恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十八話 一同、泉で泳ぐのことその十
「だからよ。いいわね」
「わかったわ。それじゃあ」
「そう。気をつけないと」
「何言ってるのよ。飲んでこそじゃない」
しかし荀彧は違った。あくまで飲み続ける。
そうしてだ。こう周りに言うのである。
「お酒は飲んで飲んで飲まないと」
「っていうかあんた本当に酒好きだな」
覇王丸もその荀彧に言う。
「泳がないで飲むからな」
「私泳ぐのとか得意じゃないしね」
「それでか」
「そう、飲むのよ」
泳がないから飲む。まさにそうだというのだ。
「飲んで飲んでね」
「それはいいのですが」
しかしだとだ。ここでだ。
ズィーガーがだ。こうその荀彧に言うのだった。
「お酒を飲んでから泳ぐことはです」
「そう、絶対に駄目なのよね」
「非常に危険です。止めておいて下さい」
「わかってるわ。それはしないから」
「はい、くれぐれもお願いします」
これが荀彧への言葉だった。
「何があろうともです」
「そうそう。お酒を飲むと身体の感じが変わるから」
荀彧自身もそのことはよくわかっていた。学識がここで出る。
「飲んだら冷たい水に入るとかは危ないのよ」
「よくわかってるな、流石に」
「飲むからにはよ。お酒のことも知らないと」
酔って真っ赤な顔でだ。荀彧は言う。
「そうでしょ?危ないじゃない」
「その通りです」
ズィーガーも荀彧のその言葉にここでも頷く。
「くれぐれもお気をつけ下さい」
「まあ飲む量は多いけれどね」
言いながらさらに飲む荀彧だった。
「それはそれ、これはこれよ」
「おう、じゃあもっと飲むか」
覇王丸は機嫌よくそのうえでだ。バーベーキューの肉もかじる。
そして荀彧にだ。皿の上の肉を勧める。
「どうだい?これ」
「ええ、頂くわ」
「あっ、私もいいですか?」
「僕も」
董卓達も覇王丸のその肉を見て言う。覇王丸はその彼女達にもだった。
笑顔でだ。こう返したのである。
「当たり前だろ。皆で楽しくやろうぜ」
「パイもありますよ」
ズィーガーはバーベキュー以外のものも出してきた。
「ギドニーパイ。如何でしょうか」
「豚の内臓のパイですね」
董卓がそのギドニーパイについてズィーガーに尋ねる。
「ズィーガーさんの得意料理の」
「そうです。それも如何でしょうか」
「お願いします。それでは」
「そうね。ちょっと頂こうかしら」
持ち前の素直でなさを少し発揮する賈駆だった。
「それじゃあね」
「はい、では皆で食べましょう」
ズィーガーは笑わない。しかし親切で礼儀正しい態度でだ。仲間達に対するのだった。そうして今は楽しい時間をだ。皆で過ごすのだった。
しかしだった。華陀はだ。離れた場所で怪物達にこう言われていた。
森の中だ。そこにおいてだ。
普段と変わらない姿に戻りいつも通り奇天烈な格好の二人にだ。その話を聞いて言うのだった。
「そうか。北か」
「ええ、匈奴の国よ」
「五胡ね」
「漢の中の拠点はあらかた潰したからな」
それはもうだ。全てしてしまった。それならだというのだ。
「北か」
「ほら、袁紹さんも度々北を攻めてたわよね」
「あの娘が攫われたりしたし」
蔡文姫のことも話される。
「彼等は最初からあそこにも拠点を置いておいたのよ」
「いざという時の最後のね」
「そしてここで遂にね」
「その最後の拠点から仕掛けてくるのよ」
「最後の拠点か。それならだな」
いよいよだ。華陀の顔が険しくなる。
そうしてだ。こう言うのだった。
「本当に最後の戦いだな」
「そうよ。最後の最後よ」
「ラストバトルになるわよ」
妖怪達もだ。今は真剣な顔である。
そしてそれを聞いてだ。華陀も言うのだった。
「この世界、そして仲間達の世界の為にもな」
「そこにいる多くの生ある者達の為にもね」
「勝たないといけないわよ」
「ああ、わかった」
確かな声でだ。華陀は応えた。
そうしてだ。彼はその右手に黄金の針を出した。その針を見ながらの言葉だった。
「ではこの世界の病を癒そう」
「そう、ダーリンならできるわ」
「天下の名医だからね」
「医者王として俺は戦う」
その背にだ。黄金の光をまといながらだった。
「そして勝つ」
「そう、何が何でも勝つわよ」
「二つの世界の為に」
魔物達も世界の為に戦うのだった。確かに外見は人間のものでは断じてない。しかしその心はだ。あくまで人間であり純粋なのである。
第百二十八話 完
2011・12・9
ページ上へ戻る