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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第9章 解散編
  第44話 爾後

アレンのフェアリーテイル脱退と、フェアリーテイル解散の報が各所に伝わっていた頃。アレンは、評議院を去った後、フィオーレ王国の首都であるクロッカスへと赴いていた。まだ評議院や王国など、重要な関係各所にのみ先の情報が伝達されていないこともあり、街ゆく人々がアレンの姿を見せ、いつもとは違う反応を見せることはなかった。アレンは首都の住民たちから掛けられる声に優しく丁寧に返しながら、クロッカスの中心部にある王宮へと歩みを進めていた。アレンの姿を見た衛兵は、少しの驚きを見せた後、アレンから用を聞くと、足早に王宮内へと駆けていき、その後すぐに入城を許された。
アレンが衛兵に案内される形で玉座の間に姿を現すと、ヒスイ王女とトーマ国王が玉座の椅子に腰かけ、その横に桜花聖騎士団長のアルカディオス、防衛大臣のダートンが控えていた。アレンは見慣れたそんな様子に表情を変えず、ヒスイ達の前に移動すると、片膝を着いて座り込む。
「急な訪問、ご容赦ください」
「来ていただけて、とても嬉しいですわ…。どうか楽になさってくださいませ…アレン様」アレンが一言そう発すると、ヒスイは顔を少し赤らめて返答した。ヒスイの言葉通り、ゆっくりと立ち上がると、国王であるトーマが口を開く。
「して、今日は一体どのようなご用件で?」
「はい、お伝えしたいことがあり、参上いたしました」
アレンの言葉に、一瞬怪訝な様子を見せるヒスイ達であったが、アレンから発せられた言葉に、驚きを見せる。アレンがヒスイ達に話したのは以下の通りであった。
・三天黒龍の内、アクノロギアとアルバトリオンが復活を果たしたこと。この2体に関しては、人類に対して明確な敵意があり、世界の秩序にただならぬ影響を及ぼすこと。そしてそして、そんな黒龍達との戦いにフェアリーテイルを巻き込みたくはないこと。故に自身のみで討伐に当たり、それに際してフェアリーテイルを脱退したこと。
・ウルキオラという破面に虚の力を強制的に植え付けられ、抑え込めてはいるが、自身の意思や体力が消耗している際にはいつ暴走するかわからないこと。故にそれを制御できるように修行を積みたいこと。先の話にも被るが、もし暴走状態となった場合に、やはりフェアリーテイルや仲間、罪なき人々を巻き込みたくないこと。
・アルバレス帝国との緊張が高まり、剰えそのアルバレスがフェアリーテイルの最高機密である『妖精の心臓』を狙っていること。そして、アルバレス帝国とこのイシュガル、引いてはフィオーレ王国が戦争になれば、厳しい戦いになること。
その話のどれもがヒスイ達を驚かせるものであったが、その話を聞き及んだあと、ヒスイはゆっくりと目を閉じた。そして、意を決したように声を発する。
「アレンさんのギルド脱退の報は、私達の耳にも入っております。…そして、フェアリーテイル解散についても…」
「…そうですか…やはり関係各所への伝達は速いものですね…」
アレンはヒスイの言葉に小さく笑って見せたが、ヒスイの表情が明るくなることはなかった。
「…つまり、一人で戦いに臨むと…そう仰られるのですね…」
「…はい、その通りです」
ヒスイは膝の上のスカートをぎゅっと握りしめながら辛そうに言葉を発する。アレンはそんなヒスイの言葉に短く返したが、ヒスイがバッと急に立ち上がったことで些少の驚きを見せる。
「ッ!いけません!!三天黒龍をたった一人で討伐されるなど…無茶ですわ!!」
「姫様…」
ヒスイの悲鳴にも似た怒号に、思わずアルカディオスが目を見開いて小さく呟く。
「…確かに、厳しい戦いにはなるでしょう…ですが、私は必ずや無事に戻って参ります…。そして、フェアリーテイルも必ずや復活を果たします。ですから、信じて待っては頂けませんでしょうか?」
アレンの小さく懇願するような言葉に、ヒスイは目尻に涙を浮かべていた。そして、両の目を強く閉じ、苦悶の表情を浮かべたかと思うと、ゆっくりとその身を椅子へと預ける。
「…もう、何を言っても無駄なようですね…」
「…ご心配をおかけし、申し訳ない…」
ヒスイはどこか諦めたように小さく声を発した。そして、アレンの言葉を聞くと、何かを決心したかのようにキリっとした目でアレンを見つめる。
「でしたら…私からもお伝えしたいことが…お願いがございます」
