非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
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第124話『引き継ぎ』
夏休みも終わりに近づいてきたある日、晴登と結月は部室へとやって来ていた。というのも、今日はスケジュール表に書かれていた『ある会』が催されるのだ。今はその主役を除いて全員が揃っている状況である。
「うぃ〜す」
さて、主役の登場だ。終夜と緋翼が同時に部室に入ってくる。
「さて、お前らも知っている通り、今日は『引き継ぎ会』だ。魔導祭も終わり、夏休みが終われば、俺らは引退してこの部活は本格的にお前たちが主体となる」
そう、今日行われる会というのは『引き継ぎ会』、別の言い方をすれば終夜たちの『引退式』という訳だ。
「寂しくなるな。でも、これが部活ってもんだ。お前らと過ごせた日々は楽しかったよ」
これまで部長、副部長として魔術部を支えていた2人だが、3年生である彼らには高校受験が控えており、夏休みが終われば部活を引退するのは当たり前のことだ。
短い間だったが、2人にはとても感謝しているし、引退するのはとても寂しい。
「2年生は魔術が使えないのによくついてきてくれたよ。正直お前らがいなかったらこの部活はもっと寂しかったし、最悪潰れてたよ」
別れの挨拶と言わんばかりに、終夜は思い出を語り始める。
思えば、この部活は人が少ないし、魔術師の数はさらに少ない。その中で盛り上げに徹してくれたのは間違いなく2年生たちだった。最初はなぜこの部活にいるのかわからなかったが、今となってはこの居場所が好きだからだと勝手に解釈している。たぶん間違ってない。
「それで1年生はもう言うまでもなく、魔術師として十分に通用する奴らだ。お前らに関しては心配してねぇよ」
一方、晴登たち1年生は全員魔術師であり、魔導祭で結果も残した期待のルーキーズである。当然、終夜と緋翼がいなくなれば、魔術部の看板は1年生3人に重くのしかかるだろう。でも、結月と伸太郎とならきっと上手くやっていけると思う。
「ちょっと、あんたばっかり喋りすぎ。私にも喋らせなさいよ」
「あぁ悪い悪い」
終夜の横でそわそわしていた緋翼がついに口を開いた。しかし、いつものように喧嘩になるかと思いきや、今日ばかりは2人ともしんみりとした面持ちで大人しかった。
「こほん。……2年生は知ってると思うけど、私は去年、この部活にあまり顔を出してなかった。だから皆との思い出がちょっと少ないけれど、それでも今は楽しかったって思う。意地張らずに、もっと早くそれに気づけてれば良かった」
「全くだ」
「誰のせいと思ってんのよ」
緋翼が部活に来なくなったのは『終夜に負けたから』だと、確かGWの時に聞いた気がする。負けず嫌いの彼女はそこで意地を張ってしまったが、今はそれで皆との思い出が減ってしまったのを残念に思っているようだった。
だがその割には、満足したような表情をしており、彼女なりに納得のいく部活動生活を送れたのだと思う。
「ということで、別れの挨拶はこんなもんだ。それで次の部長についてだが、もう決めてある」
別れの挨拶を短めに切り上げた終夜は、ようやく『引き継ぎ会』のメインとなる話題を出した。終夜が引退するのならば、当然その枠には誰かが入らなければならない。次の魔術部部長となる、誰かが。
「まぁあんまり引き伸ばしてもしょうがないからさっさと伝えるが、次の部長は三浦 晴登、お前だ」
「……え? 俺ですか!?」
「そうだ」
そんな緊張の瞬間だったが、一瞬で解放された。いや、逆に拘束されたという方が正しいか。なんと次の部長として晴登の名前が挙げられたのだ。
これにはさすがに面食らった晴登は、あれこれと終夜に疑問をぶつける。
「いやでも俺は2年生じゃないですし……」
