いい居酒屋

　村上は乾杯しジョッキのビールを飲んでから言った。
「いや、確かに」
「いい店員さんが揃ってるな」
「礼儀正しく親切な」
「いいお店だな」
「そうですね、何かです」　
　村上はつまみに頼んだホッケの開きを食べてから言った。
「ホッケもチェーン店ですから同じ味の筈なのに」
「美味いよな」
「そう感じます」
「ビールだってな」
　仙水はじゃがバターを食べつつ言った。
「普通のお店よりもな」
「確かに美味く感じましたね」
「サービスがいいとな」
　それならというのだ。
「その分だよ」
「美味く感じますね」
「気分よくなるからね」
「気分って大事ですね」
「そうだよ、それは俺達も同じでな」
　仙水は向かい合って座っている村上に話した。
「俺達は接客魚じゃないけれどな」
「礼儀正しく親切に仕事してると」
「人に接しているとな」
　そうしていると、というのだ。
「自然にな」
「相手も気分がよくなって」
「お互いに楽しく和気藹々とな」
「仕事が出来るんですね」
「そうだよ、このお店はどの店員さんもそうでな」
　そしてというのだ。
「笑顔がいいな」
「そうですね」
「それもいいんだ、だから飲んで食べても美味いし」
「また来ようってなりますね」
「そうだよ、実際繁盛してるしな」
「ですね、俺達以外のお客さんもいますし」
　村上は店の中の状況を個室だが周りの声も聞いて言った。
「結構多く」
「それはどうしてか」
「店員さん達がいいからですね」
「そうだよ、そして俺達もな」
「そうしたところは気を付けていく」
「そうしていこうな、じゃあ今はな」
　ジョッキを空にしてから言った。
「美味いものをさらに飲んで食ってな」
「楽しみますか」
「さらにな」
　こう言って二人でさらに注文した、そしてだった。
　さらに飲んで食べた、酒もつまみも美味くてだった。
　村上は満足した、それで自分も店の店員の様にしていこうと誓った。後に社会でも評判の優秀な社員となるはじまりだった。


いい居酒屋　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２２・８・２７