ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~
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第82話
一方、時を大分戻し、ビルスの星で修行をしていた悟空とベジータ。
互いに身勝手の極意と我儘の極意の完成度を高めていき、ベジータも何かのきっかけがあれば壁を乗り越えられるところまで来ていた。
瞑想をしていた悟空だが、その表情にはどこか翳りが見える。
悟林が地球に戻る前に悟林と組み手をし、銀髪の身勝手の極意で挑んだのだが返り討ちに遭ってしまった。
敗北の理由は悟空の攻撃を耐えられ、悟空の身勝手の極意の精度が落ちたところを悟林が攻撃の一瞬に超究極界王拳を発動させて一撃を叩き込まれて敗北してしまった。
「うーん、フルパワーの身勝手は長続きしねえな」
「悟空さん、私達天使と悟空さんの身勝手の極意の違いは何だと思います?」
「え?えっと…ウイスさん。変身してねえよな?」
手合わせをしている時も息抜きをしている時もウイスは全く変化していないので多分ウイスとメルスは常時身勝手の極意なのだろう。
「正解です。私達天使は常に身勝手の極意の状態です。それに対して悟空さんは…」
「変身しねえと身勝手になれねえから体が勝手に動かねえってことか」
「いいえ、悟空さん。そもそも身勝手の極意は変身ではなく技です。心が常に安定していれば体は如何なる危機にも対応出来ます。」
「…ようはこのまんまの状態で身勝手を使えなきゃ駄目ってことだな」
「その通りです。悟空さんが常に身勝手の極意の状態であれば変身を伴う身勝手の極意の負担も軽減するはずです。変身の身勝手は限界を超えて闘う時のための切り札にしましょう。普段の状態で身勝手が使えるようになれば超サイヤ人との併用が可能となるでしょう。」
「超サイヤ人か…そうだな、正直界王拳との重ね技も限界を感じてたんだ」
如何に超サイヤ人ブルーによって肉体が神の如く強化されようとも当然界王拳のデメリットは変わらない。
通常の状態と変わらずに神の如く戦闘力を発揮する悟林の究極神化と純粋に戦闘力を強化するベジータの超サイヤ人ブルーフルパワーに劣っている感が否めなかった。
しかし、超サイヤ人と身勝手の極意の併用が可能となれば変身が伴う身勝手の極意と“兆”には戦闘力と防御、動きの精度は劣るだろうが安定して闘えるようになる。
特に未来予知レベルの洞察力を持つ超サイヤ人ブルーと併用出来れば例え格上相手でも粘れるだろう。
流石に数百倍差となれば厳しいだろうが。
ベジータもベジータで破壊神の技を練習しており、大岩を持ち上げていた。
「悟空さんとベジータさんが極意を完全に物にするまでまだまだかかりそうですが、あまり悠長なことを言ってられないかもしれませんね。お2人共、聞いて下さい。修行をするならライバルは昨日の自分です。過去の自分より確実に強くなりなさい」
ウイスの言葉に悟空とベジータは疑問符を浮かべている。
「あ、ああ、勿論毎日強くなっているつもりだけど」
「日々トレーニングをしてるんだ。強くなるのは当然だろう。格言か何かか?」
「少し前、この宇宙で異変が起こりましたので…念のためです。地球でも何かが起ころうとしているようですからね」
「地球に?また侵略者か?」
「いえ、どうやら地球人のようですね。悟林さん達を調べているようです。その者達はこのようなマークを付けていましたよ」
「これ、レッドリボン軍のマークじゃねえか」
悟空も朧気ながら覚えている。
かつて悟空が少年時代に激突し、滅ぼした地球最悪の軍隊。
その質の悪さはドクター・ゲロが引き継ぎ、彼が造り出した人造人間は並行世界の過去を悲惨な世界をへと変え、悟空も一時期娘を喪った。
レッドリボン軍が復活しようとしているのだろうか?
