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とある英雄の逆行世界

作者:大城晃
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幼年期編
第1章
  5歳児!御坂美琴

 
前書き
 遅くなりましたが、最新話を投稿させていただきます。
 今回から本編“逆行世界編”になります。 

 
 美琴は何が起こったのか正確に把握することができていた。

 美琴自身のみ記憶を持ったままでの時間の逆行、ばかばかしいと思うかもしれない、だが事実だし何故か(十中八九世界との契約の影響だろうが)わかるのだからしょうがないのだ。


「でも、だからって…これは戻りすぎでしょうが!!」


 御坂美琴5歳、魂の叫びであった。




「み、美琴ちゃんどうしたの!?」


 そういいながら慌てて部屋に入ってきた人物がいる。

 美琴(14歳ver)をそのまま成長させればこうなるであろう容姿をした女性である。もちろん美琴にとって知り合いというか身内、母の御坂美鈴である。


「ううん、なんでもない。ごめんねママ」


「…なんでもないならいいんだけど、ホントのホントに大丈夫?」


「うん。ほんとのほんとにだいじょうぶ」


 美琴はしまったと思いつつも、平静を装い美鈴にそう返す。美鈴はそんな娘の様子に心配そうな顔をしながらもとりあえず納得してくれたようだ。


「そっか、ママお買い物に行ってくるけど。美琴ちゃんはどうする~?一緒にいく?それともお留守番がいいかな~?」


 今の美琴の状態は5歳の美琴と15歳の美琴の精神が合わさっており、少しだけ不安定だ。

 メインが15歳、サブが5歳といった形である。数日中には精神が完全に安定するだろう。

 美琴はこの状態をあまり喜ばしくは思っていないが、そのおかげで幼稚園児としてふるまえ(?)美鈴に違和感をそんなに与えないで済んでいるので複雑なところである。

 さて美鈴は買い物に行くらしいが幼稚園児である美琴は普段はここで8割は付いていき、1割は留守番といった具合だった。今回は残り1割の分でいこうと美琴は決める。


「…ねぇママそこの公園で遊んでてもいい?」



 結果から言うと問題なく公園に行くことができた、普段からたまに一人で行っていたのが功を奏したのであろう。
 
 美鈴は『そっか気を付けるのよ~』とそれだけ言って送り出してくれた。美琴が公園に行こうと思ったのは少しゆっくりと考える時間が欲しかったからだ。

 家の中でも考えることはできただろう。が、気分が滅入りそうだというので却下、ということで外の方がいくらかマシだろうと公園にしたというわけだ。

 5歳の美琴の知識によると、この時間の公園には基本的に人はおらず考え事をするのには最適だと考えたからだ。


「と言っても、考えることなんてほとんどないんだけどね」


 さっき試したのだが能力は問題なく使えた。軽く使っただけなので正確にはわからないのだが、15歳当時と遜色ない、というよりそれを上回るレベルでの能力行使が可能だと思われる、原因はやっぱり世界との契約だろう。

 あと逆行してきてからとても体が軽いのも気になるがこれは公園で確認しようと思う。
 
 私の目的であった上条当麻にもう一度会う。これを実現するには少なくとも学園都市に入るのが最低条件、要は最低でも約1年は待たないといけないだろうということで今は待つしかない、といった感じだろうか。


「あとは、能力に関してか…」


 正直に言って私は学園都市でLEVEL5として振舞うつもりはない。

 AIM拡散力場の完全制御、これを行える私ならば誰にも見破られることなく能力を落として見せることは可能だ、

 もちろんこれには理由がある、私がLEVEL5にならないことで、わたしの妹達(シスターズ)、あの子達をあんな悲劇に合わせなくてすむかもしれない。

 もちろんあの子達が生まれてきたのが悲劇だと言うつもりはない、死んでしまった1万人にの子達のことを忘れるつもりはない、あれはきっと私の罪でもあるのだ。

 だが防げる悲劇があるのなら私はそれを防ぎたいと思う、だからわたしはLEVEL5にはならないと決めている。


「公園に着く前に考えまとまっちゃったわね…」


 そこまで考えてところでちょうど公園についたのだが目的だった考え事も終わって、ぶっちゃけやることがない。


(すこし休んでいこうかしらね)


 美琴はそう考えると公園内のベンチへと向かって歩き出す。

 公園に来てベンチに真っ直ぐに向かう5歳児、だいぶ異様な光景なような気もするが美琴はそこまで気を回していなかった。もし誰かがそこにいれば違和感を覚えたかもしれないが幸いにもそこには美琴を見ているものはだれもいなかったのである。

