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八条学園騒動記

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第六百七十二話 朝はそうなったその十二

「わしは科学者ではないがベリヤの方が嫌いじゃ」
「ソ連の秘密警察の長官ですか」
「あれは腐れ外道であった」
「無茶苦茶酷い奴でしたね」
「前任者達より遥かにな」
「粛清に関わって」
「戦争中もそうしてな」
 督戦隊等の最高責任者であったのだ。
「そして女の子をじゃ」
「ああ、まだ子供の」
「次々と手を出してな」
 モスクワ市内を車で巡り物色していたという。
「殺しておった」
「最低の下衆野郎ですよね」
「よく言われておるな」
「ええ、吐き気がします」
 野上君もこう言った、とても嫌そうに。
「ナチスも嫌ですが」
「そのナチスと同じ時代に生きておったな」
「はい、国も違いますが」
 それでもというのだ。
「遥かに酷いですね」
「前任者達もな」
「酷い連中でも」
「ベリヤは遥かに酷かった」 
 その前任者達よりもというのだ。
「人間には善悪があると言ったがな」
「ベリヤはその悪ですね」
「善性がな」
 それがというのだ。
「見られんかった」
「そうみたいですね」
「まだスターリンにはあった」
 ベリヤを使っていた彼にはというのだ。
「だから奴の所業に呆れたのじゃ」
「まだですか」
「ほぼないに等しかったがな」
 それでもというのだ。
「まだその所業を知って感じるだけな」
「黙認してたんですよね」
 野上君はスターリンのベリヤに対するこの行為について話した。
「あんな行いを知っていても」
「国家運営に欠かせなくなったからな」
「だからですね」
「そうしたが」 
 それでもというのだ。
「若しそうでないとな」
「粛清していましたか」
「うむ、しかしベリヤは違った」
 この男はというのだ。
「ジェルジンスキーも良心はあった」
「チェーカの初代長官ですね」
「無実の罪の者でも粛清すると言ったが」
 それでも革命を遂行するとだ、この言葉こそ革命というものの本質を表していると言えるであろうか。 
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