「ふん、ドクター・ゲロがいない今、そのレッドリボン軍も雑魚の集まりに過ぎん。地球にいる連中でもどうにか出来るだろう」
しかしベジータにとってはレッドリボン軍の復活など大したことではない。
セルなどの人造人間を造り出したドクター・ゲロ亡き今、レッドリボン軍など貧弱な地球人集団でしかない。
「そうだな、地球には悟林がいるから大丈夫だろ。いざとなったらピッコロやブウとかもいるし」
「この前のフリーザのように地球ごと吹き飛ばしそうになったらどうするつもりだ」
「大丈夫だって、流石にトランクスがいる地球を敵ごと吹っ飛ばしたりしねえよ。トランクスと恋人っちゅう奴なんだろ?」
「…だと良いがな」
悟空もレッドリボン軍の復活を些事として見なし、身勝手の極意の精度を高めることに力を注ぐ。
しかし、悟空は身勝手の極意の精度の他にも問題を抱えていた。
体が無意識に動くために悟空の思い通りに闘えないと言う個人的な不満のような物。
身勝手の極意のような力を発揮しつつ自分の思い通りに闘える方法がないかを模索するのであった。
ベジータはウイスの前で座禅を組むと目を閉じた。
「それではベジータさん、行きますよ。私が言う通りに感情のコントロールを」
「…なあ、ウイスさん。何の修行だそれ?」
「我儘の極意は闘争心を燃やす度に強さを増していきます…そのためにベジータさんは感情のコントロールをしているのですよ。効率良く力を高めるために」
「カカロット、俺達サイヤ人は感情の爆発によって限界を超える。最初の超サイヤ人の切っ掛けが“怒り”だったようにな。ビルス様はダメージを受けなくても力が無限に上がっていた。同じ破壊神の力を使うならこの修行は避けて通れん」
「そうか……でも身勝手の極意には…いや、待てよ…あれなら…」
何か思い浮かんだのか悟空は再び瞑想し、ベジータも感情のコントロールの修行を始めた。
しかし、集中し過ぎるあまりにブルマからの通信を知ることはなかった。
そして時は人造人間と悟林が闘った時に戻り、ピッコロもまた別の人造人間の襲撃を受けており、迎え撃ったものの返り討ちに遭ってしまっていた。
そして何とか人造人間を追い掛けてレッドリボン軍の基地に潜入し、驚愕の情報を入手してしまった。
それはセルを基にした怪物・セルマックス。
そして自分を圧倒したガンマ2号とその仲間の1号。
1号は悟林が返り討ちにしたらしく、ボロボロの状態で基地に戻ってきた。
人造人間を造ったらしい人物のドクター・ヘドも驚愕し、ボスのマゼンタもセルマックスを起動させようとしてヘドと一悶着あったりしたが、今はそんなことはどうでもいい。
ブルマと連絡を取り、ベジータと悟空はビルスの星で修行していた。
17号と18号はヘドにデータで弱点を知られている可能性があり、そしてブウは休眠期と言う相変わらずのタイミングの悪さを発揮していた。
つまり今の地球で戦力になりそうなのは悟林、トランクス、悟天、自分の4人のみ…いや、悟天は母親のチチが許すかのかと思うと悟天の参戦は絶望的。
つまり最低でも3人しか戦力がいないと言うことだ。
今の悟飯は腑抜けていてまともな戦力になるかは分からない。
並行世界の未来から未来悟飯と未来トランクスが今からでもこの時代に来てくれないものかとピッコロも頭を抱える。
しかしブルマに聞いてみたが、この前モロとの闘いの後に遊びに来たのでしばらくはエネルギーの問題で来れないらしい。
しかし、悟林がいたのは幸運だった。
何せガンマ1号・2号の実力は悟空とベジータにも匹敵するレベルであり、セルマックスの戦闘力は未知数。
何があってもフルパワーとなった悟林ならば倒せる…と思ってピッコロは自己嫌悪する。
無意識のうちに弟子の力に甘えていることに、今の自分では悟林の師匠と言っても恥ずかしいだけだ。
足手まといにならないだけの力を得るためにデンデにパワーアップを頼んだのだが、まだ若年のデンデでは最長老のような潜在能力を引き出すようなことは出来ず、代わりにドラゴンボールでのパワーアップをすることに。
従来のドラゴンボールでは不可能だが、アップグレードすれば可能になる…らしい。
