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おっちょこちょいのかよちゃん

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235 杉山の動向と敵の姿

 
前書き
《前回》
 かよ子達は長山によるの捜索の結果、ヴィクトリア女王いる方角へと進む。笹山は武則天という女性に出会い、藤木を見つけ出す為に彼女の二人の部下姚崇と張設と共に行動する。そして藤木の希望で夕食を彼と会食する事になったりえは藤木と夏休みの思い出を語り合うと共に藤木が異世界に来る事になった経緯(いきさつ)を知る。りえは元の世界に戻った方がいいのではないかと提案するが藤木に拒否される。りえは今のままではかよ子達が藤木の元に辿り着いたとしても作戦が上手く行かない恐れを懸念するのだった!!
 

 
 こちらは藤木救出班。かよ子達は夕食の時間として食事が提供されていたのだが、かよ子は食べずにただ羽根を急いで飛ばしていた。
「山田、食べろよブー」
「あ、うん、ごめん・・・」
(杖を取り返したいという焦りがとれないのか・・・。そうであろうな。己の得物を奪われてしまったのでは落ち着く事ができぬのも解らなくはない)
 次郎長はかよ子の心情を考察した。
「山田かよ子、飯を食わぬと杖も取り返せぬぞ」
「あ、ごめん、また私おっちょこちょいしちゃって・・・。杖がないと落ち着けないんだ。それに早く終わらせてまた藤木君を捜すのに戻りたいし・・・」
「確かにそうだろうね」
 関根も共感した。
「でも、食べた方がいいよお〜。今日は何と言っても餃子だよ〜」
「うん、餃子は最高じゃ!」
 まる子と友蔵は幸せそうに食べていた。
「お主らは少し緊張感を持て!」
 石松は窘めた。
「そうだよ、ももこちゃん!食べる為にここに来たんじゃないよ!」
 のり子も怒る。
「ご、ごめん・・・」

 食事を終えた藤木は遊女達と風呂に入る。藤木は遊女から背中を洗われていた。
「あ、茂様、私よりもあの安藤りえ嬢の方が良かったでしょうか?」
「あ、いや、そんな事ないさ!」
「そうですか、妲己様が祝言の日は本日の晩餐以上にもっと楽しませてあげようってお考えになられています。最高の祝言になるといいですね」
「うん、そうだね」

 フローレンスが赤軍の西川の回収に現れた時には夕食時となっていた。その場にはさり達護符の所有者達もいた。
「遅くなりました」
「いや、気にしないで。こいつはまだ起きてないわ」
「そうでしたか。ごゆっくり食事なさってくださいませ」
「あ、そうだ」
「はい?」
 さりはフローレンスを呼び止めた。フローレンスが振り返り、さりは話を続ける。
「私の従弟なんだけど、私の護符で出した鎖つきの鉄球を渡したの。健ちゃんが道具を持ってないのは辛いんじゃないかしら?」
「従弟思いですわね。理由はあります。三河口健さんには三種の異能の能力(ちから)が全て備わっています。彼はそれだけでさえ強者です。三河口健さんに相応しき道具は他の皆様や羽柴さりさんのその護符を含みます四つの聖なる道具以上に強力な物が必要になりますのです。それ故に彼を剣奪還班に選抜させまして本部に剣を持ち帰らせましたのです。本来ならばそこで貴女や山田かよ子ちゃん、安藤りえちゃんを本部に呼び出しましてその護符、杖、杯を借りまして作りましょうと思いましたのですが、山田かよ子ちゃんの杖は奪われ、安藤りえちゃんも杯を取られまして彼女も消息不明となってしまいました為に結局できなかったのですが・・・」
「ふうん、私が出した武器、上手く使ってくれたらいいわね・・・」
「ええ、きっと使いこなせますよ。では私は次の場所へ東アジア反日武装戦線の佐々木規夫を回収していきます」
「その佐々木って人はやっつけたの?」
「はい、山田かよ子ちゃんや貴女のお姉さん・煮雪ありさん達によって仕留められました。あ、そうそう、長山治君」
「え?」
「杉山さとし君についてですが、今戦争を正義とします世界の長と契約しましたようでその人物に身体を貸しています。要は一心同体となりましたといいます事です。時折その眼鏡で杉山さとし君の同行を確認して頂けますか?」
「え!?あ、うん、解った!」
「それでは」
 フローレンスは立ち去った。長山は神通力の眼鏡で杉山を確かめる。
(杉山君・・・)
 眼鏡から見えたのは杉山ではなく、一人の男性の姿だった。
「あれが戦争主義の世界の長・・・」
「長山君、私達にも見せられる?」
「あ、うん」
 長山の眼鏡が自動車のヘッドライトのように前方に光り出す。そこに映像のように映し出される。
「こ、これは・・・!!」
 さりはその男の姿を見て思い出した。以前、夢の中に出て来た事があった男だった。
「私、この人、夢の中で出て来た事があるわ!」
「なんやて!?」
「それからこの人は姿が変わったわ。杉山君に・・・」
「って事は、さとしはこの男に体を売って寝返ったって事!?」
 杉山の姉も弟への驚きと怒りが込み上がって来た。
「あのバカ・・・!!」
「そやつはお主の護符を狙う為に様々な刺客を送り込むに違いない。何しろ現に赤軍の西川純がここまで出向いておるのだ」
「う、うん・・・」
 清正の警告でさりは対抗姿勢を崩してはならぬと警戒した。

