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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第96話 実家に帰ろう!リアスの覚悟と新たな力!後編

 
前書き
 桜の一人称が分からなかったのでこの作品では『僕』と言うようにしました。『私』じゃないのは個人的な願望です。 

 
side:リアス


「はぁぁ……憂鬱だわ」


 イッセーや眷属の子達を部屋に案内してもらった後、私は久しぶりに帰ってきた自室でベットに横になっていた。


「お母様は何故イッセーを家に呼んだのかしら?お礼を言うのなら前の授業参観日の時に来ればよかったのに……」


 私はお母様が何故イッセーを呼んだのか気になった。もしかして私の眷属になってほしいと交渉でもするつもりなのかしら?そんな事をしても無駄なのに……


「どうしてこうなっちゃったんだろう……」


 前は普通に仲良くできていたのに今では喧嘩している。さっきはメンバーの前だから普通でいられたけど、前に電話で話をしたときは酷いことも言ってしまった。


 ……本当は分かっている。お母さまが結婚を早めたのも婿を入れて私が確固たる地位を築いて立派な当主になってほしいからだ。


 お母様は過去にいろいろ苦労をしたらしい。だから娘である私に同じ苦労をしてほしくないからあんなことをしたんだってグレイフィア姉さまは教えてくれた。


 そう、悪いのは私、私が貴族としての義務を果たさずに婚約を無理やり解消したのが始まりだ。


「でも駄目なの……どうしても会いたいの……」


 私は過去に私を助けてくれた人を思い出した。目隠しをされて耳も防がれて猿轡もされて声も出せなかった。手足も縛られていつ殺されるか分からなくて怖くて仕方なかった。


 でも私は殺されなかった。突然大きな衝撃と共に私の体は倒れた、その際に目隠しが外れて空を見ると光り輝く翼を持った人が空の彼方に飛んでいくのが見えた。


 辺りには気を失った悪魔たちがいて私は訳も分からずに遅れてきたお兄様に保護された。


 あれが誰だったのかも分からない、もしかしたら男ですらないかもしれない。でもそれでも構わなかった。


 どうしても私はその人に会いたかった。会ってお礼が言いたかった……


「貴方は何処にいるの、私の王子様……」
『リアスお嬢様、ご夕食の準備が出来ました』
「あっ、分かったわ。直ぐに向かうわ」


 私はボソッとそう呟いた。すると部屋の外からメイドに声をかけられた。


「行きましょう」


 私は身だしなみを整えて部屋を出た。そしてダイニングルームに向かい眷属の皆やイッセー達と一緒に食事をする。いつもならお父様もいるのだけど今日は用事で席を外しているみたいだった。


「いかがですか、兵藤さん。冥界の味は?」
「とても美味しいです」
「お気に召してくださったのなら良かったわ。料理はまだ続きますので心行くまで楽しんでいって頂戴」
「ありがとうございます」


 お母様はイッセーにそう声をかけた。イッセーは普段より丁寧に食べているけど側にあった皿の量はすさまじい物だった。メイドたちが慌てて空になった皿を運んでいるわね。


「兵藤さんは娘の眷属になる気は無いのかしら?今ならいい待遇を用意するわ」
「すみません、俺は悪魔になる気は無くて……」
「あら、どうして?悪魔になれば様々な特典もありますのよ?例えば……女性とか」
「うえっ!?」


 お母様はイッセーの側に行くと手を掴んで自身の指と妖艶に絡ませた。な、なにをやってるのよ!?


「悪魔は力さえあればなんでもかなえられるわ。貴方なら地位だって女だってなんだってほしいがままになる……望むなら私だって……」
「い、いやでも!俺には相手がいるし貴方は人妻じゃ……!」
「あら、悪魔は欲望に素直な生き物なのよ?それに最近主人は相手をしてくれないの。もし貴方が良かったら……ねっ」
「うっ……ううっ……」


 イッセーに執拗にアピールするお母様に私は怒りを感じた。まさかと思ってはいたけどここまで直球に来るなんて……!


 そもそも小猫達はどうしてるのかしら、と思い彼女達を見て見ると……うわぁ、凄く怒ってるわね。小猫は肉食獣みたいな目になってるし朱乃は笑顔だけど青筋を浮かべているわ。


 でも予想以上にイリナも静かね。怒ってるみたいだけど我慢してるみたいだし……


 眷属である小猫と朱乃と違って彼女は私の眷属じゃないからお母様に怒る権利はある。でもそれをしないって事はもしかしたら私を気遣ってくれているのかしら?


 だって招待されたのに暴れたりしたら私の顔に泥を塗るからイリナは我慢してくれているのかもしれないわね。


 イリナの優しさに感謝しつつ、そんな彼女達を無視してイッセーを誘惑するお母様に益々怒りが湧いた。


「お母様、いい加減にしてください!イッセーが困ってるじゃないですか!」


 私はテーブルを叩きながらお母様に抗議した。


「あら、私は貴方の為を想ってこうしてるのよ。リアス」
「だからと言ってその気がないイッセーを巻き込もうとするのはおかしいじゃない!」
「貴方は本当に無知な子ね。赤龍帝を眷属に入れればそれだけで貴方の評価は大きく上がるのよ?」
「だからって……」
「貴方が今悪魔の貴族たちからどう思われているのか分かっていないのかしら?貴族の義務である政略結婚を放棄して自由に遊び惚ける我儘娘……それが貴方の現在の評価よ」
「それは……」


