟に向かえ!ヘビーホールを攻略せよ!

 
前書き
 原作では祐斗の聖魔剣を参考に完成させた閃光と暗黒の龍絶剣ですが、この作品では過去に完成させているという設定にしていますのでお願いします。 

 
side:イリナ


 こんにちは、イリナだよ!前回私達はメルクさん……ではなく弟子のルキさんと出会いメルクの星屑について話しを聞いたの。


 そしたらメルクの星屑の在りかについて話しを聞くことが出来たから私達は『ヘビーホール』と呼ばれる地下洞窟に向かっているところよ。


「ここがヘビーホールの入り口だ」


 ルキさんに案内されてヘビーホールに来たんだけど、私達の目の前には大きな口を開けているような深い亀裂が広がっていた。


「ここがヘビーホールね、何だか重苦しさを感じるわ」
「ええ、ここが危険地帯だってわたくしの中のグルメ細胞も警戒していますわ」


 リアスさんや朱乃さんは目の前の大きな穴を危険そうに見ている。流石私達よりも多くの冒険をしてきただけの事はあるわね、警戒心が強いわ。


「何だか体が重く感じますぅ」
「もう既に重力の影響が出てるみたいだ。この中を進んでいけばいくほど重力が強くなっていくんだろう?修行とはいえこんなところに行こうとするお前らには呆れるぜ」
「ふふッ、それだけグルメ界と言う場所に期待してるんですよ、皆」


 ギャスパー君は体が重いって言うけど確かにさっきまでより体が重く感じるわね。


 そう思ってるとアザゼルさんがこの辺りの重力が強くなっていると言い、修行とはいえこんなところに入ろうとする私達に呆れた視線を送っていたわ。


 でもアーシアさんの言う通りグルメ界に行きたいから頑張るのよ。


「イッセー、この先からヘビーホールになる。感じていると思うが既に重力は増加しているんだ、下に行けば行くほど重力は強くなっていく。更にこの辺りに住む猛獣の捕獲レベルはアベレージ50を超える、クセの強い奴も多いからくれぐれも気を付けてくれ」
「おう。態々見送りに来てくれてありがとうな、ルキ」


 これ以上先に進むとルキさんは戻ってこれなくなる可能性があるからここでお別れね。


「イッセー、どうか師匠の事を頼む」
「ああ、必ず最下層まで行き真実を調べてくる。期待して待っててくれ」
「……分かった、気を付けてな」


 ルキさんはそう言って帰っていった。仕事が沢山あって工房から離れるわけにはいかないのに見送りに来てくれてルキさんは良い人ね。


「よし、じゃあ早速降りていくぞ。念のために言っておくが悪魔の皆やアザゼル先生、あとイリナやルフェイといった飛べるメンバーは羽根を広げたり黒い靴や魔法で飛ぼうとはしないでくれよ。増加した重力で普段の感覚がつかめずに落ちてしまう恐れがあるからな」
「分かったわ。気を付けて行きましょう」


 イッセー君の指示にリアスさんが代表して答える。黒い靴が使えないのは面倒ね、でもイッセー君の言う事に間違いなんてないんだからしっかりと守らないとね。


 それに私は黒い靴が目立つけど、エクソシストとして武器の扱いはお手の物よ!祐斗君から魔剣を借りてるから戦闘面では後れを取らないわ!


 そして私たちは深い谷底を進んでいくのだった。


―――――――――

――――――

―――


 暫く下に降りているけど全然そこが見えないわね。しかも普段は黒い靴で飛んでるから実感しにくいんだけど、こうやって足で降りていくのって想像以上に大変ね。帰ったらもっと肉体的なトレーニングをしないといけないわね。


「ほら、イリナ。掴まれ」
「ありがとう、イッセー君」


 先に先行しているイッセー君に手を差し伸べてもらいゆっくりと地面に足を付ける……おっとっと。


「大丈夫か?」


 体勢を崩した私をイッセー君が掴んで受けとめてくれた。


「うん、大丈夫だよ。ありがとう、イッセー君。でも予想以上に動きにくいね」
「ああ、普段慣れている重力より徐々に強くなっていくからな。自分で思ってる以上に動きに影響が出てくる」
「そっか、普段と同じように行動しようとしたら駄目なんだね」