ブルマが既にドラゴンボールを集めており、しょうもない願いを叶えられる前に使用する権利をもらったピッコロはカプセルコーポレーションに向かった。
「あ、ピッコロさん。」
「悟林か…何時もの道着姿ではないから違和感があるな」
「あのね、流石にデートまで道着姿なわけないでしょ?まあ、人造人間のせいで上着が少し破けたから服を借りたんだけど」
「適当に済ませたのよこの子。見た目は良いのに勿体ない…ねえ、悟林ちゃん。この服とか」
「動きにくいから却下」
今の悟林は濃紺のタンクトップを着ていた。
ブルマが持ってくる服は動きにくそうな物ばかりなので遠慮したい。
「悟林ちゃんって私程じゃないにしろ美人なのに勿体ないわねー」
「母さん…悟林さんには悟林さんの好みがあるんだから無理強いは駄目でしょ」
服装の好みは人それぞれなのだから無理強いは駄目だろう。
幼少期の時は年相応の格好をしていたが、今では基本的に道着か作業着が当たり前になってしまい、スカートなどには抵抗があるらしい。
「それにしてもピッコロさんがカプセルコーポレーションに来るなんて珍しいね」
「ドラゴンボールを使わせてもらいたくてな。デンデによってアップグレードしたドラゴンボールで俺の潜在能力を引き出してもらう。」
「…何で?」
「話せば長くなるがな」
復活したレッドリボン軍。
人造人間・ガンマ1号と2号。
そしてセルを基にした怪物・セルマックス。
「へえ、面白そうじゃない。完成まで待ってようよ」
「どこまでもブレないわねあんたは!?」
「いいじゃないブルマさん。お父さんもベジータさんもいないんだし、私だけお楽しみだよ…ブロリーさんの時は私、風邪引いちゃってたからね…」
「そう言えば悟林さん。高熱出して倒れちゃったんだよね確か」
サイヤ人が如何に強靭な肉体を持とうと病には敵わないということが良く分かった瞬間であった。
取り敢えずセルマックスと闘いたい悟林は完成まで待ちたいらしい。
「とにかくドラゴンボールは使わせてもらう。何時までもお前に頼りっぱなしではお前の師として情けないからな」
以前悟空が言っていたことがある。
自分達がいなくなった後、残った者達に地球を守って欲しいと。
悟空もベジータも悟林も不死身ではないので、いずれこの世を去る時が来る。
それなのに3人がいなくなった瞬間に地球が終わるなど情けないにも程がある。
ナメック星人故に長命なピッコロは未来のことも見据えており、悟林もピッコロの気持ちに何となく気付いたのか何も言わなくなった。
「あ、そうだ」
「?」
何かを思い付いたのか手を叩く悟林にトランクスは不思議そうに見つめる。
「出でよ神龍、そして願いを叶えたまえ!」
ピッコロの言葉と同時に神龍が現れた。
「さあ、願いを言え。どんな願いも…あ、ピッコロ様…!?」
願いを何時ものように促そうとする神龍だったが、目の前にいるピッコロに驚く。
まさか自分を創造した先代の神が自分を呼び出すとは思いもしなかったのだろう。
「神龍!ナメック星の最長老様のように、俺の潜在能力を目一杯引き出すことは出来るか?」
「…ええ、勿論。それが1つ目の願いですか?」
「ああ、そうだ。やってくれ」
そう答えると神龍は願いを叶えた。
ピッコロの潜在能力が解放され、今まで眠っていた力が凄まじい勢いで解き放たれた。
「こ…これは…!お、俺の力は…これ程まで…」
「少しおまけしておきました」
そう言うと神龍がピッコロの前に鏡を出現させ、大きく見た目が変わったわけではないが、今までとは違う自分がいることをピッコロは感じた。
「では後2つの願いをどうぞ」
「俺はもういい」
ピッコロは素っ気なく言うと悟林が挙手してきた。
「ねえ、ピッコロさん。私の願いを叶えてもらっても良い?」
「何?お前がか?」
「どうしても叶えたい願いがあるんだ」
ピッコロは素直に驚く。
基本的に悟林は自分のために願いを叶えるのは自分の超サイヤ人化以外は全くしてこなかった。
しかし、今まで地球や宇宙のために闘い続けたのだから個人的な願いくらい構わないだろう。
「ああ、構わない。お前の今までの功績を考えれば当然だろう。少なくともブルマのようにつまらない願いではないだろうしな」
