はらだし
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第二章
「このまま歩いてね」
「帰れたわね、じゃあ私地下鉄に乗るから」
大阪市のというのだ、かつては市営であったが今は独立している。
「それじゃあね」
「うん、もうちょっとしたらお別れね」
「そうね」
二人でこうした話をしながら梅田駅の中を歩いていった、そして。
たまたま人気のない場所に二人で行くとだった、不意に。
目の前に肌色の身体で頭はなく腹に大笑いした顔があってだった。
そこから人間の手足を出した何かが出て来て二人に言ってきた。
「疲れた顔をしているな」
「って妖怪?」
「そうよね」
二人はそれに声をかけられてすぐに言った。
「何て名前かわからないけれど」
「これは妖怪ね」
「間違いなくね」
「ふむ、わしを見ても最初は驚かんか」
相手も二人の言葉を受けて言った。
「見事だな」
「だってね」
「そう言われてもね」
二人はそう言われて彼女達の間で話した。
「私達の学校妖怪とか幽霊のお話多いから」
「八条学園はね」
「学園全体にあるから」
「見たとか出たとか」
「それでどんな風か聞いてるし」
「妖怪は怖くなくて」
そうしてというのだ。
「幽霊は怨霊だと怖い」
「そうだってね」
「左様、妖怪は精々悪戯をする位だ」
相手もそれはとだ、腹にある顔から言った。
「大抵は悪さはせんぞ」
「まして今人がいなくても駅の構内で堂々と出るなんて」
「悪い妖怪じゃないわね」
「悪い妖怪なら物陰から」
「悪い人がそうするみたいにするからね」
「そこは妖怪も人も同じじゃ」
相手もそれはと答えた。
「悪い奴は物陰からこっそりとじゃ」
「おかしいと人通りの多い場所でいきなり包丁振り回すけどね」
「まあそれはおかしい人で」
「悪い人や悪い妖怪はね」
「一人でいるところを物陰からよね」
「そうする、わしは悪いことはせん」
二人にはっきりと答えた。
「わしははらだしという」
「はらだしね」
「そうした妖怪もいるのね」
二人は相手の名乗りを受けて応えた。
「うちの学校にいたかしら?」
「ちょっと聞かないわね」
「お前さん達の学校のことは知らん」
はらだしはそれはと返した。
「だがわしはここにおって疲れたり弱っている者を励ます為におる」
「ふうん、そうなの」
「そうした妖怪さんなのね」
「そして見たところお前さん達は随分疲れておる」
はらだしは腕を組んで述べた。
「それでわしの踊りでも披露して笑ってもらってな」
「元気を出してもらう」
「そうしてもらう為に出て来たの」
「左様、今は踊りだけでなくな」
それに加えてというのだ。
「落語も身に着けておる」
「落語も出来るの」
「そうなの」
「そうじゃ、妖怪のお笑いもシビアでのう」
はらだしは横文字も入れて話した。
「踊りだけでは芸が足りん」
「それでなの」
「落語も出来るの」
「そうじゃ、時間がないなら短くて笑えるネタを出すが」
落語のそれをというのだ。
「どうであろうか」
「そうね、踊りよりも落語がいいかしら」
「そうよね」
二人ははらだしの話を受けて二人で話した。
「それならね」
「その方がいいかもね」
「それじゃあね」
「その短くて笑えるの聞かせて」
「ではな」
はらだしも頷いて応えた、そうしてだった。
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