 お母様の指摘に私は反論できなかった。悪魔は力やプライドに拘る、そして貴族の義務は純潔の血を残していく事。いくら力があってもその義務を果たそうとしない私にいい顔をする貴族はいないだろう。


「……分かっています。その火消しの為にお母様たちが動いてくださったのも理解しています」
「ならどうして貴方は私の言う事を聞かないのかしら?ライザー・フェニックスの件は私にも非があります。だから今度は貴方が好きそうな誠実で真面目な相手を選んでお見合い写真を送ったのに貴方は誰も選ばなかった。まさか未だに想い人を追いかけたいなんて言う夢を見た発言をするのではないでしょうね?」
「……」


 私は何も言い返せなかった。だって事実だからだ。


「……お母さま、私は今まで好き勝手に生きてきました。グレモリー家の力を使って好きなものを手に入れてきた。我儘ばっかり言ってきた。そんな私が貴族としての義務を果たさないのは筋が通ってないことも理解しています」
「なら……」
「だから!……私は今日、コレを貴方に渡しに来ました」


 私は懐から封筒を取り出した。それは……


「絶縁状……!?」


 お母様は驚いた顔でその封筒を見る。それはそうでしょうね、だってこれは私がグレモリー家を出ていくと言ったようなものだもの。


「何を考えているの、リアス!貴方ソレを出すという事はどういうことなのか分かっているの!?」
「はい、分かっています。グレモリー家を出るという事は私は上級悪魔ではなくなりますし、眷属も持てなくなります。今まで使えた特権はすべてなくなり下級悪魔以下の存在となるでしょう」


 私が貴族でなくなれば私を狙って動く悪魔や別の勢力は必ず現れるだろう。守ってくれる存在もいなくなるし格好の獲物だ。


 でも私がケジメをつけるにはこれしか考えられなかった。だって政略結婚はしたくないのだから。なら貴族としての立場を捨てるしか方法は無い。


 眷属の皆は驚いてはいない、何故なら事前に話はしていたからだ。


 私の眷属で無くなればこの子達も狙われるだろう、朱乃なんか何回も言い寄られていたし、小猫もトレードを要求される位には可愛らしい。


 祐斗やギャスパーも女性悪魔から人気があるので実は密かに狙われていたのだ。


 今まで何もされなかったのは私が次期グレモリー家の当主になると思われていたからだ。


 だから私はお兄様に眷属を任せても良いと皆に話した。お兄様なら皆を任せられると思ったからだ。


 でも皆は私の好きにしてほしいと言ってくれた、そのうえで私についていくと言ってくれたの。眷属としてじゃなくて家族として……


 だから私は決断できた。お母様やお父様には最後まで迷惑をかけてしまうがこれが私なりのケジメの付け方だ。


「お母様、このような結果になってしまい申し訳ありません。ですが私がいなくなってもミリキャスがいます。あの子なら私以上の当主になれると思っています……本当にごめんなさい」


 私はそう言って頭を下げた。お母さまはそれをじっと見ていたが……


「……ふふふ、なるほど。そこまでするようになったのね」
「えっ?」
「そうやって私達を困らせて要求を聞かせようとする、貴方が小さいころからのやり方だったわね。まさか立場まで使って私達に言う事を聞かせようとするとは……我が娘ながら大した悪魔ぶりだわ」
「お母様、私は……」
「黙りなさい!貴方みたいな我儘娘がそんな覚悟を持ってるはずが無いでしょう!私達を脅そうとしていると考えるのが普通です!違うというのなら今までの行いを振り返ってみなさい!」
「うっ……」


 まさか全く信じてもらえないとは思っていなかった。確かに今までの私は我儘しか言っていないしお母様が信じてくれないかもしれないとは思ったこともある。


 でもまさか一切信用してもらえないなんて……


「リアス、貴方がそんな手を使うというのなら私にも考えがあります」


 お母様の言葉の後に急にイッセーが苦しみだして倒れた。駆け寄ろうとしたアーシアや眷属たちを兵士たちが取り囲んで武器を突き付ける。


「イッセー!?お母様、一体何を……」
「料理に毒を持っておいたのよ。それもただの毒じゃないわ、『サマエルの血』よ」
「そ、そんな……!?」


 お兄様から聞いたことがあるわ。サマエルの血、それは『神の悪意』、『神の毒』と呼ばれる龍殺しの力を持った龍の天敵と呼ばれている代物だ。


「あり得ないわ!サマエルはコキュートスに封印されている!その血を手に入れる事なんて出来ない!」
「貴方たちが追っている男……その人から貰ったのよ」
「ま、まさか禍の団に……お母さま、貴方は……!!」


