フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです
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第10章 アルバレス帝国編
第45話 集結
首都クロッカスの闘技場を粉々に破壊してしまったナツは、ハッピーと共に王国兵士に連れられ、玉座の間に通された。玉座の間にはヒスイ姫と国王、アルカディオスとダートンが待ち構えていた。
「がっははは!懐かしーな!元気だったか?」
「全く…懐かしいだと?…」
ナツを連れてきた衛兵が、呆れた様子で口を開く。それと同時に、ヒスイがくすっと笑いを浮かべる。
「栄えある初回の大魔闘演舞を台無しにして…闘技場を半壊させておいて…」
「わりいわりい…あんなになるとは思ってなかったからなー」
「黙らっしゃい!」
衛兵の言葉に、ケラケラと笑いかけるナツに、ダートンが低く唸るように声を発する。
「んだよ…」
ナツが不貞腐れたように口を開くと、ヒスイが微笑を浮かべながら口を開いた。
「ナツさんやフェアリーテイルの皆さまにはお世話になって…お元気そうで何よりです!」
「そうだっけか?」
「ほら、ドラゴンレイドのことだよ…」
ヒスイの言葉にいまいちピンと来ていないナツであったが、ハッピーが助け舟を出す。
「おお、思い出したぞー!…けど、それを言ったら多くはアレンだろ?」
「…そう、ですね…」
ナツの言葉に、ヒスイはどこか辛そうな表情を浮かべる。
「ん?なんだ、そんな顔して…アレンがどうかしたか?」
「お、お主…まさか知らんのか…?」
ナツのどこか呆けた様子にダートンが驚いた様子を見せる。
「何のことだよ?俺はアレンがフェアリーテイルを抜けた後のことはなんも知らねーぞ?」
「…あれだけのことがありながら…全く、相変わらずだな…」
この1年で、起こった数々の事件を知らない様子に、アルカディオスは更に呆れた様子を見せた。
そして、ヒスイと国王が一つずつ話をした。
・評議員がバルファルクによって壊滅したこと。
・そのバルファルクとアレンが戦ったこと。
・加えてアルバトリオンと交戦し、アクノロギアの乱入により更に激化したこと。
その話を聞き、ナツとハッピーが目を見開いて狼狽する。
「そっか…やっぱ、戦ったのか…黒竜と…。っ!で、アレンは今どこだ!」
先の話から、尋常ではない戦いであったことから、ナツが声を張り上げるようにして言葉を発する。
「…残念ながら、アルバトリオンとアクノロギアと戦った後、詳細が分かってはおりません…」
ヒスイの言葉に、ナツは怪訝な様子を見せたが、すぐに口を開く。
「アレンのことだ…絶対無事だ!…いつかひょっこり顔を出すはずだ…」
「ああ、わしらもそうだと確信している…。だが…」
ナツの言葉に国王が肯定の意を表するが、何かを含んだように言葉を止める。
「なんだ?…なんかあったのか?」
ナツがそんな国王の様子に、怪訝な様子を見せると、アルカディオスがゆっくりと一つ息を吐き、意を決したように口を開く。
「…先のアクノロギアとアルバトリオンの戦いで…アレン殿は…左腕を失っておられる…」
アルカディオスの言葉に、ナツとハッピーは口をあんぐりと開けて目を見開く。
「う、嘘だ!アレンが…左腕を…」
「信じられないのも無理はありません…私も実際に評議院の監視用ラクリマ映像を見るまでは…信じられませんでした…。しかし、確かな情報です…。評議院と王国上層部しか知りえないことですが…」
ナツはヒスイの言葉を聞きながら、暫く狼狽していたが、あることを想いだす。
「そうだっ!あれなら…いにしえの秘薬なら…アレンの腕も目も治せるかもしれねぇ!!」
ナツの言葉に、今度はヒスイ達が驚きの表情を見せる。
「いにしえの…秘薬…ですか?」
「ああ、どんな傷も死んでさえいなけらば忽ち治せる薬だ…昔、アレンがエルザの潰された目を治したときに使った薬なんだが、その時のが最後だったみたいで、アレンの目を治せずにいたんだが、スタークっていうやつからもらってたんだ!それをアレンに渡そうとした矢先、フェアリーテイルを抜けちまったもんだから渡せずじまいでよ…」