「…何でしょうか?」
ヒスイの何かを決意した様子に、アレンは真剣な眼差しを向ける。ヒスイはそんなアレンを見て、更に顔を赤らめるが、それを振り払うかのように震える唇を開いた。
「…三天黒龍を倒し、アルバレストの緊張も解けた暁には…私と婚約して頂きたく…存じます…」
ヒスイの小さく甘い声に、アレンだけでなく、国王達も大きく目を見開く。未だ状況がつかめていないアレンは、目を大きく見開いていた。そんな様子を見てか知らずか、ヒスイは続けて言葉を発した。
「…今ここで返事をしていただく必要はありません…。暫しお考えいただきたいのです…。私との…婚約を…。私は、アレン様を心の底からお慕い申し上げております」
ヒスイはそう言い放ち、赤らめた顔で、屈託のない笑顔をアレンへと向ける。ようやく平常心を取り戻し、状況を掴めたアレンが狼狽して言葉を漏らす。
「ヒ、ヒスイ王女…一体何を…そもそも私は一介の魔導士なわけで…そんな私が一国の姫と…っ!」
アレンは先のヒスイの発言の内容を理解し、なんとか言葉を放ったが、ヒスイの真剣で恥じらいを持った目と表情に言葉を止める。それが冗談でもなんでもなく、心の底からの思いなのだと悟ったからだ。
「…わかりました。考えさせて頂きます…。ですが、あまり期待しないでくださいませ…」
「…ふふっ!あなたが無事に帰ってきた暁には、必ずやあなたを惚れさせて見せますわ…フィオーレ一族の名にかけて!♪」
そんなアレンの言葉を意に介さず、ヒスイは小さく笑ったかと思うと、嬉しそうにアレンへと声を掛けた。

王国訪問に際し、今後の自身の動きなどを伝えたアレンは、ヒスイ王女からのまさかの告白に、考え込むようにして王宮を後にした。『ドラゴンレイド』終結後に、エルザ達が予測していたことが当たっていたという事実を知り、驚きを隠せなかった。アレン自身も、先の謁見でヒスイのただならぬ強い意志と思いを感じ取り、生半可な返事はできないと感じていた。
そんな風にして暫く考え込んでいたアレンだが、程度の良いところでその思考を止めると、クロッカスの宿で一泊し、少々遠方へ出向く決意を固め、準備を進めることにした。

『イシュガル』には、フェアリーテイルを含め、約500のギルドが存在する。それに対して、西の大陸『アラキタシア』では正規・闇合わせて730の魔導士ギルドがあった。その730全てのギルドを統一して、一つの巨大な帝国を作ったのが超軍事魔法帝国アルバレスである。
そんなアルバレス帝国には、『スプリガン』と呼ばれる皇帝が存在し、その皇帝を守るための精鋭部隊、『スプリガン12』という12人の超人離れした魔導士がいた。驚くべきことに、この12名は、イシュガルの四天王と同等かそれ以上の力を有しているとのうわさもある。そんなスプリガン12であるが、アラキタシアの土地が広いせいもあり、全員が一堂に会することは滅多にないという。しかし、今日この日に限っては、1か月前からの、それも皇帝からの直々の命令ということもあり、12名全員が首都『ヴィスタリオン』の皇城の一室に一堂に会していた。そんなスプリガン12を眼下に置きながら、黒い服に身を包んだ一人の男が口を開く。
「まさかスプリガン12が全員集まってくれるとは思わなかったよ…」
「陛下の命とあらば、我らはいついかなる時でも参上致します」
皇帝の言葉に、スプリガン12が一人、冬将軍の異名をもつインベルは淡々と言葉を発する。
「相変わらずお堅いやつだねー、インベル!」
「…今回の招集は事前に組まれていたもの…集まるのは当然です」
砂漠王アジィールと国墜としのブランディッシュがそれぞれに口を発する。
「そうだね…、今回の招集の意味は、もう皆理解しているね?」
そんなスプリガン12の言葉を受け、皇帝は微笑を漏らすながら口を開く。
「イシュガルの殲滅…そして妖精の心臓の奪取…」
白いひげを長く携えた魔導王オーガストが小さく呟く。
「それだけじゃないわ…三天黒龍の殲滅も、此度の作戦の一つ…」
大きなとんがり帽子から緋色の長い三つ編みを覗かせる緋色の絶望と言われるアイリーンが吐息を漏らしながら声を上げた。
「そうだね…、でもまずは、妖精の心臓を得ないことには三天黒龍と戦うのは無理だ…アレンやウルキオラ…バルファルクでもない限りはね…」
その言葉を聞き、アイリーン含め、皆が怪訝な表情を浮かべる。
「して、ウルキオラ様やバルファルク様は此度の作戦には参加為されるのですか?」
「バルファルクの目的はアレンを倒すことだからね…イシュガルの殲滅にも協力してくれるよ…。でも…」