 お母様のまさかの発言に私は困惑を隠せなかった。


 今D×Dで暗躍している謎の存在、そいつはグルメ細胞をまき散らしているという迷惑極まりない行動をしており、現在は禍の団にいるのではないかと言われている。


 カトレアたちに尋問しているが何も情報は入ってないとだけ聞いていた。


 でもまさかお母様がその人物と接触していたなんて……


「お母様、貴方なんて事を……」
「これ以上話すことはないわ。貴方たち、リアスを連れて行きなさい」
「……お嬢様、申し訳ございません」


 兵士の一人に何か薬のような物を嗅がされて私の意識は急速に薄れていった……



―――――――――

――――――

―――


「出しなさい!私をここから出しなさいよ!」


 私はグレモリー家の地下にある牢屋に入れられていた。魔力を吸い上げる手錠で両手両足を防がれて全く身動きが取れないわ。


「どうしてこんな事になったの……?」


 私はなぜこんな事になってしまったか分からなかった。そもそもなぜお母様がその謎の人物と接触したのかさえ分からなかった。


「それよりも早くイッセーを助けないと……!」


 サマエルの血はドラゴンにとって圧倒的な殺傷力を持っている。いくらグルメ細胞を持っているイッセーでも耐えきれないほどの凄まじい威力だ。


「少しは静かにしなさい、リアス」
「ッ……お母さま」


 そこに兵士を連れてお母様がやってきた。私は鋭い視線でお母様を睨む。


「お母様!今すぐに私を解放してイッセーを助けなさい!こんな事をしてどうなると思ってるの!?」
「問題はないわ、全てあの男がどうにかしてくれる。サーゼクスもあの男には適わない」


 お母様はハッキリとそう答えた。


「そもそもお母様は何がしたいの!?そんな奴と手を組んでまで私を政略結婚させたいというの!?」
「ええ、そうよ。私は貴方の為を想ってここまでしてるの」
「狂ってるわ!こんなの間違ってる!」
「貴方は何も知らないのよ、力を持たないという事の恐ろしさを……ミスラを知ってるわよね?」
「ミスラおば様……」


 お母様が言ったミスラという人物はバアル家当主の妻のことよ。お母様は名門バアル家の出身なのだけど、弟が当主になってお母様はグレモリー家に嫁いだの。

 
 つまりお母様の弟の妻だからお母様とは弟夫婦の関係にある人よ。まあバアル家の当主とは腹違いの姉弟らしいのだけど……


 ミスラおば様は上級悪魔の一族、ウァプラ家の出身でお母様とおば様は血こそ繋がっていないけど本当の姉妹のように仲が良かったそうよ。私も可愛がってもらっていたわ。


「ミスラと弟……バアル家の当主の間に生まれた息子のサイラオーグ、彼はバアルの特徴である『滅びの魔力』を受け継がなかった。それだけの理由で弟はミスラとサイラオーグを冷遇した。それは貴方も知ってるわよね?」
「……ええ、知ってるわ」


 お母様の弟はサイラオーグが滅びの魔力を受け継がなかったのをミスラさんのせいにしたそうなの。欠陥品を産んだバアル家の面汚しと言われてサイラオーグと一緒に差別されてひどい扱いをされていたのよ。


「……辛かったでしょうね。出来る事なら私の滅びの魔力をサイラオーグにあげたかったわ」
「お母様……」
「でもそれだけならまだマシだったわ。あの時は私も彼女の力になれたから……私が守ってあげられたから……でもよりにもよってあんな病気にかかってしまうなんて……」


 ミスラおば様は眠りの病気にかかってしまった。これは悪魔がかかる病気の一つでその病気になると深い眠りに陥り目を覚まさなくなってしまうの、そして徐々に衰弱していき最後には命を落とすわ……


 この病気は現在も治す方法が見つかっておらずかかったら延命処置するしかできなかった。


「あの子が何をしたというの?滅びの魔力が遺伝しなかったのは弟にだって問題があったはずよ。なのにすべての責任をミスラが背負いあの子も息子のサイラオーグも苦しんだ……」
「……」
「でもあの男が言ったのよ。私が言う事を聞けばミスラを目覚めさせてやると……だから私はその男にかけることにした。ミスラを治してもらいそして悪魔たちすべてをGODというアイテムで洗脳してもらうの。そうすればもう彼女達のような悲しい思いをする悪魔はいなくなるわ。リアス、貴方はそんな悪魔たちを導く頂点になるのよ。そうすれば貴方が力によって苦しめられることはなくなるわ」
「お母様……」


 お母様はそんなにも追い込まれていたのね……GODを悪魔を洗脳できるアイテムなんて嘘まで吹き込まれて……


 まあ食べたら誰でもトリコになってしまうらしいからある意味嘘ではないのかもしれないけど……


「だからリアス、貴方は私の言う事を聞いておけばいいのよ。そうすれば貴方は地位も名誉も得られるわ。良い子だから言う事を聞きなさい」
「……お断りします」


 私は差し出された手を払いのけた。


「どうして?どうしてここまで言って分からないの?」
「お母様こそどうかしています!本当にそんな奴が信用できると思っているんですか!?」


 お母様の気持ちは良く分かった。でもやっぱりそんな奴を信頼なんてしちゃ駄目だと私は思うわ。


「ミスラおばさまの事ならIGOに相談すれば何とか出来るかもしれないわ!だから……」
「……もう遅いのよ。赤龍帝の子にサマエルの血を盛った時点でその人たちを味方につけることは不可能よ」
「そ、それは……」


 以前は悪魔にG×Gのことを話せなかったからミスラおば様の事を相談できなかった。でも今なら出来るわ。


 でもお母様はもう遅いと首を横に振った。


 確かにイッセーにそんな事をしたら幾ら一龍さんでも許さないかもしれない……でもイッセーが生きている今ならまだチャンスはあるはずよ。

 
 なんとかお母様を説得しないと……


「リアス、なら私と賭けをしないかしら?」
「賭け?」


 悩む私にお母様は何かを提案してきた。


「そう、賭けよ。私が用意する戦士と戦ってその人に勝てたら貴方の言う事を聞いてあげるわ。でもそれが出来なかったら私の言う事を聞いてもらうわよ」
「何でそんな事を……」
「親としての慈悲よ。私も娘を洗脳したいとは思わないもの」
「……分かった、その賭けに乗るわ!」


 私はお母様の提案を受け入れた。イッセー、皆、待っていて!必ず助けるから!