「どういう意味よ!?」
「よーし、それじゃあ神龍!!トランクス君をパワーアップさせてーっ!!出来ればおまけ付きで!!」
「え?」
隣のトランクスはまさかの願いに目を見開き、次の瞬間トランクスの体が光り輝き、姿は今までとは変わらないが内包する力が今までとは段違いになっている。
「やった、パワーアップ成功」
「あのー、悟林さん…これって…」
「へへ、何時も私の我が儘に付き合ってくれてるご褒美だよ」
「そ、そう…でも何だろう…今までとは桁違いの何かを感じる…」
限界の天井が取り除かれたような感覚にトランクスは両手を開いたり閉じたりを繰り返す。
「良く分かんないけど良かったわねー、トランクス。それじゃあ最後に私の願いを…」
「トランクス君だけじゃ不公平だから悟天もトランクス君と同じくらいパワーアップしてーっ!!」
「ちょっ!?」
「はい、叶えた。おまけ付きでな、ではさらばだ!!」
無情にも神龍はこの場にいない悟天のパワーアップをすると消えてしまった。
「あ…」
「よしっ!これで完璧!」
「完璧じゃないわよーっ!私の願いは!?」
「トランクス君から聞いてるけどブルマさん、小皺取りとか下らないことに使ってるんでしょ?じゃあ良いじゃない」
「良くないわよっ!!これだから80歳まで若い化け物種族は!!地球人の美容事情が分からないのね全く!!」
「私が願いを言わなかったらどんな願いを言うつもりだったの?下らない願いだったらお仕置きするよ?」
「…ちょっとお尻をキュッてしてもらったり?」
「「は?」」
ブルマの願いにトランクスとピッコロが信じられない物を見るような目でブルマを見る。
「……他は?」
「ま、睫毛を少し…ねえ、ちょっと?悟林ちゃん。笑いながら無言で近寄るの止めてくれない!?威圧感が凄いんだけど!?ねえ、あんた達助けなさいよ!!」
「やれ、悟林」
「母さん、こればっかりは擁護出来ないよ。キッチリ反省して」
希望の球であるドラゴンボールをよりによってそんなことのために使おうとしたブルマにピッコロとトランクスも悟林を止めようとはしなかった。
悟林の手がブルマの頬に触れると軽くつねった。
勿論、恐ろしく軽くだが、地球人のブルマには地獄の痛みである。
「取り敢えず俺はもう一度潜入してくる。お前達は悟天と合流してこちらに来てもらえるか?ドラゴンボールでパワーアップしたお前達は恐らくとてつもない力を持っているはずだ」
「分かったよピッコロさん。俺も久々に燃えてきたよ」
カプセルを取り出してそれを放ると、トランクスは未来トランクスの剣を出してそれを装備する。
ピッコロはその姿を見て懐かしさを感じながら不敵に笑った。
「…未来のトランクス程ではないが、頼もしくなったなトランクス」
「へへ、それじゃあ俺は悟天を連れてくるよ…そう言えば悟飯さんは?」
「…あいつは当てにならん」
どうせなら地球にいる全員で向かおうと思ったトランクスだが、今の悟飯は当てにならないらしい。
「あ、ピッコロさん。私の服を道着に変えてよ。流石にこの格好はね」
「ああ、何時もので良いのか?」
「お願…ううん、ピッコロさん。昔のお母さんが天下一武道会に参加してた時の道着って覚えてる?そっちがいい」
「お前の母親のか?別に構わんが…確か色は…上がナメック星の蛙の糞の色で下は蛞蝓の糞の色だったな」
「何てこと言うのよ!!チチさんの道着は上は青色!下は赤色よ!!」
何せチチの道着姿など1回しか見ていないので色々と朧気だったピッコロは色を何故かナメック星の蛙と蛞蝓の排泄物で例えてブルマに怒鳴られる。
早速ピッコロが手を翳すと悟林の服装はチチが天下一武道会に参加した時に着ていた道着姿になる。
「うん、ばっちり!ありがとうピッコロさん。」
「お安いご用だ」
そしてピッコロは再び潜入し、トランクスは悟天の所に向かった。
「次からはドラゴンボールは神殿に隠しておこう。必要な時にブルマさんに乱用されたら堪らないからね。全く、若くなりたいなら自分を改造したら?頭は良いんだし」
「私は普通に若くありたいのよ!」