ヒスイの驚きの声に対し、ナツはなんとか頭と言葉をひねって説明をして見せた。
「そんな神の力のような薬が…」
「そ、それは今どこに…」
アルカディオスとダートンも酷く狼狽した様子を見せる。
「…あの時のままなら、エルザが持ってるはずだ…。エルザのことだ、きっと、いや絶対今も大切に保管しているはずだ…」
ナツは確信したかのように拳を握りしめ、ヒスイ達に背中を向ける。
「俺は一旦マグノリアに帰る。そして、アレンとエルザを探す!」
「であれば、王国もアレンさんとエルザさんの捜索に力を貸しましょう。いえ、手助けさせて下さい!」
ナツとヒスイは、希望を見出したかのように言葉を発した。それを聞いたハッピーが、閃いたように口を開いた。
「なら、他のフェアリーテイルのメンバーも探してよ!…フェアリーテイルを復活させるから!!」
「おお、そりゃナイスアイディアだ!ハッピー!!」
ナツとハッピーがハイタッチする様子を見て、ヒスイは複雑な気持ちを見せる。
「それは、その…ナツさん達の一存で決めてよろしいのですか?」
「何言ってんだ…。俺たちのギルドだ!!俺たち皆が復活を望んでる!!…アレンがフェアリーテイル復活させようとしてると言ってくれれば更に皆の集まりはいいだろう!!」
「ナツ!!それ、ナイスアイディアだよ!!!」
ヒスイの心配事などいざ知らず、ナツとハッピーは大胆にもアレンの名を使ってフェアリーテイルを復活させようとしていた。
その言葉を聞き、ヒスイは一つの言葉を思い出した。それは、1年前、アレンがヒスイに対して発した言葉あった。その時の真剣な様子のアレンを思い出し、ヒスイは少し顔を赤らめて見せる。そして、何かを決意した様子で口を開いた。
「承知いたしました。アレン様の名の元、かつてのフェアリーテイルのメンバーにお伝えしましょう」
「なっ…ヒスイ王女!アレン殿の許可もなく…」
ヒスイの言葉に、アルカディオスが驚いた様子で口を開いた。
「…アレン様は言っておりました。『フェアリーテイルは必ずや復活を果たします』と…。アレン様はフェアリーテイルを再び結成されるおつもりだった…。それが今であると、私は確信しております」
アレンがそのようなことをヒスイに行っていたと知り、ナツとハッピーは一瞬目を見開くが、すぐに嬉しさから笑みを零す。
「やっぱ、アレンはアレンだな!!」「あいっ!」
ナツとハッピーは、そう言い残し、玉座の間を後にした。
ヒスイを始めとした王国関係者は、アレンのフェアリーテイル脱退とフェアリーテイル解散の報を受けた1年前、アレン含め、すべてのフェアリーテイルの動向を追っていた。殆んど全てのギルドメンバーの現在状況を把握していた王国は、すぐさま使者を派遣し、先のナツとの会合で決定した内容の旨を伝えるに至る。
アルバレスに交渉に行っているマカロフと、ファースト・ディマイス・ウォー以前から旅に出ているギルダーツ、そして先の黒竜との戦いから消息が分かっていないアレンの3名を除き、先の話の伝達をするに至る。
ナツとハッピーは、玉座の間を出た後、ルーシィの先の経緯を話すと、『アレンの名の元にフェアリーテイルを復活させる』という話に少し驚いた様子を見せていたが、二つ返事でそれに乗っかることとなり、急ぎ荷物をまとめてマグノリアの街へと向かった。
アレンの名の元、フェアリーテイル復活の報と、マグノリアのフェアリーテイルギルドに集まってほしいという王国の使者の話に、1年前と変わらずマグノリアの街に滞在していたヒスイとミノトは、忙しない様子で封鎖されたギルドを解放し、アレンを、そして皆を見返る準備を進めていた。
そんな折、蛇姫の鱗に身を寄せていたウェンディとシャルルが一番乗りで姿を現す。
「あら、私たちが一番乗り?」
「そうみたいだね、シャルル!!」
少し誇らしげなシャルルに、ウェンディが嬉しそうに答える。