「関係ねぇよ。魔術部の部長として相応しいのが誰かって話だからな。第一、魔術師じゃないやつに魔術部部長させられるかよ」
「そんな理由で?!」
随分と体裁を気にしたチョイスだと思ったが、その理論は確かに間違っていない。魔導祭のように外部と交流もあるのだから、部長が魔術師でなければ格好がつかないのだ。
「2年生は異論あるか?」
「「「「ないでーす」」」」
「ほら、こいつらもこう言ってるし」
加えて、2年生たちは口を揃えて賛成する。あの感じ、部長になるのを面倒くさがってるだけじゃないだろうか。
しかしこれでもう、辞退はできなくなった。
「部長として、これから魔術部を頼むぞ」
「わ、わかりました!」
もうこうなったらやるしかない。1年生の内から部長なんて、キャリアとしては優秀じゃないだろうか。そうポジティブに捉えることにしよう。
「副部長は……まぁそれは北上とかでいいか」
「えぇ雑!?」
「やったぜ」
「頑張れよ北上」
「負けるな北上」
「お前ら……」
そして緋翼のポジションは北上に託された。
自分の番はないと思っていただけに、彼は予想外の指名にかなりびっくりしている。そして他の2年生たちは全く心のこもっていない応援だ。やっぱり面倒くさがってる気がする。
「さて、これで引き継ぎは終わりだ。そもそもうちの部活に役職らしい役職はそれくらいしかないからな」
そう言って肩を竦める終夜。
このまま『引き継ぎ会』は締めに入るのかと思った、次の瞬間だった。
「この後は場所を移してパーティ……といきたいところだが、まだ飯の時間には早い。だからよ、最後に一勝負どうだ? 試験の時は消化不良だったからよ」
そう言い放って、終夜はニカッと笑った。
*
場所をいつもの中庭に移し、終夜と緋翼、それ以外の魔術部メンバーが向かい合うように対峙する。
「ルールは俺たち2人とお前ら、どっちかが先に全滅するまでの勝負だ。正直今のお前ら相手にこのルールはキツいが、まぁ先輩らしいとこ見せてやらねぇとな。なぁ辻」
「えぇそうね。後輩にナメられたくないし」
終夜は拳に黒雷を纏わせ、緋翼は焔の刀を構えている。既に臨戦態勢だ。
一方こちらは、いつもの1年生メンツに加えて、晴登にとっては見慣れない武器を持った2年生たちが味方である。
「それじゃあまずは挨拶だ! 当たってくれるなよ! "冥雷砲"!」
開幕。審判役が誰もいないので、終夜が戦闘の火蓋を切る一撃を放とうとする。しかし、
「"目眩し"!」
「うお、しまった!」
終夜の攻撃よりも早く、伸太郎の妨害が先に繰り出される。指鉄砲を構えて照準を合わせていた終夜はそれをまともに喰らってしまい、目を眩まされてしまった。
「あんたバカね! 来るって読めてたでしょ!」
「うるさい! 忘れてたんだよ!」
伸太郎と言えば開幕目眩し。よく見ていた戦い方だったが、久々になると忘れてしまうのは詮無いこと。一方、緋翼は刀を使って防いでおり、警戒心の高さが窺える。
「そりゃ!」
「そこ!」
「ふっ!」
「辻、頼む!」
「あーもう世話が焼けるわね!」
そうして無防備となってしまった終夜に対して、結月、南雲、西片が遠距離攻撃を試みる。
目が見えなければ、それらの攻撃を正確に防ぐことは不可能。よって終夜は緋翼に防御を頼んだ。
「"居合い・焔の太刀"!」
焔を纏った刀を振り払い、全ての攻撃を撃ち落とした緋翼。だが攻撃はそれだけに留まらない。
「黒木! 突っ込んでくるよ!」
「まだ見えねぇんだけど……しゃあねぇ、これしかねぇか! 辻、離れろ!」
「わかったわ!」
遠距離攻撃の後は、槍を持った北上と刀を持った東が突撃してくる。2人を相手どって緋翼が捌けるかは怪しいところ。
だから終夜はある作戦を取ることにした。緋翼に声をかけ、彼女を自分から引き離す。
「マズい! ストップ!」
「"大放電"!」
「「うぎゃあ!?」」
嫌な予感がした伸太郎が急いで制止をかけるも間に合わず。突撃していた2人は終夜の放電にあえなくダウンしてしまった。