「ドラゴンボールで若さを保つのは違うでしょーが」
ブルマの反論を一蹴し、更につねる悟林であった。
そしてトランクスは悟天を見つけて事情を説明する。
「へえ、だからトランクス君はそんな格好なんだ。それにしても姉ちゃんも人に何も言わないでパワーアップさせるなんてさ、ご褒美は建前で絶対修行のためでしょ?」
「まあ、俺もそう思ったけどさ。でも悟林さんが喜ぶなら良いかなーって」
「トランクス君って姉ちゃんに本当にベタ惚れだよね…」
初めて会ってからずっと片想いだった反動なのか、悟林に対して果てしなく甘い。
「ま、まあ俺達のことは別に良いだろ。悟天、力を貸してくれ」
「分かってるよトランクス君。ドラゴンボールでパワーアップしたんならどこまでパワーアップしたのか知りたいしね…それにしてもトランクス君。デート中に襲われるなんて不運だね」
「…そうだなあ、何でよりによって今日なんだよ…俺がこの日をどれだけ待っていたのか…許さないぞ人造人間め…!!」
怒りでどんどん戦闘力が跳ね上がっていく様子に悟天はやっぱりベジータの息子だと思うのと同時、タイミングの悪いレッドリボン軍にちょっぴり同情してしまうのであった。
「取り敢えずさ、どんな風にパワーアップしたのか確認しとこうよ。超サイヤ人になってさ」
「ああ、そうだな」
トランクスと悟天は同時に気合を入れると超サイヤ人に変身し、金色の光と橙色の光が迸ったのであった。
そしてピッコロが潜入し直した基地から大分離れた場所では…。
「レッドリボン軍か…まさか復活していたとはな…あのドクター・ゲロの孫であるドクター・ヘドの頭脳は素晴らしいな…楽しみが増えた…」
地球に訪れたセルが嬉しそうに基地を…正確にはガンマ1号・2号、そして眠っている自分の後継型を見ていた。
一方で悟空とベジータは修行しながらトランクスと悟天の気の高まりに気付いていた。
「これ、悟天とトランクスの気だよな?あいつら何時の間にこれだけのパワーを…」
「あいつらに何があった?神の気を纏おうにもあいつらはまだ未熟でフュージョンでもしない限りこれだけの気を扱えるレベルではないはずだ」
地球から遥か遠くに離れたこのビルスの星でここまではっきりと2人の気を感じ取れることに困惑していた。
「どうやら地球のドラゴンボールでパワーアップしたようですね。ピッコロさんも彼らと同じくらい…いいえ、それ以上に強くなっています」
「ピッコロも!?でも、地球のドラゴンボールでここまで強くなれるんか?」
「恐らく何らかの方法でドラゴンボールの力をパワーアップさせたようですね。ピッコロさんの今の実力はあなた方に限りなく近いでしょう」
「チッ、ドラゴンボールで強くなるとは…だが、あいつらがそれくらいしなければならないくらいに厄介な敵が地球にいると言うことか…」
ドラゴンボールで強くなると言うのはサイヤ人的には好ましい方法ではないのだろうが、あのピッコロがここまでしなければならないと感じるくらいには地球がヤバいと言うことなのだろう。
「どうします?一度地球に戻られますか?」
「…いや、オラ達はまだここで修行する。まだこのまんまで身勝手が使えてねえ…半端な状態で放り出すわけにはいかねえよ。それに地球には悟林がいるし…ピッコロ達も強くなったんだろ?なら良い機会だ。今、地球にいる奴らに何とかしてもらう。何時かオラ達がいなくなっても大丈夫なように」
悟空は通常時でも身勝手の極意を使えるようになるために修行の再開を望む。
これからの地球の未来のために若者達の力を悟空は信じてみた。
「心配要らん、俺の息子も強くなったのなら問題はないだろう。いや、トランクスだけで充分だろう」
ドラゴンボールでパワーアップは引っ掛かるものの、強くなった息子をベジータも信じてみることにしたようだ。
「分かりました。では修行を再開しましょう」
2人の意見を聞いたウイスは早速修行の再開を促した。
一方のピッコロはレッドリボン軍の基地に再潜入し、ボスのマゼンタとヘド、そしてカーマインの会話を聞いており、パンを誘拐することになっていた。
最初は悟空かベジータがターゲットになりそうになっていたが、悟空とベジータはビルスの星で修行中のために行方が分からない。
