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ウルトラマンカイナ

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外星編 ウルトラホピスファイト part9

 
前書き
 

 

 ――そして、今。暴走を続ける哀れな「穀潰しの騎士」は、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊の急降下爆撃を受け、完全なる「死」に至ろうとしていた。

『ジュウァアッ!』
『ゥアァアッ!』

 だが、それでもキングジョーは屈していない。無防備な内部機構にミサイルを撃ち込まれ、何人ものウルトラ戦士に手足や胴体を掴まれている状態だというのに――この宇宙ロボットはそれでも、力任せにシュラ達を払い退けてしまったのである。

『ヘァッ……! ァアッ……!』

 依代としている士道達を蘇生させるため、すでにかなりのエネルギーを消耗していたシュラ達は――胸のカラータイマーを赤く点滅させていた。これ以上戦いが長引けば、彼らは2度と立ち上がれなくなり、依代もろとも斃れてしまうことになる。

 キングジョーだけではない。ウルトラ戦士達もまた、戦う前からすでに満身創痍なのだ。
 士道達に対して「心配することはない」と気丈に振る舞っていた彼らは、とうとうその消耗を隠し切れなくなっていたのである。

「うぉおッ……!? な、なんて底力だよアイツ……! あの状態でもまだ戦えるっていうのか!?」
「ですが、かなり限界に近いはず……! もう一押しです、隊長ッ!」

 吹っ飛ばされたウルトラ戦士達は轟音と共に転倒し、激しく砂埃を撒き散らしている。弘原海と琴乃はその砂塵と猛風に顔を覆い、キングジョーの並外れたタフネスとパワーに瞠目していた。
 だが、諦めることなくBURKガンを撃ち続けている琴乃の言う通り、その戦闘機能は停止寸前となっている。

 キングジョーの全身から立ち昇る黒煙はやがて猛炎となり、そのボディを飲み込み始めていた。BURKセイバー隊の決死の攻撃が、ついにこの機体をここまで追い詰めたのである。

『今だ……! 行くぞ、皆ッ!』
『おうッ!』

 それは当然、ウルトラ戦士達にも分かり切っていることだった。カラータイマーの点滅はさらに加速し、危険信号を発している。

 もはや、隙を窺っている時間はない。
 彼らはふらつきながらも互いに頷き合うと、それぞれの「必殺技」を放つべく一旦キングジョーから距離を取り――エネルギーを全身に集中させていく。

『シェアァアッ!』
『ダァアァアッ!』

 胸の前で腕をクロスさせて破壊光線を放つ、ウルトラマンヴェルゼの「クロスプリット光線」。
 居合のように構えた手刀を逆袈裟の要領で振り上げ、巨大な八つ裂き光輪を放つ、ウルトラマンアトラスの「アトラススラッシャー」。

 その烈光と光刃がキングジョーのボディに炸裂し、天を衝くほどの火花を放つ。さらにウルトラマンリードとウルトラマンポーラの2人も、「必殺技」の発動体勢に入っていた。

『ヴゥァアァッ!』
『シュワァアァッ!』

 スペシウム光線の構えから冷凍光線を放つ、ウルトラマンポーラの「ウルトラエイジ」。
 その冷気に足を凍らされ、身動きが取れなくなったキングジョー目掛けて、ウルトラマンリードが放った数十枚の光輪が降り注いで行く。

 「一気呵成」と名付けられたその技を浴びた鋼鉄のボディは、徐々に外装もろとも切り刻まれようとしていた。
 その攻勢に乗り、ウルトラマンヘリオスとウルトラマンアルミュールも、必殺光線の構えに入って行く。

『テェエェーッ!』
『ディヤァアァーッ!』

 両腕を横に張り出し、両手を頭上と腰部の辺りに来るように回転させた後――腕を十字に交差させて放つ、ウルトラマンヘリオスの「ソルディウム光線」。
 両手首を交差させた後、円を描くようにそれぞれの腕を大きく回し、腕を十字に組んで撃ち放つ、ウルトラマンアルミュールの「アルミュール・スペシウム光線」。