 ちょっと体が重くなったと思ったけど、それだけで動きに影響が出ちゃうんだね。私達が普段どれだけ快適な環境で生活してるのか身に染みるよ。


「アーシアとティナは大丈夫か?ルフェイの作った重量の影響を軽減する指輪はちゃんと効果を発揮してるか?」
「はい、今はまだ全然大丈夫です」
「私も大丈夫よ」
「そうか、ただ重力が増加していくっていうのは肉体的にも辛いがどちらかと言えば精神的にもクるからな。二人は俺達と違って体は普通の一般人だから、体調が悪くなったら直ぐに言ってくれ」
「分かりました」


 アーシアさんとティナさんはルフェイさんが作った重力の影響を軽減する指輪を嵌めているわ。


 グルメ細胞を持っているイッセー君、悪魔や堕天使の皆は肉体的に強いし、私やゼノヴィアが着ている教会のエクソシスト専用スーツは環境の変化に対応できるように魔法がかけられているの。


 でも二人は一般人と同じ身体能力だからイッセー君は猶更心配なのね。でもやっぱり二人は根性があると思うわ、だって全然苦しそうな顔をしていないんだもの。


「それにしてもこの指輪凄いな、俺なんて全然重力の影響を感じないぜ」


 アザゼルさんは自身の指にはめた重力の影響を軽減する指輪をジッと見ていた。


「なんで堕天使である貴方がそれを付けてるのよ?肉体的には私達より強いでしょ?」
「だって無理なことはしたくないからな。俺はレアな素材が欲しいだけで修行したいわけじゃないんだ」
「そんな理由で付いてきたのね。まったく……」


 リアスさんの言う通り堕天使で私達より長い年月を過ごしているアザゼルさんはこの環境を耐えられるはずなんだけど、本人は楽がしたいって言うからリアスさんが呆れていた。


「いやいや、そんな顔するなって。今は無理だが俺がこの世界の素材を知っていけば完全に重力の影響を無くす道具を作れるようになるかもしれないだろう?それだけじゃなく極端に熱い場所や逆に寒い場所にも行けるように出来る道具が作れるようになるかもしれないだろう?そうすれば多くの美食屋が行動範囲を広げることが出来るんだぜ?」
「なるほど、それは良いかもしれませんね。実際に強い猛獣は少ないけど過酷な環境の場所はG×Gには多くあるし、それで死んでしまう美食屋も多いですからね」


 アザゼルさんは自分が多くの素材を手に入れれば環境による被害を無くせる道具を作れるかもしれないと答えて、イッセー君もいいかもしれないと言った。


「確かにもっと多くの美食屋の人が行動範囲を広げられるようになればそれだけ食材を確保できるって事になりますからね」
「今問題になってる食料の分配に差が出るっていう問題も解決できそうですね」


 祐斗君は環境の被害を無くせれば多くの美食屋が活動できる範囲が増えて、結果的に食材を多く確保できるようになると言い、ギャスパー君はそれで今この世界で問題になってる食料を平等に分配できないという問題が解決するかもしれないと言った。


 難しい問題はよくわからないけど、要するに沢山の人が美味しい食材を味わえるって事よね?それって良いことだわ!


「でも悪用されないかしら?今でも絶滅しかけている貴重な猛獣や食材を乱獲したりする奴らがいるのよ」
「そりゃそうだがリスクだけを恐れて行動しないってのは駄目だろう。それじゃ技術は進歩していかない」


 リアスさんはそんな便利な道具を世に出したら悪用する人が出るのではないかと言うと、アザゼルさんはそれを肯定しつつも出さないという選択肢は無いと答えた。


「技術っていうのは日々進歩していくものだ、便利なものが出来れば皆が喜ぶが絶対に悪用しようって奴は出てくるのが世の常識だ」
「確かにこの世界でもGTロボが美食會に悪用されていますね……」
「あのロボットは凄いよな。D×Dではまだあそこまでの技術は無い、一体貰えないかな?」
「先生、話がそれてますよ」


 アザゼルさんは技術の進歩は良いことだがそれを悪用する人間は必ず出てくると言い、朱乃さんはGTロボという物について話しをする。

 
 私達は見た事ないけど確かベジタブルスカイで見た謎の生物によく似たロボットなのよね?アレを美食會って奴らが悪用してるみたいなの!