「お待ちしておりました。ウェンディさん、シャルルさん」
「あらあら、少し大きくなられたのではないですか?ウェンディさん?」
ミノトとヒノエが、そんな2人の姿を見て、それぞれに口を開く。
「えーと…そんなに変わりません…身長も、お胸も…」
「姉さま、どうやら失言だったようです」
ウェンディの言葉に、ミノトが少しの戸惑いを見せるが、それをフォローする間もなく、新たな来訪者が現れる。
「なんだよ…。呼び出しといて、当の本人がまだきてねーのかよ…」
「私達の方が早かったようですね、グレイ様」
「しかし、酷い有様だな…埃まみれもいいところだ…」
グレイ、ジュビア、エルザが口々に言葉を発しながらギルド内に入ってくる。
グレイとジュビア、エルザは、黒魔術教団の浄化作戦を阻止してすぐ、このマグノリアの地へと到着を果たした。
「エルザさん!お久しぶりです!!」
「おお、ウェンディ…少し大きくなったか?」
「いえ、あんまり…」
先ほどのヒノエと同じ質問に、ウェンディはどこか悲しそうな表情を見せる。
「だが、アレンが来たらまずは一発殴らねば気がすまん!!」
「ああ、全くだな…。勝手に抜けておいて、今度は勝手に復活たー、都合がよすぎるぜ!」
エルザとグレイがむむっと怒りを表情に表すと、ヒノエがくすっと笑いを漏らす。
「その割には、足早にここへ来たみたいですが…」
ヒノエの言葉に少し顔を赤らめた。
ナツとハッピー、ルーシィがマグノリアに到着してすぐのこと。ほぼ同時にマグノリアに到着を果たしたカナと合流し、フェアリーテイルのギルドへと向かった。
ルーシィは、一度離れ離れになり、皆が己の道を歩んでいるなか、もう一度集まることができるのかと不安な気持ちを持っていたが、ギルドの扉をあけることで、その不安は一気に吹き飛ぶことになる。
ルーシィの目に、多くの、かつての、いや今も仲間である存在が目に入る。
エルザ、グレイ、ジュビア、カグラ、ウル、ウルティア、リオン、ジェラール、ソラノ、ユキノ、ウェンディ、シャルル、レヴィ、ジェット、ドロイ、ウォーレン、マックス、ナブ、リーダス、ビジター、マカオ、ワカバ、ロメオ、アルザック、ビスカ、ラキ、キナナ、レヴィ、ガジル、リリー、そしてミラ、エルフマン、リサーナは、皆一カ所に集まり、談笑していた。
そんな姿を目にして、ルーシィはあふれ出る涙を止めることができなかった。
「ふっ…遅かったではないか…ルーシィ…」
エルザはそんなルーシィに歩みより、ルーシィの頭を優しく撫でる。
「…よかったっ!私…もうみんなに会えないんじゃないかって…」
ルーシィは涙を拭うようにして言葉を発した。周りの皆も、そんなルーシィを慰めるようにして暫し笑いを生んでいた。ルーシィはそんな雰囲気に更に涙を流し、感動していた。
…だが、その後ウルティアとグレイが発した言葉によって、一気に血の気が引く思いをすることになる。
「まあ、まだ来てないメンツもいるけど…とりあえずはアレンを待つって形ね…」
「しっかし、アレンが集まりに遅いってのは珍しいな?」
2人の言葉に、ナツとハッピー、ルーシィが「げっ!!」と言葉を漏らす。
「ん?どうしたの?ルーシィ?」
「あー…えーと…その…」
ルーシィは一気に冷静さを取り戻し、言いにくそうに事の経緯を話す。…そう、この集結の声掛けは、アレンが一切関係していないことに…。ナツとヒスイ王女が結託する形でアレンの名を使って皆を集め、フェアリーテイルを復活させたことを…。
その話を聞いて、皆が目を見開いて黙りこくったことは言うまでもない…。
皆、アレンが無事だったことを、そして久しぶりに会えることを楽しみにしていたのだ。そして、その時言えなかった文句も…。
故に、ナツやハッピー、ルーシィにこれでもかと罵詈雑言を浴びせたのは言うまでもないだろう。もちろんそれはヒスイ王女にも同じ感情を抱いており、もしこの場にヒスイ王女がいれば、立場や地位などかなぐり捨てて怒りを露にしていたことであろう。
