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八条学園騒動記

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第六百七十三話 腐れ外道の顔その十二

「やりたい放題したのよね」
「ベリヤみたいにな、だがな」
「だが?」
「そんなベリヤもな」
 ジョージア生まれのこの人非人とさえ言われる輩はというのだ。
「あれで家族には優しかったらしい」
「えっ、そうなの」
「平気で虐殺をしてシリアルキラーだったがな」 
 それでもというのだ。
「家族にはな」
「優しかったの」
「奥さんにもそうで息子さんにもな」
「嘘じゃないわよね」
「息子さんは生涯父の名誉回復を訴えていた」
 父が処刑された後でだ、尚ベリヤは処刑が決まってから泣き叫んで醜く必死に命乞いをしたという。
「そうしていた」
「そうだったの」
「無論適わずな」
「今も腐れ外道呼ばわりよね」
「そうなっているがな」
 千年以上経ったこの時代でもというのだ。
「それでもな」
「ご家族にはなのね」
「優しくてな」
 そうしてというのだ。
「いい父親だったらしい」
「嘘みたいね」
「屑の中の屑で友人もいなかったがな」
 その様なものは不要と考えていたらしい。
「それでもな」
「ご家族には優しかったの」
「いたいけな少女や女性を嗤いながら何度も殴って殺したがな」
 それも何人もだ。
「それでもな」
「嘘でしょ、やっぱり」
 ラビニアはフックの今の話を聞いて確信した。
「そんなことする奴がね」
「ご家族を大事にするか」
「ないわよ、息子さんおかしかったのよ」
 これまた確信している言葉だった。
「別の人見てたのよ」
「そう思うか」
「そんなことする外道がよ」
 それこそというのだ。
「家族に優しいとかね」
「実は俺も嘘じゃないかと思っている」
「そうよね」
「こうしたことをする奴は人間じゃない」
「本物の意味での化けものよね」
「化けものがそんなことをするか」
 家族に愛情を注ぐかというのだ。
「そんなことはな」
「絶対にないわね」
「息子さんは誤解していたんだ」
「ベリヤが家族に優しかったって」
「そうだ、こうした外道に人間の心があるか」
「愛情もね」
「ある筈がない」
 絶対にというのだ。 
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