―――――――――

――――――

―――


 兵士に手錠をされて連れてこられたのはグレモリー領にあるコロシアムだった。


「それで私は誰と戦えばいいのよ?」
「この人よ」


 お母様の言葉と共に誰かが跳躍して私の前に降り立った。それは骨で作られたヘアバントと白色のマントを身に着けた男性だった。


 手錠を外された私はその男の人と対峙する。


「……」
(つ、強い……!決して油断はできないわね……!)


 私は相手がかなりの実力者だと本能的に察した。でも絶対に勝たないといけないわ、イッセーを助けるためにも!


「初めまして、僕の名は桜と言います」
「……ご丁寧にどうも。リアス・グレモリーよ」
「不本意ではあると思われますが僕と戦って頂きます。お互い全力で戦いましょう」
「ええ、よろしくね」


 どうやら武術家のようね、構えがそれっぽいもの。でも隙は一切ないわ。私も全力で行かないと……!


「それでは試合を始めなさい」


 お母様の合図と共に私は滅びの魔力を相手に放った。でも桜さんは一瞬で私の背後を取ると背中に重い一撃を放ってきた。


「がはっ……!?」


 肺から空気が押し出され痛みが身体に走っていく。私は歯を食いしばって滅びの魔力を剣のようにして振るう。


「ビクトリールインソード!」


 だが桜さんはギリギリの距離でそれを軽やかな動きでかわすと私のお腹に重い一撃を放ち体をふっとばした。


「ゴホッ……!ゴホッ!」


 胃液が喉まで這い上がってきて口から吐いてしまった。


「落ち着いてください、雑念に囚われていて動きが雑ですよ」
「ア、アドバイスなんて余裕ね……!」


 私は強がって見せるが実際に余裕なのだろう、桜さんは全く動じずに自然体で構えている。


(……落ち着きなさい、私。焦ったらそれこそ勝てないわ……)


 私は深呼吸をして呼吸を落ち着かせる。そしてルビースネークの籠手を出して構えた。


「……ふッ!」


 まずは私が動いてジャブを走らせる、桜さんはそれを両手でさばいて足払いをしてきた。私はそれを飛んで回避して空中から魔力の玉を高速で打ち出した。


 滅びの魔力じゃないのはスピードが遅いからだ。この人に勝つには速度の方が重要だと私は思ったの。


 それを後ろに後退してかわす桜さん、私は空中からかかと落としを放ちつつサマーソルトに移行した。でもそのコンボを桜さんは受け流した。


「隙だらけですよ」


 そして再び腹部に重い一撃を入れられたが……


「っ!?」
「つ、捕まえたわ……!」


 腕を引かれる前に掴んで動きを止めた。どうせ流されるのなら敢えて攻撃を喰らって一瞬の硬直を狙ったのよ!凄まじく痛いし吐きそうだけど……!


「『クリムゾン・ビッグバン・ゼロ』!!」


 私は溜めていた魔力を小さな球に圧縮して彼の腹部に放った。


 本来なら圧縮した滅びの魔力を使って放つ『クリムゾン・ビッグバンアタック』が想定していた使い方だったんだけど、この人に当てるにはそれでは駄目だと思い出るのが早い普通の魔力で応用した技だ。


 もし滅びの魔力なら決着はついていたけど、それをしようとしても滅びの魔力では一瞬硬直が生まれてしまう。この人ならその一瞬で拘束を振りほどいて即座に逃げたはずよ。


「でもこれなら……!?」


 確実にダメージを与えたと思ったのだけどなんと桜さんはクリムゾン・ビッグバン・ゼロを両手で押さえつけて当たらないようにしていた。


「ぐうっ……はぁァァァッ!!」


 そして気合で上空に軌道を変えて逸らしてしまったわ。


「はぁ……はぁ……まさか敢えて攻撃を喰らうとは……やりますね」
「貴方だって軽く防いだじゃない」
「ふふっ、僕の腕が焦げてしまったなんて久しぶりですよ。中々に燃えてきました……!」


 穏やかな人だと思っていたけどその目には闘志の炎が燃えていた。


「……貴方、何だか悪い人には思えないわ。どうしてお母様に雇われたの?」
「ふふっ、僕にも僕なりの目的があるんですよ」
「……やりにくいわね」


 今のお母様は正気じゃないから、雇った人もヤバイ人だと思っていた。桜さんもてっきり見た目は穏やかでも戦いは残虐って感じの人かと思っていたけど全くそうじゃないわね。寧ろ誠実さを感じるわ。


 これじゃ何だか絡め手とか酷い手を使う気にはなれないわ。正々堂々と戦いたくなってしまう好感が持てる人って感じね。


 そんな事を考えている場合じゃないんだけど……できればこの人とはこういう形じゃなくて純粋に戦える状況で戦いたかった。


「でも私は勝たないといけないの。だから全力で行かせてもらうわ!」
「望むところです!」


 私は疾風紅蓮撃を放ち彼も高速で動いて辺りを駆け巡る。お母さまや兵士たちは私達の姿を目では追えないだろう。


「はあァァァァァァッ!!」
「素晴らしい攻撃ですね、でもまだ甘い!」


 疾風紅蓮撃は速さに集中しすぎて足元が隙だらけになるという弱点がある。そしてそれを簡単に見抜いた桜さんは足払いを仕掛けてきた。


(今だ!)