フェアリーテイル再結成に際して、アレンの名の元に行われるという者が嘘であったことを知ったメンバーは、憤りをあらわにしていたが、例えアレンが結成を宣言しなくとも、皆再度フェアリーテイルとして集まりたかったという気持ちは同じであったため、そのままの流れでギルドを再結成するという流れになった。
ギルドを再び復活させるため、1年間一切手入れがされてこなかったギルドの修復と掃除に、メンバーは明け暮れていた。
「疲れたわ…」
「…まだ始めたばかりだゾ」
ルーシィが吐いた弱音に、ソラノが呆れた様子で答える。
「皆で手分けすれば、一日で終わる」
エルザは気合の入った様子で口を開いた。
「アレンとマスターが帰ってきたとき、気持ちよく迎えたいからね!」
ミラがエルザの言葉を肯定しながら口を開いた。その言葉に、ラキが不安な様子を浮かべていた。
「マスターもアレンさんも、帰ってくるのかな…」
「そのうち帰ってくるさ…」
「帰ってこなきゃ、探しに行けばいいのよ」
ラキの言葉に、アルザックとビスカが安心させようと声を掛ける。そんな風にして各々が会話をしていると、レヴィが小難しそうな表情を浮かべていた。
「どうしたんですか?」
ウェンディが覗き込むようにして声を掛ける。
「んー、ちょっと書類の整理をね…。ギルド復活って言っても、実は言葉だけじゃどうにもならないのよ。評議院に認可されなきゃ、闇ギルドと同じだからね」
「まあ、その点に関しては、俺たちが1年間根回ししておいたからな…」
「気が利くじゃない!」
レヴィの言葉に、リリーとシャルルがそれぞれに口を開く。レヴィ、ガジル、そしてリリーは、フェアリーテイル解散後、新生評議院に加入していたのだ。…そう、あのガジルが、である。
「だから、表向きにもフェアリーテイルは完全に復活と言える」
「ありがとうございます!レヴィさん!!」
レヴィの言葉に、ウェンディは涙を流してお礼を述べた。
「あとは…この欄を埋めるだけなんだけど…」
「うーん…迷うわね…」
「迷う?」
レヴィの迷う様子に、ミラが微笑を浮かべながら答える。そして、それに疑問をぶつけるようにしてシャルルが口を開いた。
「そう、決めなきゃいけないからね…。6代目ギルドマスターを」
「ろ、6代目ギルドマスター…」
ミラの言葉に、ウェンディが感慨深いと言った様子で声を上げる。
「ギルダーツでいいじゃねえか…」
「あんなどこをほっつき歩いてるかわからねえ奴をマスターにできるかっ!」
ワカバの言葉に、カナが激高して答える。
「ほう?それなら同じようにどこをほっつき歩いてるかわからねえアレンもマスターにはできねえのか?」
「うっ…そ、それは…その…」
痛いところを突かれたカナが、ぐっと息を詰まらせるようにして口を閉ざす。
「ふふっ!でも、やっぱりこれしかないかなっ!」
レヴィはそんな会話を横目に、埋められなかった空欄に一人の名前を書き込む。
「6代目ギルドマスター、エルザ・スカーレット!!」
その言葉に、ギルドメンバー全員が歓声を上げる。だが、当の本人であるエルザは酷く驚いている様子であった。
「ちょ、ちょっとまて…私がマスターだと!?アレンがマスターでいいではないか!」
「うーん、私もそれは思ったんだけど、今ここにいない、且つ了承を得られないんじゃさすがに無理かなーって…」
レヴィがそういうのと同時に、一人の男がエルザに近づいてくる。
「アレンさんが帰ってこない以上、適任者はお前しかいないだろ」
「お、おまえは!?」
その男を見て、ナツが目を見開く。
「えーっと、え?」
「誰でしょうか?」
その男を見て、ルーシィとウェンディが悩む様子を見せる。
「…この時を待っていた…皆が再び集う、この時を…5代目ギルドマスターマカロフを助け、アレンを探し出せるのは…お前たちしかいない」
その男は、強い口調でそう呟き、ギルドメンバー全員を見つめた。
先の男、メストは、自身と皆にかけていた記憶操作の魔法を解き、自身がフェアリーテイルの一員であったことを告げる。