 美食會はアイスヘルで出会ったけど酷い奴らだったわ!そんな奴らが悪用してるなんて悲しいわね……


 アザゼルさんはGTロボに興味があるらしく一体貰えないかと呟く。でも話がそれたのでイッセー君がツッコミを入れた。


「おっと悪いな、まあ要するにキチンとルールを決めて取り締まっていくのが大事だって事だ。車だって日常的に使うが使うには免許証……つまり資格がいるだろう?仮に環境に適応できるアイテムができたら同じように資格の制度を作ればいい」
「なるほど、確かにそれなら無知による事故もある程度は防げそうね……」


 アザゼルさんはルールを作って資格を取らないとアイテムを使えない様にすればいいと答えて、リアスさんも同意する。


 ……難しい話は頭が痛くなっちゃうよー。


「それでも悪用はされるだろうがそんな事を言ってたら危険なモンは何も使えなくなっちまうからな」
「そうですね。車だって事故を起こすしそればっかりはどうしようもないです」


 資格の制度を作ってもお供養する人はいるとアザゼルさんは言い、小猫ちゃんも同意する。事故はともかく資格を得ても悪用しようとするどうしようもない人っているんだよね。


「まあ今はあくまでも空論の理論だがいつかはやってやるさ。科学者として、発明家として血が疼くしな」
「なら私にも協力させてください!アザゼルさんがいれば今よりもっと強力なアイテムが作れると思うんですよ!」
「おっそりゃいいな、この世界の先輩としてご教授願うぜ」
「はい、任せてください!」


 アザゼルさんとルフェイさんが協力すればもっと強力なアイテムが作れそうね。


「私もアザゼルさんには期待したいわね。環境の問題を解決できればより多くのてんこ盛りなスクープを追えそうだし夢が広がるわ!猛獣は祐斗君に対応してもらえばいいしね」
「はい、任せてください。ティナさんは僕が守りますから」
「ありがとう、祐斗君!」


 ティナさんはそう言って祐斗君に抱き着いた。うわー、ラブラブねー。


「流石アザゼルさん、大人なだけあって未来を見た発言をしますね」
「だろう?俺だって決めるときは決めるんだよ。ガハハ!」
「私も見直したわ、アザゼル。てっきり人工神器の材料を欲しがってると思ってたわ」
「……そんなことはないぞ」
「あっ、さては図星ね!?見直して損した!」


 イッセー君はアザゼル先生を褒めてそれを聞いたアザゼルさんがガハハと笑ったんだけど、リアスさんの言葉に目を逸らしてリアスさんが何かを察して怒った。


「ねえリアスさん、人工神器ってなんなの?普通の神器とは違うの?」
「人工神器っていうのは聖書の神が作った神器を俺が模範して作った兵器の事だ」
「なに?神器を模範しただと?聖書の神が作った物を真似するなど不敬だぞ!」
「そうよ!アザゼルさんでも許せないわ!」


 私はリアスさんに人工神器の事を聞くとアザゼルさんが説明をしてくれた。でも聖書の神を崇拝する私とゼノヴィアには聞き捨てならない言葉だわ!


「なんだよ、俺はもともと聖書の神に生み出された天使、云わば息子だぞ?息子の俺が親の真似して何が悪いんだよ?」
「むっ、そうか……い、いや待て!貴方は欲を持って駄天してるじゃないか!聖書の神を裏切ったようなものだ!ミカエル様ならまだしも貴方がそんな事を言っても説得力はないぞ!」
「そうよ!堕天してるじゃない!」
「チッ、普段は馬鹿そうなのにこういう時は賢くなりやがって……」
「私達は馬鹿じゃない!」
「失礼しちゃうわ!」


 私達はアザゼルさんから自身は聖書の神が生んだ存在、すなわち息子だろうと聞いて一瞬納得しかけるがそもそもアザゼルさんは堕天使、欲を持ってしまい神の元を離れた親不孝者じゃない!そんな人が息子を名乗ったって納得できない、危うく騙されるところだったわ!


