丸坊主もよし
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第二章
「俺のその金もな」
「ないのね」
「植毛する位はな」
それだけの金はというのだ。
「ないからな」
「それでなのね」
「ああ」
それ故にというのだ。
「それはしないっていうか出来ないさ」
「一番いいと思うけれど」
「それと育毛剤は効くかどうかな」
実際にというのだ。
「わからないからな」
「しないのね」
「効かないものに金使ってもな」
そうしてもというのだ。
「意味ないしな」
「だからそれもしないのね」
「ああ、そっちもな」
「じゃあ鬘は?」
妻はこちらを提案した。
「どうかしら」
「それは気休めだしな」
「隠すだけで」
「意味ないしな」
「何もないのね」
「全く、髪の毛長いと余計に目立つな」
今は七三分けのその髪の毛を触りつつ話した。
「どうしたものか」
「長いと目立つのね」
妻は夫のその言葉に反応した。
「そうなるのね」
「そうだよ、長いとな」
「じゃあ短くしたら?」
こう夫に言うのだった。
「そうしたら?」
「長いならか」
「そう、短くしてね」
そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「目立たない様にするか」
「それも丸坊主にでもしたら」
そうすればというのだ。
「もうね」
「ああ、そこまで短くしたらな」
「薄毛も目立たないでしょ」
「そうだな」
妻の言葉にそれはという顔で応えた。
「じゃあそうしてみるか」
「いいと思うでしょ」
「ああ、もう減ってきたらな」
髪の毛はというのだ。
「止まらないよな」
「こうしたものはね」
「歯と髪の毛はな」
この二つはというのだ。
「一旦悪くなったらな」
「戻らないのね」
「だからな」
それでというのだ。
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