「あっ! 北上先輩と東先輩が!」
「いきなり2人やられたか! 相手にすると厄介だな、あの放電」
「これじゃ近づけな──」
バリバリと黒雷を撒き散らされ、近づこうにも近づけない状況。このまま時間を稼がれてしまえば、せっかくのチャンスが無くなってしまう。
そう思っていると、背後に気配を感じた。
「「うわぁ!?」」
「ハルト、危ない!」
「えっ!?」
「くっそ!」
背後から現れたのは、なんと放電を撒き散らしていた本人、終夜であった。後衛にいた南雲と西片を一撃でダウンさせ、次は晴登というところで結月の氷壁が間に合う。
攻撃を防がれて、終夜は悔しそうな表情を浮かべた。
「"大放電"からの奇襲……魔導祭でやってたコンボっすね」
「さすがにバレるか。そう上手くはいかねぇな」
奇襲が失敗した割には、口角が上がっている。もう視界も元通りなようだ。
さて、今の状況は前方に緋翼、後方に終夜と挟まれた感じだ。2年生たちは全員ダウンしてしまったので、残るは1年生3人組。
数有利とはいえ、ここは慎重に動くことにする。まず、この2人を合流させない方が良いだろう。
「結月はそのまま部長の相手を頼む! 俺と暁君で副部長を相手する!」
「わかった!」
「ま、それが合理的だな」
終夜の攻撃を防いだ結月がそのまま彼を相手にし、晴登と伸太郎が緋翼の相手をすることになった。実力的にもこのチーム分けが最適解なはずだ。
「いいの暁? 誰かと一緒だとお得意の自爆が使えないんじゃない?」
「もうあの技には頼らないってことっすよ。俺だって成長してるんすから!」
伸太郎と緋翼の勝負は、テストの時に続いて2度目。何やら因縁があるようだが、今回は晴登も加わっての戦闘。前回のように伸太郎に捨て身の行動はさせたくない。
──先に、伸太郎が動いた。
「"光銃"!」
「っ!」
力強く彼の指鉄砲から放たれた一筋の光。前回と比べると技に磨きがかかっている。
緋翼は刀で防ぎこそしたが、少し驚いた表情をする。
「ふぅん、少しはマシになってるようね。でも所詮、黒木の真似事ってことでしょ? それじゃ私には通用しないよ?」
「それだけなら、ですけどね」
「……三浦はどこ行ったの?」
伸太郎の含みのある笑みを見て、緋翼はすぐに状況の変化に気づく。なんとさっきまで彼の隣にいたはずの晴登が、光が瞬く間に消えていたのだ。魔導祭で見た高速移動だと、彼女はすぐに勘づく。
「──"烈風拳"!」
「くっ!」
「ここだ! "烈火爆砕"!」
そして突如として背後から現れた晴登の拳に、辛うじて刀でのガードを間に合わせる。しかし、さらにその背後からは伸太郎が攻撃を仕掛けてきていた。
さすがに前方と後方を同時にガードすることは不可能。晴登の奇襲から挟み撃ちまで含めて、伸太郎の思惑だったのだろう。頭の回る相手はこれだから嫌だ。ただ、
「遅い!」
「あれ……?」
挟み撃ちが成功するよりも先に、緋翼が晴登を弾き返し、ジャンプして避ける方が早かった。寸前で攻撃をかわされ、当てが外れた伸太郎が素っ頓狂な声を上げる。
「「うわぁ!?」」
人とはいえ、走れば急には止まれない。伸太郎はそのまま晴登の元まで突進して、ついに爆発が巻き起こってしまう。
「今のは危なかった……。あんたの足が遅くて助かったわ」
2人から離れた場所に着地し、息を整える緋翼。結果的に失敗したものの、作戦は非常に良かったと思う。失敗の原因が情けない理由だが。
「ごほ、ごほ。まだまだこれからだよ、暁君……暁君?」
爆発による砂煙を振り払い、晴登は咳き込みながら伸太郎に声をかける。だが、その声に応える者はいない。なぜなら、伸太郎は爆発に巻き込まれてダウンしているからだ。
「そんな……!」
「結局自爆してるじゃないの。まぁ三浦に当たらないようにしたってことかしらね」
「くっ……」
