イチゴノキ
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第一章
イチゴノキ
アメリカに古くから伝わる話である。冬の精霊ピーボワンはとても年老いていた。
薄い白髪頭で顔は皺だらけで痩せ細っている、彼はテントの中にずっといてだった。
小さなコヨーテの姿をした従者にこう尋ねた。
「何日になる」
「三日です」
従者はこう答えた。
「それだけになります」
「獲物が手に入らなくてだな」
「はい」
従者は弱い声で答えた。
「もう」
「三日か」
古ぼけたテントの中で鼻の辺りまで毛皮で包みつつ言った。
「もう空腹どころではない」
「ひもじいですね」
「全くだ」
こう従者に言った。
「しかも寒い」
「今日は特に冷えますしね」
「どうしたものだ」
「神様に訴えますか」
従者はここでこう提案した。
「そうしますか」
「そうだな」
テントの中に僅かに燃えている火、暖を取る為のそれを見つつ言った。
「ここには何もないからな」
「そうしますか」
「わしもお前もすっかり歳を取ってだ」
見れば従者もそうだった、年老いてかなり弱々しい。
「動きが悪い、それをな」
「神様に訴えましょう」
「それをな、このままではどうにもならない」
「私達は精霊なんで死にませんが」
「これではどうにもならない」
こう言ってだった。
ピーボワンは従者と共に神に助けを訴えた、そうしてからもう夜なので休もうとテントの中の火に息を吹きかけて火の元を消して安全にしてから寝ようとした。
だがその火がだった。
ピーボワンの息を受けると急に燃え上がり神の声がした。
「その願い聞き届けた」
「何と、では」
「私達は助かリますね」
「そうだな、よかった」
「本当にですよ」
従者も喜んだ、そして二人はどういった形で助けが来るかと思っていると。
すぐにテントに白い肌で面長の薔薇色の頬と緑に見えるしなやかな黒髪と若草と若葉で綴られた服を着て薔薇色の頬と小鹿の様な目の少女が入って来た、両手には柳の若葉がある。
その少女がだ、テントの入り口でピーボワンに聞いてきたのだった。
「中に入っていいかしら」
「いいとも、あんたがか」
「そうなの、神様に言われて」
そうしてと言うのだった。
「ここに来たのよ」
「早速だな」
「そうね、それじゃあね」
「中に入ってくれ」
「それではね」
少女は笑顔で応えてだった。
テントの中に入った、するとだった。
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