 そしてその公園で美琴は予期せぬ再開をすることになる。
 



 俺が美琴と最初にあったのは7歳の時だった。俺はその時まだ学園都市の外の学校に通ってて“疫病神”なんて呼ばれていた。

 出会ったのは人気の全くない公園。それは彼女にとってはありふれたものだったのかもしれない。けれど俺にとっては特別。それが俺にとっての御坂美琴との出会いだった。



「ねぇ、アンタどうしたの?」


「……」


 このひおれはかあさんやとうさんにだまってがっこうをやすんでいえからすこしはなれたこうえんにいた。

 がっこうにはいきたくなかったから。


「ねぇ、アンタ?」


「……」


 だからきょうはずっと、このこうえんにいた。ちなみにごはんもたべてないからおなかがへった、ふこうだ。いやこれはじごーじとくというやつなのか、いみはしらんが。


「ねぇ、だからアンタ!」


「……」


 がっこうのみんなはおれのことをむしするしともだちのおとうさんおかあさんたちはおれのことをやくびょうがみってゆーし、てゆうかやくびょうがみってなんだろーか。 
 なにがいいたいかというとがっこうはたのしくない。
 
 あとおれがいるとふこうになるらしい。だれかにめいわくかけたりだれかをまきこむのはいやだから、さびしいけどひとりでいるのがいいきがする。 


「だぁぁ、あたしを無視すんな!!」


「うおっ!」


 なんかビリっとしたなとおもってかおをあげるとかわいいおんなのこがおれのまえにたっていた、なんかとてもおこっている、ふこうだ。

 けどなんでおれにはなしかけてきたんだろうおれにかかわるとふこうになるのに。


「やっと気づいたわね…え――?」


 おんなのこはおれのかおをみてなぜかおどろいたみたいだ、もしかしたらこのまえおれがでたてれびをこのこはみたのかもしれない。

 そうだったらいやだな、きっとがっこうのこたちみたいにおれのことをむしするんだろうし。


「なあ、おまえかえったほうがいいぞ」


「は?いきなりなにを」


「おれといるとふこうになるらしいから」


 だからおれはおんなのこをつきはなすことにした、おれにかかわるとふこうになるなんてたてまえで、くらすめいとみたいなたいどをとられたらおれがかなしいからだ。


「だから?」


 だけどおんなのこのはんのうはいままでのだれともちがうもので


「私がここに居たいからいるの、何か文句ある?」 


 少なくともそれは初めての反応で


「え、いやだからふこうになるんだぞ、いやだろ?」


「アンタといることで不幸になるなんてこと絶対ない。だって、少なくとも私、いますごく幸せだもん、アンタと一緒にいられるから」


 そのおんなのこのことばでじぶんでもだれかをしあわせにすることができるんだとおもった。


「それともわたしといるのは嫌…かな?」


「…――ない」


 おれはだれかがわらっていてくれればいいとおもってた、たとえじぶんがひとりでも、かなしくても、まわりのひとがわらってくれているならまんぞくできるとおもってた。いや、いまでもそうおもっているとおもう。

 でも――それでもだ、やっぱりひとりはさびしかったのだ。だれかにいっしょにいてほしかったのだ。じぶんもわらっていたかったのだ。かなしいきもちはいやなのだ。


「いやじゃない!!ひとりはいやだ!!
 
 だけどひとといっしょにいてかなしいのもいやなんだよ!!

 だってみんなおれのこときらいになるんだ!!
 
 おれといるとふこうになるからいっしょにいてくれないんだ!!だからだからだからだから!!」


 おんなのこがみてるのになみだがとまってくれなかった。ただかなしいとかさびしいとかいろいろごっちゃになって気がついたら泣いていた。

 そしたらきゅうにあったかくなったのだ。むねのおくとかからだとかが、あといいにおいもした。
 

「だったら私が一緒にいるから。

 当麻が笑えるように。

 当麻が幸せだって胸を張っていられるように。

 世界中の全部が敵でもわたしだけはアンタの味方で居続けるから。だからアンタは笑って、私の隣で笑ってよ」


 そういったあと、おんなのこはながいいすにおれといっしょにすわった。


「あ、そうだ。私は御坂美琴、アンタなまえは?」


 さっきなまえをよんでいたようなきがしたが、なのっていなかったのでおれはこたえをかえす。それをかえすとどうじに――


「かみじょうとうま…だ」


――おれのきおくはとだえている。



 このあと美琴に膝枕してもらってるのを美琴のお母さんの美鈴さんに見られたり、うちの母さんと意気投合した美鈴さんが不幸体質についてどうこう言ってくる周りの親たちを言葉のナイフでメッタ刺しにしたり、美琴のお父さんの旅掛さんに娘をよろしくと言われたりと色々あった。

 ちなみに美琴がなぜ俺の名前を知っていたのかについては結局聞いてない。

 いま思えば不思議だなと思うが、学校に行くと言って家を出てきたんだからきっと名札なんかをその時の俺はつけてたんだろう。

 その1年後に美琴と共に学園都市にやってきて、それから7年が経って――


「あ、おはよう当麻。勝手にお邪魔してるわよ?」


「ああ、おはよ美琴」


 ―――それでも俺たちはあの頃と変わらずにずっと一緒にいた。

 そしてこれからもずっと…許されるなら死ぬまでずっと一緒に居られることを願う。  
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