伸太郎が倒れている所の地面が抉れていることから、彼は咄嗟に手のひらを下に向けて爆発させたのだろう。本来であれば自爆する技ではないだろうが、彼は晴登よりも自分が犠牲になることを選んだ。その決断を無駄にはできない。
「"鎌鼬"!」
「"紅蓮斬"!」
晴登はすぐさま攻撃に移る。手刀を振るって風の刃を射出した。一方、緋翼も刀を振るって焔の斬撃を飛ばす。そして風と焔は交錯し、火柱となって燃え盛った。
だが攻撃はそこで終わらない。その火柱が消えるや否や、晴登は緋翼に向かって飛び出した。
「"噴射"!」
足の先から猛烈な風を噴き出すことで、まさに弾丸のような速度で接近する。この勢いで拳を振るえばノックアウトも容易だろう。
「"不知火返し"!」
だがさすがは緋翼。持ち前の反射神経でカウンターを合わせに来た。この技は相手の速さが速いほど威力が上がるというものなので、今の晴登が当たればこれもまたノックアウト必至である。
「ほっ!」
「なっ……!?」
しかし残念ながら、その行動は"晴読"でカンニング済みである。カウンターで刀を横に振ってくるタイミングですかさずジャンプした。
「"天翔波"!」
「ぐっ!」
刀を振り切った姿勢の緋翼に真上からの一撃。当然防御はできずに、彼女は風で地面に押し付けられる。
「まだっ……!」
「"鎌鼬"!」
緋翼がすぐに起き上がろうとしたので、晴登は素早く着地してからすかさず彼女の首元に手刀を近づける。
「ま、参った……」
実際にこのまま手刀を振るうことはないのだが、こうでもしないと負けず嫌いの緋翼は降参してくれそうになかったので仕方ない。
こっちが片付いたので、残るは終夜ただ1人。
「結月は?!」
少しの間だが、終夜とタイマンを張っている結月の負担は大きい。早く加勢に向かわなければ。そう思って彼女の方を向くと、予想外の状況になっていた。
「──参った」
その言葉を放ったのはなんと終夜だった。
伸ばした腕を鬼化した結月に掴まれ、首から下を氷漬けにされていたのだ。恐らく麻痺でも狙ったのだろうが、運悪く返り討ちといったところか。
この状況になるまでに、一体どんな戦闘を繰り広げていたのだろうか。最初から見てみたかった。
「ふっ。お前らなら、魔術部を任せられるな」
氷漬けにされたままそうカッコつける終夜は、少しダサかった。
*
模擬戦が終わると、終夜が言っていた通りパーティが始まった。場所は魔術部の部室ではなく別の教室。なんと、パーティの用意はあらかじめされていたのだった。
部屋の装飾は程々に、長机に料理が所狭しと並べられている。
「それじゃあ、乾杯!」
終夜のかけ声に合わせて、ジュースの入ったグラスがぶつかり合う音が続けざまに響いた。
一口飲むと、口の中に果物の風味と甘みが充満する。戦闘後の一杯は格別に美味い。
「おっと、そういえば宿題チェックを忘れてた」
「「!!」」
と、そこでふと思い出したように終夜が呟く。すると2年生たちがびくりと肩を跳ねさせたのがわかった。中でも特に──
「どうした西片、身体が震えてるぞ」
「ま、まだ読書感想文が終わってなくて……あ、でも、半分は書いたんです! だから──」
「去年も終わってなかったのにまだ懲りてねぇのか。まぁいいや。今年の罰ゲームを始めるぞ」
罰ゲーム。それは夏休みに入る前に終夜が宣告していたものだ。いつチェックされるのかわからなかったから結月と一緒に早めに終わらせていたが、命拾いしたようである。
「はいこれ」
「シュークリーム、ですか?」
「今年はロシアンシュークリームといこうじゃねぇか」
そう言って、部長は不敵に笑う。
ここで一応説明すると、ロシアンシュークリームとはロシアンルーレットをシュークリームで代用したゲームであり、いくつかあるシュークリームの中に1つだけハズレを用意して、プレイヤーが順番に食べていく中で最初にハズレを引いた人が負けというのがよくあるルールだ。
しかし、今回はこのルールと決定的に違う箇所が存在している。それは、
「あの、1個しかないんですけど……」
