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とっても平和な世界に勇者召喚されまして

作者:檜垣 連夜
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1話

「快飛ー、早く行きなさいよー」
「わかってるって」

 朝6時42分、学校へ登校する時間。
 快飛はいつものように母に急かされ、玄関のドアを開ける。

「じゃ、いってきまーす」
「はい、いってらっしゃい」

 挨拶を交わし、走って最寄りの駅へと向かう。
 時間も十分に余裕はあるし、そこまで急ぐ必要はない。
 けれどなんとなく快飛は走る。
 なぜなら今日は文化祭。
 年に一度のイベントなのだから、楽しみにならないわけがない。

 周りを見れば快飛と同じ制服を着た学生も多く、皆ワクワクしているような雰囲気だ。
 それだけ皆楽しみにしているのだろう。

「楽しみだな、文化祭」

 皆の雰囲気に思わず声が出る。
 口元を緩めながら、快飛はポケットからスマホを取り出す。
 6時44分、これなら一本前の電車にも間に合う。
 快飛は既に駅についていた。

 少し息が切れ気味だったが、そんなことお構いなしに駅の階段を登る。
 そしてすぐさま改札口までたどり着き、ICカードを使い通り抜ける。
 階段を降りてホームにたどり着けば、すでに結構な人数が。
 電車の間隔も短いし、仕方ないのかもしれない。
 列に並び、電車を待つ。
 そのまま息を整えつつスマホを見ていると、右の方から電車の音が聞こえた。
 もう来たのか、と思いながらそちら側に目線を向けて、

 ──トン、と誰かに後ろから軽く押された気がした。

「は ?」

 思った以上にふらついて、バランスが取れずにホームから落っこちる。
 運良く前にいた人には体が当たらなかったため、彼らはバランスことはなかったが──快飛は落ちてしまった。

 はっ、と顔を上に向ければ、駅に入り始めている電車が。

「は、」

 引きつった声を上げつつ、来るであろう痛みに目を閉じて。

 1秒がたった。
 そんなに離れていたか、と疑問に思う。

 3秒がたった。
 走馬灯みたいなものか? ならせめて苦しまずに死なせてくれ、と願った。

 5秒が過ぎた。
 流石に遅すぎる、と違和感を持ち目を開けた。


 ──そこには、上から下まで区切りのない白で一杯な。
 そんな、不思議な空間だった。 
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