「ならお前らに分かりやすく例えてやるが美食人間国宝と言われた節乃の婆さんと弟子の小猫が全く同じ料理を作ったら、お前らは節乃の婆さんの料理しか認めないって言うのか?お前らが言ってるのはそう言う事だぞ?小猫の飯は食いたくねぇってのか?」
「なに!?それは困るぞ!節乃殿も小猫もどちらも素晴らしい料理人だ!優劣などない、どちらも美味しいんだ!」
「そうね!節乃さんの料理も小猫ちゃんの料理もどっちも食べたいわ!私達が間違っていました!アザゼルさん、ごめんなさい!」
「私も謝る、心の狭いことを言って済まなかった!」
「分かりゃいいんだよ」
「お前らはそれでいいのか……」


 アザゼルさんの例えを聞いて納得した私とゼノヴィアは直に彼に謝罪をした。それを見ていたイッセー君はなんでか呆れた顔をしていた。うーん、呆れ顔のイッセー君もカッコイイわ!


「でも人工の神器って上手く使えるものなんですか?」
「まあ本物と比べるとパワーの安定性がないな。出力も不安定だし使用回数があったりと弱点も多い。だがメリットもある、それは基本的に誰でも扱えるって事だ」
「それは良いですね。現実の武器も威力とかよりも安定して誰でも使えるっていうのが重視されますからね」


 ルフェイさんの質問にアザゼルさんは人工神器のデメリットとメリットを話した。イッセー君の言う通りエクソシストは最初に安定した武器を配給されるわね。私達はその後戦果を挙げて特化した武器を貰えたけど。


「まあ今は試作段階だが今後は三大勢力にも配給してデータを取っていくつもりだ。そうすればデメリットも消していけるだろう」
「へー、因みにどんな人工神器があるんですか?」
「そうだなぁ、例えば『精霊と栄光の盾』、後『刹那の絶園』や『怪人達の仮面舞踏会』といったモンがあるな」
「なんか全体的に中二臭いわね」
「……神器って言うのはそう言うもんだ」


 アザゼルさんは今後三大勢力に人工神器を配給してデータを取るみたいね。イッセー君がどんな人工神器があるのかと聞いてアザゼルさんが得意そうに話すがティナさんのツッコミに顔をしかめる。


「あら?アザゼルおじ様、『閃光と暗黒の龍絶剣』というのは無いのですか?」
「はっ?何でお前がそれを?」
「前に酔ったお父様がおじ様の傑作品の一つだって言っていたのを思い出したので……」
「あいつぅ!娘に言いやがったなぁ!?」


 朱乃さんが言った閃光と暗黒の龍絶剣という人工神器の名前を聞いたアザゼルさんが信じられない物を見たような顔で彼女にどこで聞いたと聞くと、朱乃さんはお父さんであるバラキエルさんから教えてもらったと答えた。


 それを聞いたアザゼルさんは顔を真っ赤にして怒ってしまった。


「どうしたんですか、アザゼルさん?その閃光と暗黒の龍絶剣っていう人工神器になにかあったんですか?」
「やめろ!ソレの名前を言うんじゃねえ!……はぁ、閃光と暗黒の龍絶剣っていうのは俺が昔トチ狂って作った人工神器の事だ。中々の傑作でカッコイイ名前を付けたんだが後になって余りにも中二臭くなっちまったと後悔しているんだ」
「確かに神器の中でも特に中二臭い名前ですね、閃光とか暗黒とか……思春期中学生がやる『僕が考えた一番強い武器』みたいです」
「だが当時の俺は何を思ったのか部下に自慢しまくった。その結果堕天使どころか悪魔や天使にも知れ渡ってな、一時期『閃光と暗黒の龍絶剣提督』なんて酷いあだ名を付けられてからかわれたもんだよ……まさに黒歴史だ」


 イッセー君の質問にアザゼルさんは恥ずかしそうに答えた。私はカッコいいと思うんだけどなぁ、閃光と暗黒の龍絶剣を装備したイッセー君に寄り添って漫画のヒロインみたいなポーズがしたいわね!絶対に絵になるはずよ!


