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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十六話 ロック、狼を知るのことその九

「その俺が言う。この店は駄目だな」
「いや、駄目なのは違う」
 ここでロックが男に言った。
 彼は立ち上がり男の前に出てだ。こう言うのだった。
「駄目なのはあんただな」
「俺が駄目だっていうのか?」
「そうだ。この店の味はあんたには合わないんだろう」
「まずい。俺の舌は絶対だ」
「いや、あんたは絶対じゃない」
 ロックはそれを否定した。
「それがわからずに店の中で偉そうに喚くあんたが駄目なんだ」
「まずいものをまずいと言って何が悪い」
「店の人に迷惑だな。これは人間として最低限のマナーだな」
「俺はまずい店は許さないからな」
「で、金を取ってるんだな。店から」
 つまりそれはというと。
「あんたはゴロツキだ。ただのな」
「何っ、俺がゴロツキだというのか」
「そうじゃなければチンピラだ。どっちにしても小者だ」
「そうにゃ。御前は最低にゃ」
 猛獲もだ。男に対して言う。
「美味いまずいはあってもそれでも大騒ぎするものではないにゃ。そんなのは駄々っ子のすることにゃ」
「それで営業妨害までして店から金取る。それをカスっていうんだよ」
「そうだよな。正直不愉快な奴だよな」
「こんな偉そうな奴に店にいて欲しくないよな」
「人が美味いっていうのならそれでいいだろ」
「他人の舌に文句つけるなよ」
 店の客達もだ。ロックと猛獲の言葉を聞いてだ。
 そうしてだ。男に対して言うのだった。
「おい、あんたもうこの店に来るなよ」
「そうだよ。出て行けよ」
「営業妨害するなよな」
「さあ、もう出て行けよ」
「そういうことだ。さっさと行ってくれるか」 
 ロックも男に言う。
「帰れ。いいな」
「くっ、後悔するぞ」
「後悔しないな。あんたみたいな小者はすぐに終わるさ」
 こう言ってだ。ロックは男を店から締め出したのだった。その次の日だ。
 男は様々な恐喝容疑で捕まった。そして取り調べの末様々な悪事が見つかった。その結果だ。
 曹操は冷たくだ。こう官吏に告げた。
「こうした小悪党も許せないから」
「それではですか」
「ええ。首を刎ねて頂戴」
 これが曹操の処断だった。
「山丘、字は死浪ね」
「はい、その者をですね」
「都の往来に引き出して首を刎ねなさい。包丁でね」
「包丁で、ですか」
「人の食べものに文句をつけてきたのよ。だったら包丁で死ねれば本望でしょう」
 それでだというのだ。
「だから包丁よ。いいわね」
「はい。とにかく悪事の限りを尽くしていますし」
 料理評論家としてだけでなくだ。やくざ者とも付き合い私服を肥やしてもいたのだ。それが山丘という男だった。
 曹操はそれを許さずだ。あえて厳罰にするというのだ。
「他人の食べものにけちをつける者は死んでも構わないわ」
「では」
 こうしてだった。男は都の真ん中で首を刎ねられたのだった。
 そういうことあった。そしてだ。
 ふとだ。劉備がこんなことを言いだした。
「ねえ。ちょっと考えたんだけれど」
「はい、何でしょうか」
「決戦の前にね」
 己の前に立つ関羽に対して話す。
「皆で宴会しない?」
「宴会ですか」
「うん。それでどうかしら」
 一聞と何でもない話だ。しかしそれがだ。この国で今までなかった宴になるのだった。


第百二十六話   完


                           2011・11・17
 
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