展覧会の絵
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第十話 思春期その四
だが、だった。最も重要な心はだというのだ。
「そこが問題なのよ」
「じゃあ僕は」
「そう。心を鍛えないと駄目なのよ」
「心はどうすれば強くなるのかな」
「座禅とかあるけれどね」
禅宗のそれをだ。雅は話に出した。
「それとか」
「それとか?」
「最初から心を確かに持つとか」
「心?」
「何があっても負けない。くじけないって思うことも大事なのよ」
「気構え?」
雅の今の言葉を聞いてだ。猛はそれではないかと考えた。
そうしてだ。こう雅に返したのである。
「それかな」
「そう。気構えが大事なのよ」
「何があっても負けない、くじけないって思うことが」
「それ自体が凄く難しいことだけれど」
これも半ば自分に言い聞かせている言葉だった。雅は自分自身のことを思い出しながらそれに潰されそうになりながら。それでもこう言ったのである。
それでだ。また言う彼女だった。
「頑張らないと駄目なのよ」
「頑張ることが」
「そう。それが大事なの」
まさにだ。それがだと指摘してだ。猛を見ていた。
猛は雅のその視線を見た。だが、だった。
やはり彼は気付かずにだ。こう言ったのだった。
「わかったよ。じゃあこれからは心もね」
「鍛えてね」
「そうするよ。それじゃあね」
「それじゃあ?」
「稽古再開しよう」
日常の中でだ。猛は雅に告げた。
「そうしよう。それでいいよね」
「あっ、そうね」
「そうねって」
猛にそう言われてだ。雅はふと気付いた顔になってだ。
そのうえでだ。こう彼に応えたのである。
「いや、だから。その」
「やっぱりおかしいよ。今日の雅」
「そうかしら」
「だから。何か心ここにあらずっていうか」
猛も雅のそうしたところはわかった。それはだ。
だがそれがどうしてなのかはわからない。神ではない彼は。
そしてそれがわからないまま雅と共に稽古を再開した。だが雅の動きはキレのないものだった。猛はそのことはだ。どうしてもわからなかった。
春香は今日も望と一緒に昼食を食べている。席を二つ向かい合わせにしてそのうえで自分が作った弁当を望に渡してだ。そうして食べているのだ。
そしてだ。今日も望にこう言った。
「だから。トマトよ」
「おい、今日も入れてるけれどな」
「嫌いだっていうのね」
「そうだよ。嫌いなんだよ」
眉を顰めさせてだ。望は春香に言い返す。
「俺トマト嫌いなんだよ。いつも言ってるだろ」
「それでもよ。トマトは身体にいいのよ」
「しかもだっていうんだな」
「そう。美味しいじゃない」
このことも言う春香だった。
「だから今日も入れたのよ」
「トマトなくても生きられるだろ」
うんざりとした顔でだ。望は春香に言い返した。
「俺他の野菜は食うんだしな」
「それはそうだけれどね」
「ピーマンだって人参だって食うしな」
「ほうれん草に玉葱もよね」
「ジャガイモだってな」
そうした野菜は食べる望だった。
「それにもやしだってな」
「望がお野菜好きなのは知ってるわ」
「じゃあいいだろ?トマト位」
「だから駄目よ。もっと食べないと」
「それにイタリア料理だとトマト食べるじゃない」
それも言う春香だった。
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