レーヴァティン
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第二百六十一話 夜に語り合いその四
「やはりです」
「悪事ですね」
「自分の叔父さんに殴ってやろうなぞ」
「しかも身体を壊した人に」
「あまりにも酷い」
「そうした悪事なので」
そう言うしかないとだ、順一は酒を一杯飲んでから述べた。
「当然の結果としてです」
「伝わりますね」
「こんな酷い人がいる」
「それを知った八条家の人達がおられて」
学園の経営者の一族の彼等がというのだ。
「それか八条家の周りの人達がいて」
「その人達からですね」
「八条グループ全体に話が伝わり」
「そして学園にも伝わった」
「それで我々も知っていますね」
「そうですね」
順一は嫌そうに語った。
「残念ながら」
「世の中ここまでみっともない人がいる」
「どうしようもない悪事ばかり行う人が」
「犯罪は行わずとも」
「人としての罪を重ねる人が」
「こうした人が餓鬼になりますね」
「全くですね」
順一もその通りだと応えた。
「人としてあまりにも浅ましく卑しい」
「そんな人こそがです」
「生きながら心が餓鬼になり」
「死んで餓鬼道に堕ち」
「そして餓と渇きに苦しむ」
「そうなりますね」
謙二は順一のその言葉に頷いた。
「まことに」
「全くです。しかしこの人は自分をこの世で一番偉いと考えていたそうですが」
順一はここで首を傾げさせて言った。
「私にはこの人の何処が偉いのか」
「わからないですね」
「何もしたことがなく何も持っておらず」
「何も出来ないですね」
「そんな人なので」
だからだというのだ。
「人格はこの通りで」
「財産も地位もですね」
「技能もです」
「まさに何もない」
「何かを果たした訳でもない」
「それでどうして偉いのか」
「そう思えるかです」
自分でというのだ。
「全くわかりません」
「そうですね、拙僧もです」
謙二も同じ考えだった。
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