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八条学園騒動記

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第六百七十二話 朝はそうなったその十五

「最悪ですか」
「最低最悪の外道であるやもな」
「そこまで酷いんですね」
「人は人間の心がなければ人間でないが」
「ベリヤはそれですね」
「よくヒムラーと並び称されるが」
 ナチス=ドイツの親衛隊長であり内務大臣だった、ベリヤもソ連の内務大臣であったので同じだと言えた。
「人間としては遥かにな」
「ベリヤの方が酷いですね」
「卑劣で下劣、陰湿で残虐で好色でな」
「いいところないですね」
「なかったぞ」
 博士はまさにと言い切った。
「友情だの仁義だのもなくてな」
「ただ人間の悪い面だけがある」
「そうしたな」
「碌でもない奴でしたか」
「考えてみるのじゃ」
 博士は野上君に言った。
「警官それもそのトップが権力を使って性犯罪を行う」
「殺人まで、ですね」
「それがどれだけ酷いことじゃ」
「無茶苦茶ですね」
「わしはあの時ソ連に行けなかった」
 その動向は観ていてもというのだ。
「真っ先に潰したかったが」
「出来なかったんですか」
「他の管理者達に呼ばれてな」
 そうしてというのだ。
「宇宙樹の傷を癒しておった」
「そうされていて」
「地球自体にもな」
「関われなかったんですね」
「人類にもな、それでじゃ」
「ベリヤものさばったんですか」
「人類の歴史でも最低最悪の輩であったが」
 それでもというのだ。
「どうにも出来なかった」
「残念なことですね」
「うむ、ああした輩も世におるが」
「まずいないですよね」
「だから最悪じゃ」 
 ベリヤはというのだ。
「狡猾な秘密警察のトップが性犯罪者でシリアルキラーじゃ」
「考える限り最悪ですね」
「尚且つサイコパスでな」
 この要素もありというのだ。
「兎角じゃ」
「ベリヤは最悪だったんですね」
「それまでの秘密警察の責任者は人間であった」
 ジェルジェンスキーから続く彼等はというのだ。
「少なくとも自分達の罪もじゃ」
「自覚していたんですね」
「そして人間の情もな」
「あったんですね」
「ベリヤにはその情もなかった」
「人間の長所が一切なかったんですね」
「そんなものは一切取り除いてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「醜悪な部分を肥大化させたな」
「そんな奴だったんですね」
「そうであった、だがこうした奴が出てもな」
 それでもとだ、博士は話した。
「わしは人間が好きじゃ」
「そんな怪物だけじゃないですからね」
「善人もおる、むしろ聖人の方がじゃ」
「そんな奴より遥かに多いですね」
「そうであるからな」
 だからだというのだ。
「わしはじゃ」
「これからもですね」
「人を見ていく」
「そうされますね」
「楽しんでな」
 朝食を食べつつ野上君に話した、博士は戦いの後で自身の人間への想いも真面目に語ったのであった。


朝はそうなった   完


                 2022・6・16 
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