6代目ギルドマスターとなったエルザは、先の男、メストに連れられてフェアリーテイルの地下へと続く隠し通路へと案内された。ギルドの下にこんな空間があったことを知らなかったエルザは、些少の驚きを見せながら階段を降りる。エルザは自身のみしか入れないと言われたこの空間について疑問を投げかけると、この場所が歴代のギルドマスターのみが入ることを許された空間だということを聞かされる。加えて、例外的にアレンとメストのみがこの空間に入ることを許され、この先にあるギルド最高機密の存在を知る数少ないものだと、エルザは知ることになった。
メストは階段を降りきった後、一つの大きな扉を開ける。その先には、ギルド最高機密である『ルーメンイストワール』もとい、『妖精の心臓』が眠っていた。その正体が初代メイビスの身体が封印されたクリスタルであることを知ったエルザは酷く狼狽して見せる。そんな風にして驚いていたが、先ほど降りてきた階段から物音か聞こえる。それは、2人の後をつけてきたナツ、グレイ、ルーシィ、ウェンディ、ハッピー、シャルルであった。そんな様子を見たメストは呆れた表情を浮かべたが、ここまでくれば隠し通すことは無理だと判断し、諦めた。そして、ナツの「じっちゃんとアレンはどこにいるんだ!」という問いに対し、メストは魔法を発動させて、自身の記憶を見せる。
その記憶は、マスターに評議院の潜入を任された件、そしてフェアリーテイル解散の真相であった。
評議院潜入に関しては、記憶操作もあり、そのせいでまさかのフェアリーテイルに探りを入れてしまうこことなった経緯を、ナツやグレイに「バカか…」と呆れられたのは無理もない。しかし、それ以上に驚きなのは、フェアリーテイルが解散する前日に行われたマスターとアレン、そしてメストの会合の内容であった。その記憶を見せられたエルザ達は、酷く驚いた様子を見せる。
「…つまり、アレンだけでなく、マスターも私たちのために…」
「解散は、私たちを守るための者だったんだ…」
「ちっ、アレンといいじいさんといい、なんでこう一人で背負いこもうとするんだ…」
エルザ、ルーシィ、グレイが悔しそうに言葉を発する。
「見ただろう…そして聞いただろう…マスターもアレンさんも、俺たちを…なんとしてでも守りたかったんだ…アルバレス帝国から、三天黒龍から…」
メストの言葉に、エルザ達は黙りこくる。その話から、マカロフがアルバレス帝国に行ったきり戻ってきていないことを知ったナツ達は酷く困惑を見せたが、すぐに救出に行こうと話が進む。だが、その話にエルザが待ったをかける。
「マスター程の人が、勝てないと見込んだ相手だ…無策で突入するわけにはいかん」
そのエルザの言葉に、ナツやグレイが反発して見せるが、それでもエルザの考えに変わりはなかった。それは、6代目ギルドマスターとしての気持ちであった。だが、同時に一人のギルドメンバーとしての考えは違うことを示した。『マスターは必ず救出しなければならない』。その思いが、この場にいるメンバーのみでの行動を決定づけた。
そして、これは戦いではなく、潜入であり救出作戦。今までの戦闘行為ではなく、あくまで無駄な戦いは起こさずにという者であった。
「いいか、ナツ?」
「わ、わかってるよ…」
エルザに念を押されたことで、ナツは嫌な汗を垂らしながらなんとか従う意思を見せた。そして、そんなエルザの視線に耐えかねたこともあり、何かを思い出したようにメストに言葉をぶつけた。
「って、メスト。お前評議院を立て直したんだろ?なら、アレンの状況についても知ってんの?俺は姫さんから聞いたんだが…本当なのか?」
ナツの言葉に、ルーシィ目を細めながら反応して見せる。
「…バルファルクやアクノロギア、アルバトリオンと戦ったって話?それなら皆知って…」
「違えぇ!!」
そんなルーシィの言葉に、ナツは激高して見せる。そんなナツの様子に、先ほどまでナツを睨みつけていたエルザも大きく目を見開く。
ナツが言わんとしていることが、質問が何を意味するのか理解したメストは苦悶の表情を見せる。