そしてガンマ1号を返り討ちにした悟林はセルマックスが完成するまでは手出しはしないことになっており、狙いは悟飯、トランクス、悟天の3人に絞られたのだが、トランクスはボス(そういうことになっている)のブルマの息子であり、悟天も悟林の弟と言うことで後回しにされ、消去法でまだ幼稚園に通うパンを誘拐して悟飯を基地に誘き寄せることになったのだ。
ピッコロはパンの元に向かう前に不慣れな手付きでスマホでメールを打ち、悟林に作戦を伝えた。
「ふーん、パンちゃんを誘拐する振りをして悟飯をその気にさせる作戦のようだね。」
「えー!?パンちゃん巻き込んじゃうの!?」
「い、意外だな。ピッコロさん、パンちゃんのこと可愛がってたのに」
悟天がまさかピッコロがパンを巻き込むことに驚愕し、トランクスも表情には出さずともパンを可愛がっているピッコロがそんなことをするのは驚いたようだ。
「まあ、私もパンちゃんに甘いピッコロさんがそんな作戦をするのには驚いたけど」
「でも、悟飯さん。来るかな?」
「パンちゃんの危機にも呑気に仕事してるようなら人造人間に代わって私が殺してやる。ギャリック砲か魔貫光殺砲でね」
修行に没頭していても何だかんだで家族の危機に駆け付けた悟空の姿を幼い頃から見てきたので、もしそんな父親失格のことをやらかそうものなら一度徹底的に叩き潰して地獄に叩き落とすつもりだ。
本当にお仕置きにうってつけの技を教えてくれた物だ恋人の父親も師匠も、いくら感謝しても足りない。
まさか教えたベジータも父親失格の烙印を押され始めている悟飯への制裁に使われるかもしれないとは思わなかっただろうが。
「「そ、そうですか…」」
もしパンの危機にも動かなかったらの話だが、双子の弟を躊躇することなく殺すと断言した悟林に悟天とトランクスは顔を引き攣らせる。
そしてピッコロは無事にパンを誘拐(に見せた)し、パンと上手く示し合わせ、悟飯の覚醒を促そうとする。
しかし、仕事に没頭していてパンと遊ぶ機会もない悟飯が来てくれるのか不安そうにしていた。
「ひょっとしたら悟林伯母ちゃんが来るかも」
「お前の危機さえ悟林に任せるようなら俺が一度あいつを地獄行きにしてやる。俺は元神だからな、何時でもあいつにあの世を紹介してやる」
ピッコロは冗談ぽく…半分本気でそう言った。
姉と師匠の殺意の籠った言葉に悟飯は強烈な寒気を感じながらくしゃみをしていた。
「よし、私達もピッコロさんの気を頼りにレッドリボン軍の基地とやらに行きますか。行くよトランクス君!悟天!」
「はい!!」
「はーい、ねえねえ、姉ちゃん。今日頑張るんだから何かご褒美頂戴?」
「ふふん、夕飯はパオズヤモリの丸焼き丼特盛でどう?」
「イヤッホー!!流石姉ちゃん!話が分かるーっ!!」
甘辛いタレと絡んだ好物のパオズヤモリの丸焼きを特盛の白米の上に乗せて食べる丼は悟天にとって最高の御馳走だった。
修行も嫌なわけではないのだが、悟空や悟林のハードな修行に付き合うのだから何らかのご褒美が欲しいと言うのが正直な気持ちだ。
悟天が悟空達の修行に付き合えば美味しい手料理やお菓子を振る舞ってくれる悟林。
悟天が面倒臭がりながらもある程度修行を継続出来ているのは悟林のこういう気配りによるところが大きい。
「ご褒美か…」
「トランクス君も今晩どう?御馳走するよ」
「有り難く頂きます」
すっかり胃袋を掌握されてしまったトランクスは悟林の誘いに即答する。
「(でも、悟林さんは悟飯さんには厳しいけど悟天には甘いよな)悟林さんって、悟天の扱いが本当に上手いですよね…あいつの伸ばし方を良く分かってると言うか…」
双子の弟の悟飯に対しては恐ろしく厳しいが、悟天に対してはそれなりに甘い。
勿論、やり過ぎれば鉄拳制裁は免れないが。
「ん?期待してるんだよ、君達は一番若い超サイヤ人だからね、潜在能力だって高いしフュージョンまで使える…正直もしものことがあったら世界の希望は君達になるよ。私もお父さんもベジータさんもいない時はね」
「…もう、ブウさんみたいな時にはならないよ。俺だって悟林さんを守れるくらいには強くなれたと思うし」
