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ハッピークローバー

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第三十三話 夏が近付いてその二

「それだと物々交換でね」
「余計に厄介よね」
「お金があってちゃんと通用する社会の方がね」
「いいのね」
「ジンバブエみたいなインフレになったら」
 それこそというのだ。
「暮らしていけないでしょ」
「あそこ凄いみたいね」
「あと世界恐慌の時のドイツとかね」
 この国も例えに出した。
「酷かったでしょ」
「もう滅茶苦茶だったのよね」
「お店でビール飲んでたらビール代上がっていたのよ」 
 店に入ってそうしている間にだ。
「あとリアカー一杯の札束で卵一個とかね」
「冗談みたいな状況ね」
「それか世紀末な世界よ」
「核戦争の後とかの」
「ああした社会でもお金はいらないわ」 
 それも一切というのだ。
「けれどあんな社会もでしょ」
「絶対にいたくないわね」
「法律も何もないでしょ」
「モヒカンの人がオートバイに乗って走り回っていてね」
「やりたい放題でね」
「そんな社会も嫌でしょ」
「ええ」
 留奈はまさにと答えた。
「本当に」
「そんな社会よりもね」
「お金がある方がいいのね」
「そうよ」
 母はまたまさにと答えた。
「遥かにね」
「お金が通用しない社会よりも」
「そんな馬鹿みたいなインフレかね」
「世紀末ね」
「どっちも碌なものじゃないから」
 そうした社会だからだというのだ。
「お金はある方がよくて使い方もね」
「覚えておくことね」
「ちゃんとした使い方をね」
 それをというのだ。
「知っておくことよ」
「そうしたらいいのね」
「そう、あとね」
「あと?」
「借金はしないことよ」
「ああ、借金はね」
「後が厄介だから」
 金を借りると、というのだ。
「闇金は間違っても駄目だし」
「闇金は絶対によね」
「犯罪だからね、そもそも」
「闇金自体が」
「犯罪に関わることになるし」
「冗談抜きでトイチどころじゃないわよね」
「そうよ」 
 十日で一割の利息なのでトイチと言った、金を借りる中でも法外な利息という意味にもなっている言葉だ。
「闇金はね」
「トウサンとか?」
「あるわよ」
 実際にというのだ。
「それもね」
「借りたら後が大変ね」
「その場は助かってもね」
「その後がもっと大変ね」
「だから闇金はね」
「絶対に借りたら駄目ね」
「後でどうなるかわからないから」
 それでというのだ。 
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