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超地球救済戦記!断罪王Ω〈オメガ〉~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下の無職童貞ニートの俺が全員滅亡させる‼~

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第九十五話 20××年 5月2日 その2

第九十五話 20××年 5月2日 その2

報告書 20××年 5月2日
『実験体12号』が断罪刀『師走』〈しわす〉を用いて『怪異』と交戦するも死亡する。
断罪刀『師走』の新適合者の捜索が決定した。
               *
「むねでっかいね」
それが、私が『学校』で聞いたシワスちゃんの最後の言葉だった。
シワスちゃんはいつもニコニコしていた、いつも上半身を左右に揺らしていて、とにかく落ち着きのない子だった。
いつも私が教室の席に座ると、前の席に座っているシワスちゃんが私の方に振り向いてにこやかに告げる。
「むねでっかいね」
貧乳のシワスちゃんに巨乳の苦労がわかるのかと問いただそうとするも、シワスちゃんのにこやかな笑みに私は何も言い返すことができない。
私はとりあえず、お返しとばかりにシワスちゃんの頭を撫でた。
シワスちゃんは満足したのか、体を黒板のある方に向けて、上半身を左右に揺らしながら、人間観察をにこやかに再開した。
教室に金髪のツインテールが特徴的なサツキちゃんは入ってきた。
サツキちゃんは戦闘で負傷したのか右腕に包帯を巻いてる。
シワスちゃんはにこやかにサツキちゃんに言う。
「それかっこいいね」
バカなシワスちゃんはきっとサツキちゃんの右手に巻かれた包帯を漫画か何かのコスプレと勘違いしたのだろう。
サツキちゃんはキッとシワスちゃんをにらみつけると、シワスちゃんの頬にビンタをくらわせた。
それでも、シワスちゃんは何事もなかったかのように笑っている。
サツキちゃんはなにかおぞましいものを見るような目でサツキちゃんをにらむと、どこか悲しそうな顔をして、自分の席に座った。
そして今日の朝、『先生』の口からシワスちゃんが『怪異』との戦闘で戦死したことが告げられた。
断罪刀『師走』の新しい適合者はまだ見つかっていないそうだ。
今、思えば、シワスちゃんはきっと生まれつき恐怖とかそういう感情がわからない子だったんだと思う。
だからサツキちゃんは自分がビンタをくらわせたシワスちゃんが何事もなかったかのように笑っていたことに違和感を感じた。
そして、サツキちゃんは気がついていた。
シワスちゃんはきっと『死』の恐怖すら感じていないことに。
だからきっとサツキちゃんは急に悲しそうな顔をしていたんだと思う。
『怪異』との戦闘で敗北し、死んでしまったシワスちゃんはいったいどんな顔をしていたのか私にはわからない。
でも、きっとシワスちゃんは死に際もニコニコと笑顔を浮かべていたにちがいない。
「なんだヤヨイちゃん、暗い顔して、学校でなにかあったのか?」
友助さんの言葉が私を現実に引き戻す。
「う、うん。友達がね、病気で死んじゃったの」
「そ、そうか、そりゃあ大変だ...それより、今日の朝食おいしかったぞ!ヤヨイちゃんが料理もできるなんて義父さん知らなかったよ!今日の夕飯のハンバーグもおいしいし!」
「あ、ありがとうございます...」
友助さんがせっかく料理を褒めてくれているというのに、私は顔に苦笑を浮かべるのが精いっぱいだった。
「今度から食事の材料費は俺が出すよ。アカリさんからもらっていたお小遣いは、自分の欲しいものつかいなさい」
「欲しいもの...?」
「ああ、服とか、お菓子とか」
「私...服もお菓子も欲しくありません...」
「ふぇ?」
「お金で買えるものなんでたかがしれてます...私が...私が欲しいのは...」
脳裏にシワスちゃんの無垢な笑顔がよぎる。
そして、そのシワスちゃんは死んだ。
わかっていた、『私達』が常にそういうリスクを背負っていることぐらい。
だから、そうなる前に、勇気を出して言っておかないときっと後悔すると思った。
「私が欲しいのは!」
着信音が鳴り響く。
「あれ、この着信音、もしかしたらヤヨイちゃんの携帯?」
私は電話に出る。
携帯の受話口から女の人の声で英語の音声が流れる。
「友助さん...私、学校に忘れ物しちゃったみたいなので、ちょっと外に出てきます」
「あ!先生からか...もし、欲しいものがあったら遠慮せずになんでもいいなさい」
ヤヨイちゃんは頬を朱にそめたまま、俺をにらむ。
そして、なにも言わずに家を出た。
「俺、なにかヤヨイちゃんの気に障るようなこと言っちゃったかな...」
でも、こんな真夜中に普通、忘れものぐらいで先生が生徒呼び出すか?
「あ、そっか、そういうことか!ヤヨイちゃんも、もう、そういうお年頃だもんな!彼氏の一人ぐらいは...って、こりゃあ、まずいぞ!なんたって真夜中だ!ヤヨイちゃんになにかあったら、アカリさんがこの家に返ってきたとき、アカリさんに合わせる顔がない!」
俺は一応、義父として、保護者として、ヤヨイちゃんの身の安全を守る為に外に出た。
俺はヤヨイちゃんが通っている学校に向かって月明かりが照らす夜道をひたすら走る。
明日は筋肉痛確定だ!
次回予告 第九十六話 20××年 5月2日 その3

 
 

 
後書き
次回もお楽しみに 
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