アップグレードしたドラゴンボールで変身を強化してもらったのだから少なくとも足手まといにはならないと思う。
「…ありがとう、嬉しいよ。それじゃあピッコロさんの合図が来たら全速力で飛ばすよ!!それまでは近くまで近付いて…合図が来るまでお弁当にしよっか?」
「「賛成!」」
腹が減っては戦は出来ぬと言うことでカプセルコーポレーションで作ってきた弁当に舌鼓を打つ3人。
「ところで姉ちゃん?ブルマさんは?ブルマさん、強引についてきそうだけど?」
「ブルマさんは気絶させた後、ロープでぐるぐる巻きにして寝室に放り込んでおいた」
「いや、そこまでしなくても…しないとついてきそうだよなぁ…母さん」
ブルマの無謀な好奇心を知る3人は気絶させて部屋に放り込まないと絶対についてくるだろうと確信していた。
一方、レッドリボン軍の基地付近で様子を見ていたセルは、ピッコロや悟林達の気を感知しており、ある場所から全く動かない宿敵の気に呆れていた。
「ピッコロ、孫悟林、この時代のトランクスに孫悟天まで動いていると言うのに動かないとは…」
一度危機が過ぎればすぐに気が抜ける病気でも患っている のかと思いたくなる。
セルが倒したいのは戦闘力だけがある腑抜けた悟飯ではない。
セルゲーム終盤で見せた業火のような怒りと絶対零度のような冷徹さと言う矛盾を孕んだ圧倒的な殺意を感じさせる威圧感を放っていた悟飯だ。
あの時の悟飯を知るからこそ、今の悟飯の腑抜けぶりが許せない。
「どれ、少しつついてみるか」
悟飯の方角に気をほんの少し流すセル。
一方、マントの重さに四苦八苦しながら仕事をしていた悟飯は突如感じた様々な気が混じったこの星にいるはずがない忌々しい敵の気を感知して家を飛び出した。
「なっ!?悟飯!どこに行く気だ!?悟飯ーーーっ!!」
飛び出す直前、何かにぶつかって呼ばれた気がするが今は全速力で感じた気の方角に向かい、そしてセルと対峙した。
「セル!!」
「ようやく来たか孫悟飯…随分と懐かしい格好だな」
ピッコロのマントを纏い、紫の道着を着ている悟飯を見てセルゲームの時を思い出すセル。
あの時とは比べ物にならない程に腑抜けているが。
「何故お前が地球にいるんだ!」
「ふん、私がどこにいようが私の勝手だろう。そもそも私は人造人間ではあるが、地球人なのだぞ?ここにいても不思議ではあるまい?」
セルは様々な人間の細胞を持っているが生まれた星は地球なので人造人間ではあるものの、地球人ではある。
「それにしても孫悟飯、違和感に気付かないか?貴様の知る気の不自然さに?」
「…?ピッコロさん…姉さんにトランクス、悟天…それに…パン?」
沢山の小さな気の近くにある大きな気。
しかし、あそこには街も何もない。
そんな場所に師や姉達が気を抑え、しかも娘まで集まっていることに嫌な予感を覚える。
「レッドリボン軍の復活らしい。新たな人造人間まで現れてな」
「人造人間…!またドクター・ゲロか!?」
ドクター・ゲロが造った人造人間がまだ存在していたのかと思い、セルに問い詰める。
「ドクター・ゲロの孫、ドクター・ヘドが造り上げた2体の人造人間だ。あのピッコロが人造人間の片割れに良いようにやられていたぞ。あの様子ではもう一度闘うつもりのようだ」
「ピッコロさんが…!?」
ピッコロがやられていたことに驚く悟飯。
「気付かなかったのか?師が闘っていたことも…貴様の娘がレッドリボン軍に拐われたことも」
「っ!?パンが!?」
「レッドリボン軍はどうやら世界征服のために障害となる孫悟空達の抹殺を開始したらしい。この星に孫悟空とベジータの気は感じられないことから破壊神の星か…手始めにピッコロがターゲットにされたようだ。そして次は貴様だ…恐らく貴様の娘は貴様を誘き寄せるために拐ったのだろうな。恐らく孫悟林達は救出か殲滅に向かったか…他の連中が動いているのに気付かないとはどこまでも愚かだな孫悟飯よ、いや…それとも娘の危機に呼ばれないほどに周囲から失望されたか?」
「ーーーっ!!」
怒りを露にしながら潜在能力を解放する悟飯。
その怒りの矛先は自分を嘲笑うセルか?