 二つの閃光がやがて一つの輝きとなり、キングジョーのボディに炸裂して行く。さらに外装が剥げ落ち、キングジョーはより無防備な姿を曝け出していた。

『ダアァアッ!』
『ヤァーッ!』

 その隙を見逃すほど、ギガロとブルーマンは甘くはない。
 カラータイマーに太陽光線と自身の全エネルギーを集束させたギガロは、その中心点から必殺の「プラズマヴァイス光線」を照射していた。灼熱の閃光を浴びたキングジョーの全身が、無惨な姿に爛れて行く。

 ブルーマンも念力により精製されたボウガン「ブルーアロー」の引き金を引き、その光の矢でキングジョーのボディを射抜いている。
 ブルーハープンの切っ先に続き、ブルーアローの矢にまで貫かれたキングジョーは、大きくよろめいていた。

『ディヤァアァァッ!』

 そこへ畳み掛けるように、ウルトラマンミラリが額のクリスタルから、光の鞭型光線「ギャザリングレイ」を放射して行く。しなる閃光の鞭がキングジョーの頭部を打ち据え、その体勢を崩していた。

『ヘェアァアアッ!』

 そこに好機を見出したウルトラマンブフは、残されたエネルギーを全身の強化に注ぎ込み、低姿勢の構えで突撃して行く。相手を掴んで地面に叩き付ける「マクゼリオンアタック」が炸裂したのは、その直後だった。

『ダァアッ!』
『ジュアッ!』

 そして、あまりのダメージに起き上がれずにいるキングジョーに「とどめ」を刺すべく。
 スペシウム光線を刀剣状に形成したウルトラマンシュラが、勢いよく地を蹴って跳び上がった瞬間。ウルトラマンメディスは右腕を正面に突き出し、大きく回して左腕と合流させ、十字を組んでいた。

『ジュワァアァアッ!』

 ウルトラマンメディスの必殺光線である、「シフリウム光線」。その閃光が焼け爛れたキングジョーに浴びせられ、黒ずんだボディが崩壊を始めて行く。

『――ダアァアァアッ!』

 だが、最後の最後まで攻撃の手は緩めない。スペシウム光線の刀剣を握るウルトラマンシュラは、ジャンプした体勢から刃を振り下ろすように、超高速の6連斬撃――「スペシウムブレード・へクス」を放つ。

『ヘアァッ!』

 複数の腕が生えているかのような残像を生み出す、神の如き疾さ。その速度でバラバラに切り裂かれたキングジョーは、どのような暗示も逃避も成り立たない、「完全敗北」を喫したのだった。

『ダァァアッ!』

 そして斬撃を終えて着地したシュラは、切り刻まれたキングジョーの部品全てに、追い討ちのスペシウム光線を撃ち放つ。
 十字に組んだ腕から照射された光波熱線が、宇宙ロボットを形成していた物体全てに命中していた。

 12人のウルトラ戦士が残されたエネルギーを込めて放った、必殺の一撃。その威力は傷付いたキングジョーの外装も、露出した内部機構も全て吹き飛ばすほどの域に達していたのである。

 ウルトラ戦士達の必殺技を立て続けに受けたキングジョーの内側から、閃光が漏れ出して行く。そして爆ぜる直前――この星の人々に仕えていた機械仕掛けの騎士は。

 ――お、おれ、まもる。このほし、まもる。みんなを、まもる。ホピスのえがお、きぼう、へいわ。おれが、まもるんだ――

 ペダン星人にしか通じない電子音声で、譫言のようにそう呟いていた。
 言葉は通じずとも、敵意が感じられない音声の「声色」からその「思念」を汲み取ったシュラ達は――

『……もう、眠れ。もう……いいんだ』

 ――爆ぜて行くキングジョーの無念に、鎮魂の祈りを捧げるように。その全てを吹き飛ばして行く爆炎を、ただ静かに見届けるのだった。
 
 

 
後書き
 
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