「まあ人にはそう言うものがありますし精神が人間に近い堕天使も黒歴史はあるでしょう、俺は全然良いと思いますよ。閃光と暗黒の龍絶剣提督」
「そうよ、私だって恥ずかしい過去はあるし気にすることはないわよ。閃光と暗黒の龍絶剣提督さん♪」
「お前らなぁ!!」


 イッセー君とリアスさんがアザゼルさんをからかうと、彼は怒って異空間から剣を取り出した。


「げっ、まさかそれは……!」
「そんなに見たけりゃ見せてやるよ!これが閃光と暗黒の龍絶剣だ!」
「ちょっと!そんな危ない物をここで振り回さないでよ!」
「うるせー!人の黒歴史ほじくった奴が悪いんだぁ!!」


 その後アザゼル先生を落ち着かせるのに苦労したわ、大人って大変ね。私の黒い靴はシンプルで良かったわ。


―――――――――

――――――

―――


 それからまた下を目指して進んでいってるんだけど、どんどん重力が増していってるわね。一気にズドンと来るんじゃなくてゆっくりと強くなっていくからストレスが半端じゃないわ。


 だってその度に動きが不自由になってそれに合わせて体に力を入れないといけないの。面倒で仕方ないわ。


「うおっ!?」
「イッセー先輩、大丈夫ですか!?」
「ああ、問題ない。俺が乗っても崩れないから皆も乗って大丈夫だ。ゆっくり降りて来い」
「はい!」


 イッセー君が下りた足場にイッセー君の足がめり込んだ。それを見ていた小猫ちゃんは心配そうに彼に声をかけたが、イッセー君は問題ないと返す。


 今私達は深い谷間に出来た石の足場を渡りながら降りている。周りの壁は垂直に真っ直ぐになっており、この重力では壁を伝って降りることはできないのよ。


 だから足場をゆっくりと降りて行かないといけないんだけど、一歩でも間違えればそのまま下に落ちて行ってしまうくらい不安定なのよね。しかも増加する重力で飛べないから足を踏み外したら一巻の終わりね。


「ふう、この不安定な足場……普段はなんなく行けるんだろうが重力の増加で負担が何倍にも増えてやがる。こりゃ帰りの方が楽そうだな」


 先に先行しているイッセー君は汗をかきながらそう呟いた。確かに上がれば重力が軽くなるから帰りの方が楽そうね。


「イッセー、何か来るわ……」
「ああ、獣臭がするな」
「グルルル……」


 リアスさんが何か来ると言い、イッセー君は壁にある横穴を凝視する。テリーも警戒の唸りを上げているわね。


「皆、構えろよ。ヘビーホールで初めて出会う猛獣だ」


 すると横穴から二つの首を持った硬い甲殻に覆われた猛獣が沢山現れた。


「コイツは『バルバモス』!?深い地下に生息してるとは聞いていたがヘビーホールにも生息していたのか!捕獲レベルは44、強敵だぞ!」


 イッセー君は目の前の猛獣をバルバモスって言ったわ。強そうね……


「来るぞ!」


 イッセー君の言葉と同時にバルバモスの群れが襲い掛かってきた。私はこっちに向かってきたバルバモスの一体の攻撃を回避する。


「ふふん、どうよ……いたっ!?」


 完全に回避できたと思ったのに、右腕に切傷が出来ていた。よく見ると他のメンバーも攻撃を回避しきれずに怪我を負っているのが見えた。攻撃を防御した小猫ちゃんやスタンドで防いだギャスパー君は怪我をしていない。どういう事なの?


「皆、ここは重力の影響が強い!だから普段と同じ要領で動くと知らずに動きが遅れてしまうんだ!」


 そうだったわ、このヘビーホールは重力の影響を強く受ける場所、つまり体の動きも鈍くなってしまうのね!だから回避しようとした私や祐斗君達は体が鈍くなってる事に気が付かずに攻撃をよけ損ねたのね。


「普段よりも一歩早く動くことを意識しろ!そして猛獣の筋肉の伸縮や関節の動き、相手の呼吸など全ての情報を駆使して動きを予測するんだ!見てから回避するんじゃ間に合わないぞ!」
「分かったよ、イッセー君!」


 私は向かってくるバルバモスの一体に向かっていく。私はバルバモスをよく観察して攻撃を予測する。


(……上だ!)


