イベリス
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第六十五話 静かにはじまってその十三
「打ってもらうわ」
「全部モコの為ね」
「そうよ、注射っていうと狂犬病ね」
「毎年二回受けてるわね」
「それもよ」
狂犬病の予防接種もというのだ。
「絶対にね」
「モコが怖がっても」
「連れて行くのよ」
「絶対に」
「そうよ、そうしてね」
それでというのだ。
「狂犬病にならない様にするのよ」
「狂犬病になったら大変よね」
「モコも周りもね」
「感染したら確実に死ぬからね」
「ほぼね」
助かった事例は片手で数える程しかないという、致死率は百パーセントと言っても過言ではないのだ。
「そうした病気だから」
「ならない様にするのね」
「狂犬病の予防接種は義務よ」
絶対にしないといけないものだというのだ。
「犬が家族だとね」
「しない選択肢はないわね」
「そうよ、狂犬病の怖さ考えたら」
それならというのだ。
「もうね」
「確実になのね」
「しないと駄目よ」
「それは私もわかってるつもりよ」
「忘れないでね、狂犬病は怖いから」
致死率がほぼ百というのは伊達ではない。
「だからね」
「忘れたら駄目ね」
「予防接種はね」
「犬が家族だと」
「そうよ、あと猫も感染するから」
母はこのことも話した。
「気をつけてね」
「そうよね」
「知ってるわよね」
「ええ、猫とかにも感染して」
「蝙蝠にもよ」
「それブラジルから来た娘が言ってたわ」
学校で聞いたことである、クラスメイトでも同じ部活でもないがふとした縁で知り合って話をした時に聞いたのだ。
「あっちにチスイコウモリっていて」
「本当に血を吸うけれどね」
「狂犬病持ってて」
「それを感染させてくるのよ」
「だから怖いのよね」
「牛の血を吸ってね」
そうしてだ。
「人の血もよ」
「吸うのよね」
「別に血を吸われても何ともないけれど」
それでもなのだ。
「狂犬病を持ってる生きものの血を吸ってね」
「狂犬病に感染して」
「それでまた吸ってくるから」
だからだというのだ。
「物凄く怖いのよ」
「そうらしいわね」
「あそこは色々な生きものがいるけれどね」
ブラジルにはアマゾンがある、その為多種多様な生物が棲息しているのだ。
「そうした蝙蝠もいるから」
「物凄く怖いのよね」
「だからね」
「犬だけじゃなくて」
「他の生きものについてもよ」
「狂犬病は怖いのね」
「そのことは覚えておいてね」
娘の目をじっと見て言った。
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