 私はそのタイミングでジャンプして足払いを回避する。そして足の裏から魔力を出して彼に向かって頭突きをした。


「なっ!?」


 不格好だが不意を突くことが出来た。一瞬の隙を見逃さなかった私はそのまま技を繰り出した。


「魔功砲!!」


 私の放った最速の技は見事に桜さんに直撃した、でも私は攻撃の手を緩めなかった。


「はぁァァァァァァァァッ!!」


 体力の消耗が激しいが構わずに連射し続けた。砂煙で覆われて視界が悪くなり限界の一歩前で攻撃を止めた時には何も見えなかった。


(お願い……倒れていて……!)


 私は強くそう願った。でも彼はあれだけの魔功砲を何発も喰らっても倒れなかった。流石に全く効いていないわけではなく結構な傷を負っていたが、普通に戦闘を続行できるほどの余力を見せていた。


「……まさかここまでダメージを受けるとは想定外でした」
「やっぱり手加減して戦っていたのね。貴方の実力はそんなものじゃないでしょう?」
「僕の目的は貴方を殺す事ではないからです。しかし先程の頭突きは正直面を喰らいました、どうやら貴方にならコレを使っても問題はなさそうですね」


 桜さんは変わった構えを取った。私は高速での正拳突きや氣での遠距離攻撃を警戒したが……


「奥義『流桜』」


 その言葉と同時に私の腹部に激しい衝撃が走り壁にまで吹っ飛ばされた。


「闘気のエネルギーを光の速さで放つだけの技です」


 ひ、光の速さ……!?反応なんてできるわけがないじゃない!?


「うっ……ぐうっ……!」


 ま、マズイわ……魔功砲の連射で体力を限界まで使ったからもう立ってるだけでも辛いのにこんな凄い一撃を喰らってしまったから動けないわ……


 私は立とうとするが膝が震えてまた倒れてしまう。


「……どうやらここまでのようですね、リアス。私の予想以上に貴方はやりましたが勝てなかった以上貴方の負けです」


 お母様の言葉を聞いて私は更に立とうと頑張るけどやはり立てなかった。情けなく膝を地面に付けてお母様を睨みつけるしかできない。


(このままじゃイッセーが死んじゃう……お母様も敵に利用されてしまう!……立たないと!)


 私は痛む体を無理やり起こそうとする。だがやはり立てない。


(嫌よ!私はイッセーや皆と一緒にもっと冒険がしたい!私を救ってくれた人を探したい!夢を見つけたい……!そのためなら……体がどうなってもいい……!)


 私はフラフラになりながらもなんとか立ち上がった。


「私は負けない!死んでも負けて堪るかぁぁぁぁぁっ!!」


 その時だった。私の体内で何かが外れる音がしたような気がしたんだけど、その瞬間体から凄まじい力が沸き上がったの。


 しかも自慢の紅い髪が金に染まってしまったし一体何が起こったの!?……いや、何が起きたかは分からないけど好都合よ!この力のお蔭でまだ戦えそうだわ!


「滅びよ!」


 私は敢えて滅びの魔力で桜さんを攻撃する。桜さんは当然それを余裕で回避した。


「何が起こったかは分かりませんがそんな攻撃では僕を捕えることなど……!?」


 私は回避された滅びの魔力に一瞬で追いつくと反対側から滅びの魔力を蹴り飛ばして再び桜さんの方に向かわせた。


 しかも蹴った衝撃でさっきよりもさらに速度が増しており今までで一番早く向かっていった。


「はっ!」


 だが桜さんは不安定な体制でありながらそれを完全に避けて見せた。しかし不安定な体勢から更に無茶な動きをしたから流石によろけてしまったようだ。


 その隙を逃さなかった私は疾風紅蓮撃で彼を攻め立てていく。先ほどは殆ど防がれちゃったけど、今はちゃんと当てることが出来るわ!


(この異様なパワーアップ……グルメ細胞に目覚めたのか?いや違う、この力は別のモノだ!)


 私はトドメの一撃で彼を吹っ飛ばした。だが桜さんは見事な体さばきで受け身を取った。でも構わないわ!これで決める!


「グ……レ……」


 両手を腰に引き、手を重ねてその間に魔力を溜める。


「モ……リ……」


 そして圧縮した魔力を前方に突き出して掌から魔力を出す。


「イィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」


 そして最後に気合を入れてそれを一気に解き放った。これが私の新しい技の一つ『グレモリー砲』よ!


 この技の特徴は滅びの魔力じゃないから速度も速いし溜める隙が少ないからいつでも使える万能な技として編み出したの。


 受け身を取ったばかりで体勢を崩していた桜さんはかわせずに先程のように両手で受け止めようとした。


「うぉぉぉぉぉっ!!『流桜』!!」


 そして私のグレモリー砲を両手で受け止めた。どうやらあれは闘気のエネルギーで掌を覆ってガードしているみたいね。


「ま……負けるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 腹の底から力を湧きあげて更に魔力を作り上げる、そしてそれらを一気に放った。より大きくなったグレモリー砲は桜さんを巨大な爆風で覆い隠した。


「ハァ……ハァ……!」


 流石に辛いわね……でもあれなら……!?