「ん? じゃあそれがお前の分ってことだな。ほら、早く食えよ」
ロシアンルーレットには必ずハズレが存在する。そして罰ゲームと称されて西片に渡されたシュークリームは1つ。その中身が何なのかは想像に難くない。だから西片も食べるのを躊躇していたが、ついに決心して口を開ける。
「えい! はむっ」
一口。彼はシュークリームをかじる。その瞬間、彼の顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。
「か、辛ぇぇぇ!!!」
やっぱりと言うか何と言うか。ハズレは激辛シュークリームだったようだ。定番と言えば定番だが、いざやると相当苦しいと思う。西片の絶叫が教室に木霊する。
「はっはっは! あ、お前らもやるか?」
「「遠慮します……」」
その叫びに負けないくらい終夜は大きな笑い声を上げ、そして悪魔のゲームを他の人にも勧めてくる。勧めるのはいいが、シュークリームを1つだけしか差し出さないのはやめて欲しい。当然、誰もその誘いを受けなかったのだった。
その後もパーティは団欒とした雰囲気で進み、晴登も伸太郎と他愛ない会話を交わしていた。
「それにしても、お前が部長だなんてな。これからは部長って呼んだ方がいいか?」
「急によそよそしくなるのやめてよ。いつも通りで──」
部長になったことをからかってくる伸太郎。後輩とかならまだしも、同期である彼にそう呼ばれるのはさすがに嫌だ。だからやめるように言おうとしたところで、ふと名案を思いつく。
「いや、これからは『晴登』って名前で呼んでよ、『伸太郎』」
「──何て?」
一拍遅れて彼の素っ頓狂な返事が返ってくる。頭の回転が早い彼でも、今の言葉を理解するのには時間がかかったらしい。
「いや、俺たち同じ部活の仲間なんだしさ、そろそろ名前呼びでもいいかな〜って」
「い、いきなりだな。そんな急に変える必要あるのか?」
「結月のことは既に呼んでるのに?」
「それは区別のために仕方なくであって……あぁわかったわかった、そんな目で見るな! 呼べばいいんだろ呼べば!」
言い訳をする伸太郎に残念そうな表情を向けると、彼はすぐに折れた。まだ短い付き合いだが、彼には頼み込む作戦がよく効くことは既に知っている。これからも利用してやりたいと思う。
そして伸太郎はゆっくりと深呼吸した後、晴登と目を合わせないようにしてから一言、
「その……これからもよろしく。は、は、晴登」
名前呼びに慣れていないのか、恥ずかしそうに晴登の名前を呼んだ伸太郎。普段堂々としている彼がしおらしくなっているのを見ると、何だか口元が緩んでしまう。
「……」
「な、何とか言えよ!」
「……これ、いいね」
「何だよその反応! 恥ずかしいだろ!」
顔を真っ赤にして声を大きくする伸太郎を見て、晴登もまた大きな声で笑うのだった。
後書き
ついに夏休みが終わってしまった波羅月です。え、まだ暑くない……?
ということで、今回は終夜たちの引退のお話でした。引退ってやっぱり寂しいですよね。自分も経験があるのでわかります。でも魔術部はきっとしんみりしすぎないように、ちょうど今回の話のようになると思いました。これからも晴登を中心に頑張って欲しいです。
そして、始まってしまった引退試合。引き延ばすつもりはないので決着は早めです。う〜ん1年生のポテンシャルが高すぎる。ズルくない?
はい。そういう訳で、この物語の夏休み編もこれで終了となります。次話から2学期が始まる訳ですが、まぁ2学期といったらあのイベントしかないでしょう。ついでに夏休み明けといったらこのイベントも。6章スタートは目前です。ちなみにプロットはまだ終わってません。はよやれ。
それでは今回も読んで頂き、ありがとうございました! 次回もお楽しみに! では!
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