 杉山はもう一人の心を宿す男・レーニンと共に本部へと戻る。
「杯は紂王の屋敷に預けたままではあるが、本当にそれでよいのか?」
「だって、剣を本部に置きっぱなしにしてたら取られたんだろ?また杯を本部に持ってったら二の舞でだぜ」
「う・・・、流石にその通りか。この私も民主主義を目指して生きて来た者。貴様の意見も受け入れておこう」
「明後日、またあの紂王の屋敷に行こうぜ。祝言ってやつが楽しみだ」
「しかし、そのような余興など楽しんでいてよいのか?」
「まあ、赤軍達も動いてくれてんだろ?少しは羽根を休めようぜ」
「まったく、呑気なのか、冷静なのか解らん小僧だ」

 そしてとある館。一人の女帝が赤軍の男によって渡された杖を確認する。
「これがかの杖か・・・。我が宝にしたいところだな」
「じきにそうなると思いますよ。何しろこの世界の最上位の宝具とされるものの一つですから。そして同じく杯も紂王という男の屋敷に匿われており、四つの聖なる道具の内、二つは我々の世界のもの。あとは護符が我々の世界に渡り、剣も取り返せれば我々の理想の世界が出来上がるでしょう」
「楽しみだ。レーニンもさぞお喜びになるだろうな。ところで杖の所有者という小娘達が奪い返しに来るという話だが、迎撃をしておかないとな」
「それについてはアルフレートお兄様が向かっておりますわ」
「そうか、アルフレートはいい戦果を出しているからな。アドルフとかいう男と共に東部の龍の湖の制圧をし、この地を広げる為にも邪魔をしようとする信玄とかいう人間を葬っているからな。ルイーズ、お前も自分の姉上達とこの館の周囲を保護するのだぞ」
「はい、お母様」
 その時、一人の男性が入って来た。
「ヴィクトリア」
「貴方・・・。雷の山が奪われてしまったとな」
「ああ、アリスもヘレナもコテンパンにされてしまった」
「まだ機会はあるわよ。杖を奪い返そうとする連中をまずぶちのめしましょう」
「ああ、そうだな」
 その女帝は杖を見る。
(はて、聞いた話ではこの持ち主はおっちょこちょいだとか・・・。簡単に取り返せるのかしらね?)

 かよ子は食事を終えると寝る暇もなく羽根を飛ばした。
(この西の方に私の杖があるんだね・・・!)
 かよ子は長山にまた連絡を試みる。
「長山君、私だよ、山田かよ子だよ」
『山田、どうしたんだい?』
「今、杖のある場所と私のいる所、どのくらい離れているか確認できる?」
『あ、ああ、やってみるよ』
 長山は眼鏡で探知しているためか少し沈黙が流れた。
『山田、杖のある場所場で40キロ程は離れているよ』
「ありがとう。それなら羽根を飛ばせば2,3時間で着けるね」
『ああ、そのくらいかな』
「うん、それじゃ!」
 通信を終了させた。かよ子は皆が眠ろうとする中、高速で羽根を飛ばす。 
 

 
後書き
次回は・・・
「不眠で突き進む」
 かよ子の父は一人寂しく夜を過ごす中、隣の羽柴家の主人と酒を飲み交わす事にする。かよ子は一日でも早く羽根を取り返すべく、眠らずに羽根をそのまま飛ばす。そして辿り着いた先は・・・!? 
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