 私は希望を持ったが、砂煙が晴れてそこには攻撃を受け流した桜さんが立っていた。


(まさかあの状況で攻撃を受け流すなんて……!?)


 流石にノーダメージとはいかなかったようで結構なダメージを負っているようだけど、まだまだ戦えそうだわ。


「くっ……まだまだこれからよ!」


 私は更に攻撃を続けようとしたが急に体に力が入らなくなってしまい座り込んでしまう。髪も金からいつもの紅に戻ってしまった。


「そ、そんな……!?」


 私はさっきみたいにあのパワーアップをしようとしたけどできなかった。


 このままじゃイッセーが死んじゃうかもしれないのにどうしてできないのよ!?


「動け!動いてよ!!」


 私は無理やりにでも力を引き出そうとしたけどその時誰かが私の肩を掴んで静止させる。


「リアスさん、それ以上は危険です」
「イ、イッセー!?」


 なんと私を止めたのは今サマエルの血で死にかけていたイッセーだったの!?一体どうなってるのよ!?


「リアス、その説明は僕がするよ」
「お兄様!」


 するとそこにお兄様が眷属とアザゼルを連れて現れたわ。そして私はお兄様から今回の騒動について話しを聞いた。


―――――――――

――――――

―――


「え、演技だったの!?」
「そうよ。そんな怪しい連中を信用するわけがないでしょう?」


 お兄様の説明を聞いて私は叫んでしまった。真顔でそう言うお母様には正直イラッとするわ。


 事の敬意はこういう事らしいの。会談後の事らしいんだけどお母さまは私を無理にでも結婚させようとしていたのは事実だったの。でもそれをお兄様が止めたらしいわ。


 そしてお兄様はグルメ界について二人に説明をした。最初は信じていなかったお母様とお父様も実際にグルメ界に連れて行ってもらった事で信じたようなの。


 この時にすでにイッセーとは出会っていたらしいわ、つまりイッセーもグルだったって訳よ。酷いわ!


 まあグルメ界の事を知ったお母さまはそんな危険な場所に私を行かせるわけにはいかないと言って結婚を早めようとした。お父様もグルメ界に行くのは反対したそうよ。


 でもお兄様とグレイフィアはこういったらしいの。


『リアスはもう自分たちが思っているほど子供じゃない。自分の道を自分で決められるようになったんだ』
『もしお嬢様の事を信じられないのでしたらお嬢様の覚悟を試されてはいかがでしょうか?』


 その言葉を聞いたお母様は私を試す事にしたらしいの。もし私が弱音を吐いたり諦めたりしたら絶対に政略結婚をさせるつもりだったらしいわ。


 でも私の覚悟を見て決して甘い考えや願望でいるんじゃないとお母様は分かってくれたみたいなの。


 因みにお父様はお兄様の所にいたらしいわ。私と会ったら絶対にボロを出すって判断らしいわ。

 
 まあ今も泣きながら私の無事を喜んでくれているしその判断は間違っていなかったかもしれないわね……


「でもイッセーも酷いわ。私、本気で心配したんだから……」
「本当にすみませんでした。どうしてもリアスさんの覚悟を見たいって言われたので……」
「私達もごめんなさい、部長……」


 イッセーと眷属たちが私に謝ってきた。どうやら眷属たちもここに来た時に私に内緒で話を聞いたようね。


「……まあ貴方たちもしたくてしたって訳じゃなさそうだから許してあげるわ」
「リアスさん!」
『部長!』


 私がそう言うとイッセーと眷属たちは抱き着いてきた。ちょ、重いんだけど!?特にイッセー!?潰れちゃう!?潰れちゃうから!?


「リアス、どうやら本当に貴方は変わったようね」
「お母様……」
「こんな事をしてごめんなさい。でも私はどうしても貴方の事を引き留めたかったの」
「えっ?」
「政略結婚を早めたのは貴方に地位を得てもらって立派な当主になってほしかったの。でもそれ以上に貴方に側にいて欲しかった。だって私にとって二人しかいない大切な子供なんですもの」


 ……お母さま。


「でもそれは私の考えの押し付けでしかなかったわ。貴方が家を出てまでしたいことがあるというのなら私は貴方の考えを尊重したいって貴方の頑張る姿を見てそう思ったの」
「……ごめんなさい、最後まで迷惑ばかりかけて」
「子供は親に迷惑をかけてこそよ。リアス、貴方は貴方の思うがままに生きなさい。でももし本当にどうしようもなくなったらここに帰って来なさい。名を捨てたとしても貴方は私の娘なのだから」
「っ!!」


 その言葉を聞いて私は泣きながらお母様に抱き着いた。私は馬鹿だ、お母様の気持ちも知らずに反発して……私の方が親の心子知らずだったわ……!


