蟻を使っての実験で
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第一章
蟻を使っての実験で
八条学園高等部生物部では今ある実験が行われていた、多くの蟻を集めてだ。
水槽、内部が隅から隅まで見えるピラミッド型のそれを用いて巣の中までよく見える様にしてだった。その水槽を別の大きな水槽の中に置いてその水槽には多くの餌を置いている。
観ていた、そこでだ。
一年生で普通科のエンリケ=クーラエクアドルから来ていて浅黒い肌とアジア系の顔に黒く縮んだ髪の毛で一七〇位の背で黒の詰襟の制服の彼は言った。
「何か皆真面目に働いている様ですね」
「働き蟻はな」
二年の工業科のゴー=チェンミンベトナムから来ている緑のブレザーと赤のネクタイに青のスラックスと白いブラウスの制服で黒いさらりとしたショートヘヤと穏やかな黄色いと言っていい肌の彼が応えた。背はクーラと同じ位だ。
「そうだな」
「はい、けれどどの蟻もかっていいますと」
クーラは蟻達の動きを見つつゴーに話した。
「それはですね」
「ああ、気付いたか」
「はい、九割の働き蟻は真面目で」
その様に動いていてというのだ。
「熱心に働いていますが」
「巣の中でもな」
「餌を運んだり警戒をしたり」
「卵や幼虫の世話をしてな」
水槽から透けて見える巣の中ではそうした作業もしていた、女王蟻や羽根のある雄蟻達も見えている。
「そうしてるよな」
「はい、ですが」
「残り一割がな」
「怠けてますね」
「皆がじゃないだろ」
「そうですよね」
「それでな」
ここでだ、ゴーは。
思わせぶりに笑ってだ、クーラに言った。
「残り一割をどけたら」
「皆真面目に働きますね」
「そう思うな、だったら今からその一割をな」
働かない蟻達をというのだ。
「一旦どけて別の水槽に置くな」
「そうしますか」
「それで皆真面目に働く様になるな」
「ええ、怠け者がいなくなれば」
そうした蟻達がというのだ。
「皆がそうしますね」
「じゃあそれを7観ような」
「はい、今から」
クーラはゴーの言葉に頷いてだった。
そのうえで彼と共にピンセットで蟻を傷付けない様に丁寧にだった。
怠け者の蟻達を摘んで別の水槽に一時入れた、クーラはこれで全ての蟻が真面目に働くと確信したが。
それまで真面目に働いていた蟻達の一割がだ。
「あれっ、どうして」
「また一割がだよな」
「怠けてますね」
「そうなったな」
「はい、どうしてでしょうか」
「じゃあ今度の一割もな」
笑ってだ、ゴーはクーラに話した。
「どけるか」
「そうしますか」
「怠け者をどけてな」
「皆に熱心に働いてもらいましょう」
こう話してだった。
二人でまた怠け者の蟻達をどけて別の水槽にやった、するとだった。
やはり一割の蟻が怠ける、クーラはこの状況に首を傾げさせた。
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