自分の娘も関わっているのに自分には何も言わずに向かった仲間達か?
それとも、娘まで巻き込まれても呑気に仕事に打ち込んでいた自分にか。
「ふん、少しはマシな顔になったな…それでもガキの頃の貴様には到底及ばないがな」
「黙れーーーっ!!」
悟飯の拳がセルの顔面に迫る。
その瞬間にセルの全身が赤く染まり、更に赤いオーラを身に纏う。
そして最小限の動きで、僅かに顔を逸らすことでかわし、逆に悟飯の腹に強烈な膝蹴りを浴びせた。
「ご…っ!!」
あまりの威力に悟飯は受け身を取ることさえ出来ずに無様に仰向けに倒れた。
「私が力の大会から何もしないでいたと思っているのか?貴様も多少は腕を上げていたようだが、より進化した私のパワーには遠く及ばん」
モロとの闘いに備えて修行していた悟飯はその後も姉の軽い扱きもあり、その戦闘力は維持していたが、セルの戦闘力はそれを遥かに上回っていた。
「…これではブルーセルを更に進化させた甲斐がない…私は貴様ら姉弟に復讐するために力を蓄え磨いてきた…だが、肝心の復讐対象の1人である貴様が腑抜けていては意味がない。さっさと消えるがいい。私の気が変わらんうちにな、貴様の娘は今では希少なサイヤ人だ。研究素材としては素晴らしい存在だろうな」
「…っ!パンッ!!」
セルの言葉にハッとなった悟飯は痛みに耐えながらも、複雑な心境でピッコロ達の気を感じる場所へと急いだ。
一方のピッコロは焦っていた。
パンと示し合わせて悟飯の覚醒を促そうとしたが、悟飯はいきなり家を飛び出してしまい、ここに来る気配がない。
ピッコロは悟飯とぶつかって気絶した男と共に基地に戻り、優れた視力でテラスにいるパンを見つめた。
落ち込んでいるパンの姿にピッコロは姿を現さない悟飯に苛立つ。
「(何をやっているんだあの馬鹿は…!)」
娘の危機にも駆けつけようとしない馬鹿弟子の地獄行きを決定しようとした元神。
仕方なくこれ以上パンをここに置いていけないこともあり、一瞬だけ気を高めた。
「合図だ!」
悟林が飛び立つとトランクスと悟天も同時に飛び立つと途中で悟飯と会った。
「あ、あれー?兄ちゃん?」
「ど、どうも、悟飯さん」
「おー、悟飯。随分と遅い出発だね」
「…姉さん、どうしてパンが拐われたことを僕に教えてくれなかったんです…?」
「…?(ピッコロさん、会えなかったのかな?)甘ったれるんじゃないよ。自分の娘でしょ、普段から腑抜けてるから気付くのが遅れるんだよ」
「………」
「どうせお前のことだからパンちゃんが誘拐されても私達が助けてくれるって言って動かないだろうなって思ったから言うだけ時間の無駄だと思って誰からも言われなかったんだよ。みんなからそう言う風に見られてるって自覚ないわけ?」
「あ、あの…そろそろ到着しますから喧嘩は止めましょうよ」
「そ、そうだよ!姉弟喧嘩しないでさあ!」
どことなく気まずい雰囲気の双子にトランクスと悟天が間に入って何とか沈める。
4人はレッドリボン軍基地に降り立った。
後書き
トランクスと悟天は本当に強化が来ないな…
だから代わりにドラゴンボールによる強化をしました。
超サイヤ人ドラゴンボール強化
正式名称はアップグレードしたドラゴンボールでパワーアップした超サイヤ人。
パワーアップの段階=潜在能力解放とおまけの変身強化
元ネタは言うまでもなくヒーローズの暗黒ドラゴンボール強化。
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