「な、何か、アレンさんについて私たちが知らないことを知っているのですか?」
ウェンディの言葉を皮切りに、ナツだけでなくその場にいる皆がメストへと視線を向ける。メストは、ゆっくりと目を閉じると、再びナツに向かって短く答える。
「本当だ…」
メストの言葉に、ナツは目を見開き、酷く狼狽した様子を見せる。
「おいっ!一体何だってんだ!!」
「ヒスイ王女から何を聞いたんだ!メスト、お前ももったいぶらずに話せ!!」
グレイとエルザが、酷く困惑した様子で口を開いた。その様子を見て、ナツが小さく、そして震えた様子で口を開いた。
「…アレンは…アクノロギアとアルバトリオンとの戦いで…左腕を失ったらしい…」
ナツの言葉に、エルザ達は呻き声に似た声を漏らし、これまでにないほどに目を見開く。
「じょ…冗談…でしょ…」
「いや、本当だ…アルバトリオンとの戦闘に加えて、アクノロギアの乱入…その時だ…。スタークとリリネットというものの助けで何とか命拾いはしたが…」
ルーシィの悲鳴に似た呟きが、メストによって遮られる。
「エルザ…お前、いにしえの秘薬、今も持ってんだろ?」
「ッ…ああ、当たり前だ…」
ナツの呟きに、エルザは震える声で答える。
「…アレンの失った左腕…それに右目を治せるのは…今のところそれしかない…」
ナツは、握りこぶしを携えながら些少の怒りを滲ませて答える。
「…つまり、アレンのことも一刻も早く見つけ出していにしえの秘薬を飲ませなきゃならねえってことか…」
グレイがそう呟くと、皆の感情が全く同じであったのか、暫し考え込むようにして静寂が生まれた。
さて、マカロフ救出作戦に際して、1年前よりも耳が良くなっていたガジルは、エルザ達の会話を盗み聞きする形で情報を得ることになった。それをもとに、ガジル、レヴィ、ミラ、エルフマン、リサーナ、ジュビア、カナ、リリーの8名でラクサス達を探すことを目的に動き始めた。
また、ガジル達の行動の話を横耳で聞いていたウルが、「私たちはアレンを探すぞ」という言葉がけと共に、ウル、ウルティア、カグラ、ジェラール、リオン、ソラノ、ユキノの7名が出張ることとなった。
マカロフを救出することを目的に動いていたエルザ隊は、カラコール島にてブランディッシュとその部下であるマリンと遭遇、戦闘となってしまう。マリンの空間を支配する魔法と、ブランディッシュのマカロフをも超える圧倒的な魔力に押され、不利な状況に立たされる。
「ま、いくらアレンが強くても、所属するフェアリーテイルも強いかと言われれば別ってわけね…」
ブランディッシュは特に表情を変えずにエルザ達に歩みを進める。
「く、くそ…これが、アルバレスの力…なのか…」
エルザは悪態を付くように睨みつけると、そこに一人の男が一瞬で割って入ってくる。
「わりいな、姉ちゃん…こいつら…俺の知り合いなんだよ…」
その男は、白い服を身に纏い、気怠そうにそう言葉放つ。その男の後姿を見て、エルザは目を日見開いて口を開いた。
「ス、スターク…なのか?」
エルザがそう呟くと同時に、エルザの後ろで片膝を着いて息を荒げていたナツ達の元に、一人の少女が歩み寄ってくる。
「よっ!無事か?」
「リ、リリネットさん…」
その言葉を聞き、ウェンディが驚いた様子で言葉を放った。スタークとリリネットの登場に、ブランディッシュとマリンは狼狽した様子を見せる。それを見て、スタークがまたも気怠そうに口を開いた。
「すまねえが、これ以上こいつらに手出し…させねーぞ…」
「…あんたが、スターク…ウルキオラ様の元仲間にして、第1十刃の…」
スタークの言葉に、ブランディッシュは警戒したように口を開いた。
「やっぱ、ウルキオラの奴はそっち側にいるのか…なら伝えとけ…俺たちは、アレンの、フェアリーテイルの味方だってな…」
スタークはブランディッシュに向け、ゆっくりと言葉を発した。
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