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第八話 絞首台のかささぎその一

                    第八話  絞首台のかささぎ
 雅は雪子にだ。校内の廊下を共に進みながらだ。こう言われていた。
「それで十階に入るにはね」
「塾の裏手からだったの」
「そうだったの。あっ、けれどね」
「けれど?」
「このことは内緒よ」
 雪子は悪戯っぽい笑みで自分の口に立てさせた右の人差し指を当てて話した。
「絶対にね」
「裏手のこと?」
「そう。理事長さん専用のエレベーターとかがあるから」
「だからなの」
「そこは本当は理事長さんしか使えないの」
 そうした場所だというのだ。そこはだ。
「私の叔父様のね」
「清原さんの」
「そうよ。叔父様が特別にね」
「私を十階に読んでくれたから」
「だから入られるからね」
「わかったわ。それじゃあ」
 誰にも言わないことをだ。雅は雪子に約束した。そのうえでだ。
 その雪子にだ。雅はこう尋ねたのだった。
「それで清原さん」
「ええ、何かしら」
「今はじめて私達話すけれど」
「そうよね。そういえばね」
「料理部だったわよね」
「そうよ。部活はね」
「料理部ってどういった場所なのかしら」
 少し興味がある感じでだ。雅は雪子に尋ねたのだ。その料理部のことをだ。
「私よく知らなくて」
「そうなの?」
「そうなの。あまり知らないの」
 そうだというのだ。その部活についてはだ。
「やっぱりお料理作るのよね」
「そうよ。そのお料理の勉強もするけれどね」
「文科系の部活なのね」
「体力も使うけれどね」
 だがそれでもだ。文科系であることは確かだというのだ。
 そしてその料理部についてだ。雪子は明るい笑顔で自分から話すのだった。
「敵度に運動ができてしかも美味しいものも食べられてね」
「いい部活なのね」
「そうよ。そうそう」
「そうそう?」
「料理部に本木さんっているけれど」
「あっ、料理部のホープらしいわね」
「そうよ。うちの部で一番できる娘よ」
 雅に微笑みを向けてだ。雪子はその春香のことを話すのだった。
「お料理が凄く美味しいのよ」
「そうなの」
「そう。それにね」
 その春香のことをだ。雪子は何気なく、だがその目の奥に底知れない悪意を宿らせてだ。そのうえで雅に対してあくまで何気なくを装って話した。
「毎日お弁当作ってるのよ」
「毎日なの」
「そう。それで相手に食べてもらってるのよ」
「っていうと彼氏がいるの?」
「ううん、幼馴染み」
 そうした相手だと。善人の仮面を被って言ったのだった。
「その相手にね。毎日ね」
「食べてもらってるの」
「そうよ。毎朝いつも作っていってね」
「何かそれって」
「それって?」
「カップルみたいね」
 そうしたことにいささか疎い為にだ。雅はだ。
 少し戸惑う感じになってだ。それで雪子にこう言ったのだった。
「それじゃあ」
「本人達は否定してるけれどね」
「そうなの。じゃあ若しかして」
 疎くてもそれでもだ。雅も完全に駄目という訳でもない。 
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