「リアス、本当にグレモリーの名を捨てるのか?そうすればお前は上級悪魔ではなくなる、もう権力でお前を守ってやれなくなるんだ。そうなれば強欲な悪魔たちがお前を手籠めにしようと襲ってくるかもしれんのだぞ?」
「お父様……」


 お父様の言う通りグレモリーの名を捨てれば私は上級悪魔ではなくなるわ。そうなれば私や眷属を狙って他の悪魔や勢力が襲ってきてもおかしくない。


「お父様、ごめんなさい。貴方が本気で私を心配してくれているのは理解してるわ。でも私がケジメを付けるにはこうするしかないの。もう守られるだけの小娘じゃない、これからは自分で自分を守っていくわ」
「……そうか、お前の覚悟は本物なのだな。あの小さかったリアスがここまで自分の意志を言うようになるとは……貴族としては失格だが娘が自分の足で歩んでいこうとするのは寂しいが嬉しくもあるよ。リアス、家の事は気にするな。おまえはお前の思うように進みなさい」
「ありがとう、お父様……」


 私は今度はお父様に抱き着いた。お父様は泣きながらも私を強く抱きしめてくれた。


「リアス、僕の権限で君は眷属を持っていられるようにしておいた」
「えっ!?本当ですか!?」
「ああ、他の魔王たちやアザゼル、ミカエルにも協力してもらった。権力は使えなくなるし公式のレーティングゲームには出られなくなるけど……」
「全然かまいません!ありがとうございます、お兄様!」


 お兄様の言葉に私は飛び上がって喜んだ。このままだと悪魔政府に眷属たちがはぐれ認定されて面倒な事になると思っていたから凄く助かるわ!


「でも僕の言葉を無視して君や眷属を手に入れようとする悪魔は出てくるだろう、悪魔は強欲だからね。もしそうなったら遠慮なくぶっ飛ばしてやると良い、相手がそれで権力を行使しようとしてきたら、僕が魔王として君の力になると約束するよ」
「ありがとうございます、お兄様!」


 お兄様にも本当に迷惑ばかりかけてしまってるわね、この恩は行動で返していくわ。


「リアス姉さま、僕には難しいことはよくわかりませんが姉さまは当主にはならないのですか?」
「ミリキャス、あのね……」
「大丈夫です!僕は自分の意志で当主になりたいって思ってますから!だから姉さまは僕を犠牲にしたとか思わないでください!」
「ミリキャス、貴方……!?」


 私はミリキャスに謝罪と説明をしようとした。私が当主の座を降りれば必然的にこの子が当主になるからだ。


 私はそれに罪悪感を持っていた。私の我儘でこの子に望んでもいないのに当主にさせてしまうのだから。でもミリキャスは私の気持ちを察していたのか逆に励ましてくれた。


「僕はずっとお父様のように悪魔の未来に貢献できる仕事がしたいと思っていました。だから将来はそういったお仕事に就こうと思っていたんです。でも姉さまが党首の座を降りるのなら僕がグレモリー家を守っていきます!僕がしたいって思ったからそうしたんです!だから姉さまは自分の夢を見つけてください。そしていつかそれが見つかったら僕に見せてくださいね!」
「ミリキャス……うん……うん……!絶対に見つけるわ。そして貴方に一番に見せてあげるから!」


 私は涙を流しながらミリキャスを抱きしめた。この子なら間違いなく立派な当主になれるわ。


 その後私は久しぶりに家族と一緒に一日を過ごした。祝いとして宴会をしたのだけど、イッセーはお兄様の眷属たちと仲良くなっていたわ。特にセカンドとは意気投合していたわね。

 
 ルフェイもマグレガーと魔術について話し合っていたり、祐斗は師である総司と久しぶりに語り合っていたり楽しんでいるようね。


 ゼノヴィアとイリナは冥界の料理を堪能していたし、小猫もギャスパーと一緒に談笑しているわ。


 アザゼルはお父様やお兄様とグルメ界から持ち込んだお酒を飲んでいたわ。本当に好きね……


 私と戦った桜さんはベオウルフとお酒を飲んでいたわ、ベオウルフも悪魔の中では若い方だからお互い若者どうしで話が合うみたいね。


 私もイッセーや朱乃と一緒にミリキャスに私達の冒険を話してあげたわ。この子なら言いふらしたりしないだろうし、私の冒険を目を輝かせて聞いてくれた。


 後ミリキャスはテリーを見て触ってもいいかと目を輝かせていたけど、テリーは自身の体にミリキャスが触れる事を許してくれた。テリーは良い子ね。


 ミリキャスはふわふわのテリーの毛皮を触ってもふもふを堪能していたわ。


 そしてその日の晩はお母様と一緒に寝たわ。いつまた帰れるか分からないからいっぱいお母様に甘えた。


 そして翌日になり私達はお母様たちに見送られながら列車に乗るために駅に来ていた。


「手続きは僕の方でしておくよ。ただそうなると君が貴族を辞めた事も冥界全土に伝わるだろうからくれぐれも気を付けてね」
「ありがとう、お兄様」


 私がグレモリー家を出る事は政府に報告しないといけない、そうすれば私を狙う悪魔も出てくるはずよ。


 でもそれは承知の上だわ、もし眷属に手を出そうとするなら私は容赦しない。


「リアス姉さま、イッセー様!またグルメ界のお話を聞かせてくださいね」
「ええ、今度来るときはもっと面白い話を聞かせてあげるわ」
「今度はもっと美味いお土産を持ってくるよ」
「はい!楽しみにしていますね!」


