抱きしめていて
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第一章
抱きしめていて
寂しい、今はそう思って仕方がなかった。
オフィスではずっと自分の机に座って仕事をしていて食べる時も一人だ。皆急がして私も自分の席で出勤前に立ち寄ったコンビニで買ったお弁当を食べている。
食べ終わったらまた食事だ、最近忙しいのでそうしている、しかも会社は社長がホワイトを心掛けているので定時に帰る様に言われる。
けれど家に帰っても一人だ、同棲している彼は出張中で友達もこんな時に限って皆忙しい。それで遠く離れた両親にだ。
スマートフォンで話した、ラインでは直接話している感じがしないので少しでの寂しさを紛らわせたくてそうした。
母が出たので母に元気かと尋ねた、するとこう返してきた。
「私は元気よ、お父さんもね」
「ならいいわ」
「ええ、ただあんた暫く振りにかけてきたわね」
「今寂しくてね」
私は母に素直に答えた。
「だからよ」
「かけてきたの」
「今忙しくて誰ともお話する余裕ないし」
それにだ。
「友達も皆忙しいしね」
「あの人がいるでしょ」
交際相手の話もしてきた、まだ結婚はしていないが両親にも紹介を済ませている。私もあちらの両親にそうしてもらっている。
「だったら」
「出張で今いないのよ」
私はこのことも素直に話した。
「それでよ」
「あんた今一人なのね」
「そう、だから寂しくてね」
母にそれでと答えた。
「電話したの」
「そうなのね。お母さんはあんたの声聞けて何よりよ」
「ええ。それでお兄ちゃん元気?」
「市役所で元気に働いてるわ」
地元のそこでというのだ。
「そうしてるわ」
「そうなのね」
「ええ、それであんた寂しいからってね」
「お酒は飲み過ぎるなっていうのね」
「そうした時飲むでしょ」
「憂さ晴らしにね」
「だからよ、そうした時こそね」
むしろというのだ。
「お酒は控えるのよ、寂しさを紛らわせるよりも」
「楽しい時よね」
「お酒を飲むことよ、いいわね」
「わかってるわよ、ゲームでもするわ」
「それで寂しさ紛らわせなさい」
「そうするわ」
母にこう返してだった。
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