 私はいつもより早く動いてジャンプした。そこにバルバモスの右の首が襲い掛かってきたが回避することが出来た。でもよけ損ねてしまったらしく太ももに軽い傷を負ってしまう。


「しまった、判断が遅れた!」


 判断が遅れた事で回避が間に合わなかったようね。追撃に左の首が襲い掛かってくるが……


「フライングナイフ!」


 イッセー君がナイフを飛ばしてバルバモスの首を切り落としてくれた。


「イリナ、判断はナイスだが少し遅れたな。でもその調子だぜ!」
「ありがとう、イッセー君!」


 私はイッセー君にお礼を言ってまたこっちに向かってきたバルバモスの一体と対峙した。


(今度は同じ過ちはしないわ、よーく相手を見て……右!)


 今度は反応が間に合ったようで怪我を負うことなくバルバモスの攻撃を回避することが出来た。そしてお返しに魔剣を振るいバルバモスの首を切り落とした。


「わっ、凄い切れ味!流石メルク……じゃなかった、ルキさんの研ぎね!」


 私が使ってるのは祐斗君が貸してくれた魔剣だけどここに来る前にルキさんに研いでもらったの。武器の研ぎはしない主義だったらしいんだけど、特別に研いでもらったのよ。


 使い心地は抜群ね!硬そうなバルバモスの甲殻を簡単に斬れちゃったわ!


「はぁっ!『龍巻閃』!!」


 祐斗君は回転しながら二体のバルバモスを横一閃に切り裂いた。彼の和道一文字もルキさんに研いでもらったので普段の何倍の切れ味があるわね!


「喰らえ、『月牙』!」


 ゼノヴィアは祐斗君から借りた魔剣で月牙天衝の簡易版の技でバルバモスを真っ二つにした。デュランダルを使ってないのはヘビーホールを崩さない為ね、あの魔剣もルキさんに研いでもらったから切れ味は抜群よ。


 ただゼノヴィアは最初デュランダルを研いでもらおうとしたんだけど、デュランダルが怒って聖なる力を放出しようとしたので諦めたのよ。


 聖剣は選ばれた人にしか使えないし、デュランダルなんて気性が荒そうだから余計に出来なかったのね。残念だわ。


「アザゼルさん、危なくなったら遠慮なくやってください。不殺のルールは俺だけの決まりなので!」
「はっ、俺より生きてもいない小僧に心配される程俺は弱くねえぞ!」


 イッセー君はアザゼルさんに忠告するが、彼は閃光と暗黒の龍絶剣を振るいバルバモスを4体切り裂いた。


「流石黒歴史ソード、ルキの研いだ魔剣にも劣らない切れ味ですね」
「おい!変なあだ名を付けんじゃねえよ!」
「あはは、すみません。でもそれだけ頼りにしてるって事ですよ」


 イッセー君の付けたあだ名にアザゼルさんが怒った。仲いいわねー、こんな時にする会話じゃないけど余裕の表れにも見えるわね。


 流石堕天使の総督ね、私達よりも人生を生きている分メンタルが強そうだわ。だって自身の黒歴史も惜しみなく使うくらいだしね。


「とはいえコイツらを全部相手していたらキリがないな……アーシア、来い!」
「はい!」


 イッセー君はアーシアさんを呼ぶと彼女を抱きかかえた。


「祐斗、ティナは任せるぞ!おらぁっ!!」


 イッセー君はそう言うと石の足場をパンチで崩してしまった。


「きゃああっ!?無茶苦茶するわねぇ!?」
「これくらいどうってことないでしょう?さあ、メルクの星屑とルキの師匠を目指して更に行くぞ!」


 涙目になりながらも問題なく対処するリアスさん、そんな彼女にイッセー君はサムズアップする。私達は更に下に向かって落ちていった。
 
 

 
後書き
朱乃ですわ。ヘビーホール、想像以上に厳しい場所ですわね。でもルキさんの為に、そしてわたくし達の為に何としても最下層に向かわないといけませんわ。


 あら、こんな所に人がいますわね。もしかしてあの人がメルクさんなのかしら?


 ……えっ、ルフェイさんのお兄様!?どうしてヘビーホールにいるのかしら?


 次回第100話『予想していなかった再会!切れ味勝負、イッセーのナイフVS聖王剣コールブランド!前編』で会いましょう。


 次回も美味しくいただきますわ、うふふっ♡ 
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