 ミリキャスは笑顔で私とイッセーにそう言ってくれた。


「兵藤さん、どうかリアスをお願いします」
「はい、俺も出来る限り彼女の力になりますよ。大切な仲間ですので」
「ありがとう、リアスが君と出会えてよかったよ」


 イッセーはお父様とお母さまに私を頼むと言われた。でもイッセーばかりに甘える気はない、私もイッセーを支えていくわ。


 そして多くの人たちに見送られて私達は列車に乗り込んだ。


「良い家族でしたね」
「ええ、本当に私のはもったいないほどの家族だったわ」
「俺も父さんと母さんを思い出しましたよ。やっぱり家族っていいものですね」
「本当ね」


 私はイッセーと家族について話をしていた。


「そういえばあの謎のパワーアップはなんだったんですか?」
「私もよく分からないのよ。バアル家の者があんなパワーアップをした記録は無かったから、グレモリーの血が関係してると思ったんだけどお父様も知らないそうなの。でももしかしたら初代様なら何か知ってるかもしれないそうよ」
「初代ってグレモリー家を創設した悪魔ですか?悪魔は1万年は生きるって聞いていたけど初代まで生きてるとは……」
「私も驚いたわ。でもバアル家は初代が生きていることで有名だし、隠居して滅多に姿を見せない方もいるらしいわね」
「へぇ~」


 私もまさか初代グレモリーのお方が生きていたなんて知らなかったから驚いたわ。


「初代様は精神的に老いるのを嫌って殆ど寝ているらしいの。定期的に起きるみたいなんだけど、今回は事が事だから直接起こす事になったんだけどそれだと時間がかかるらしいわ。だから次に会いに行く時までには起こしておくってお父様は言っていたわ」


 私は桜さんとの戦闘中に起こった謎のパワーアップについてお父様に聞いたのだけど、ほとんど何も分からなかったわ。でも初代様なら何か知っているかもしれないとのことで次に会いに行く時までに起こしておいてもらうことにしたの。


「まああの力はすさまじいけど消耗が激しそうですから今後は体力の上昇をメインに鍛錬をした方が良いかもしれませんね」
「そうね、私も鍛錬の内容を見直さないといけないわね」
「もしよろしかったら僕がリアスさんの指導をしても良いですか?あの力は闘気に似ていたので力になれると思います」
「本当に?ありがとう、桜さん!」


 一緒に列車に乗っていた桜さんが指導してくれるって言ってきたのでそれに乗ることにした。彼ほどの実力者なら絶対に力になってくれるはずだわ。


 因みにこの桜さん、もう察してると思うけどG×Gの美食屋らしいの。私の対戦相手は演技がバレない様に全く知らない人が良いって話が出た時、イッセーが一龍さんに話をして紹介してもらったのが彼らしいわ。


 どおりで強いはずよ。あんな実力者がD×Dにいたら絶対に眷属にしようと悪魔が動いてるはずだもの。


「そうだ、イッセー。ミスラって悪魔の話を聞いてくれないかしら?」
「リアスさんのおばさんですよね?ヴェネラナさんから相談を受けています」
「あら、そうなの?」


 私はミスラおば様のことを話そうとしたけど、どうやらイッセーは既に知っていたようね。


 お母様が禍の団に協力したとかサマエルの血とかはお兄様が作った台本だったけど、ミスラおば様の事はお母様の本意だと思ってる。だから私もどうにかしたかった。


 でもお母様はそれよりも早くイッセーに相談していたのね。


「リアスさんの身内の人からの相談ですし無碍には出来ませんよ。俺もG×Gで眠りを解除できる食材がないか調べてみます」
「ありがとう、イッセー!」


 イッセーの言葉に私は希望を抱いたわ。G×Gの食材なら眠りの病気を治せる食材もあるかもしれないもの!サイラオーグにも連絡しておかないといけないわね!


「本当に部長の身内という理由だけで動いているんですか?もしかしたらお礼にヴェネラナ様を好きに出来るとか約束してませんよね?」
「いや、してないから……」
「演技とはいえあんなにデレデレして……イッセーにはわたくし達がいるのに……」
「小猫ちゃん、朱乃、痛いよ……」
『ふんっ!』


 イッセーの腰に座っていた小猫と横に座っている朱乃が同時にイッセーの体をつねった。まあ確かに演技にしてはお母様にデレデレしていたわね、イッセー。


「さて、リアスさんもケジメが付けれたようですしこれで修行に集中できますね」
「色々とゴメンね、迷惑をかけちゃって……」
「仲間の為なら問題ないですよ。明日からまたバリバリ頑張っていきましょう!」
『応っ!!』


 イッセーの号令に私達は腕を上げて返事をした。お母様、お父様、お兄様、グレイフィア姉さま、ミリキャス、ルシファー眷属の皆、そしてグレモリー領の皆……私、絶対に夢を見つけて見せるわ。


 そう胸に誓いをして私は離れていく冥界を窓から見ていたのだった。

  
 

 
後書き
 祐斗だよ。部長も前に進めたようでよかったよ、仮にはぐれ悪魔になっても僕達はリアス部長についていくつもりだったけどね。これからはより一層気合を入れて部長を守っていくよ。


 そんなこんなで部長が前に進めたお祝いに食事会を開いたんだけど、その最中に小猫ちゃんがお父さんの形見である包丁を折ってしまったらしいんだ。


 小猫ちゃん、あんなに悲しんで……凄く可哀想だよ。イッセー君、何とかできないかい?えっ?包丁の事は包丁のスペシャリストに頼もうだって?


 次回第97話『折れた形見の包丁!?次の目的はメルクマウンテン!小猫ちゃんの包丁と研ぎ師メルク登場!』で会おうね。


 次回も美味しくいただきます!
 
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