皇帝が続けて言葉を発しようとしたが、それはこの部屋の入り口である巨大な扉が開いたことで紡ぎを迎えることはなかった。
「…妖精の心臓になど興味はない…俺は、ミラボレアスを倒すために貴様らと手を組んでいるに過ぎない」
扉から現れた男は、皇帝とは逆に、全身を白い服装で覆った人物であった。その男は皇帝と巨大なテーブルを挟んで相対するように歩みを止める。
「ウルキオラ様…」
アイリーンがその男を見て、小さく呟く。そんなアイリーンに見向きもせず、ウルキオラは皇帝に向けて口を開いた。
「しかし、まさかお前含め、ここにいるもの全員が一切気づいていないとはな…。奴がその気だったならば、すでに半分近くは死んでいただろうな…」
「…?なんの話だい?」
ウルキオラの言葉に、皇帝は些少の怪訝さを見せながら言葉を発する。アイリーン含め、スプリガン12も何を言っているのか理解できないといった様子を表情に表す。直後、皇帝の真上から聞こえてきた声に戦慄を覚える。
「へー、やっぱさすがだな…。ウルキオラ…お前の索敵能力を欺くには至らないってことか…」
その声に、皇帝含め、皆がバッと振り返るようにして視線を移す。
「これは…驚いたな…。まさか遠路遥々来たのかい?…アレン」
「そりゃこっちのセリフだぜ…まさかお前がアルバレスの皇帝だったとはな…ゼレフ」
アレンは、天井を支えるをまたぐように設置されている棒状の支えに足を組んで腰かけていた。両者が互いに驚きの表情を見せていると、インベルが狼狽したように声を掛ける。
「バ、バカなッ!この大陸に、しかも首都、それも皇城に誰一人として気付かれずに入り込んだのか!!」
「…これが…龍の天敵…」
「アレン・イーグルか…」
インベルの激高に対し、オーガストと、暗殺魔法の天才と言われるジェイコブが小さく口を開く。
「…それだけじゃない…。まさかあんたがアルバレス入りしていたなんてな…ゴッド・セレナ…!」
「おうおうおう、俺からイシュガル最強を奪ったアレンじゃねーか!まさかあんたもアルバレス入りするつもりなのかい?」
「んなわけねーだろ、アホか…」
アレンは、セレナの残念な雰囲気に、小さく罵詈を浴びせる。その後、ゆっくりと視界を移し、とある人物、女性へと視線を移す。
「しかも、俺の知り合いの母ちゃんまでいると来た…」
「あら、まさかご存じだったの?さすがは龍の天敵と言われ、単騎でアクノロギアを打ち倒すだけのことはありますわ…」
視線と言葉を向けられ、剰え自身の子どもについて知っていたアレンに、アイリーンは些少の驚きを見せる。
「いんや、知ったのは今だ…。魔力が酷く似通っているんでな…。それにお前は竜…いや、もとは人間か…。お前の生い立ち含め、色々話を聞いてみたいもんだな…」
「残念…お話しするつもりはなくてよ…」
アレンはアイリーンにを軽くいなされるのと同時に、ゼレフへとその視線を戻す。
「ゼレフ…」
「なんだい?アレン…」
名を呼称されたゼレフは、ゆったりとリラックスした様子で言葉を発した。
「フェアリーテイルに…攻め込むつもりか?」
「うん、そうだね…」
アレンの低く唸った声を聴いても、ゼレフは落ち着いた雰囲気を崩さない。
「覚えているか?マグノリアの近くの森で話したことを…」
「もちろん…覚えているとも…親友との久しき会話だった…。忘れるわけもない…」
ゼレフのどこか嬉しそうな言葉に、アレンは怪訝ん表情を見せる。
「なるほど…つまりは、分かった上で…俺と完全に敵対することを理解したうえでの行動ということか…」
「そうだね…、できれば君をこっちに引き込みたかったけど…無理だったね…」
「はっ…そりゃこっちのセリフだぜ…。道を踏み外しやがって…」
「踏み外してなんかいないさ…これが僕の正義だよ…」
「………」
アレンとゼレフは互いにキャッチボールするかの如く会話をしていたが、アレンが黙りこくったことで、それは終わりを告げる。そんなアレンの様子に、ゼレフは少し目を細め、口を開いた。
「…それで、ここまで一体何の用出来たのかな?」
「…いや、用は済んだ…。お前が皇帝であるならば、話しをする意味はない…」
「…どういうことだい?」
ゼレフの問いに答えようとしないアレンであったが、それは息を漏らすような、小さな笑い声が後を引き継いだ。
「なるほど…そういうことか…。ならば確かに、皇帝がゼレフであると知った時点で、お前の策に意味はないな…」
「全部お見通しってわけか…」
「…何か知っているのかい?ウルキオラ…」
ウルキオラの言葉に、アレンとゼレフは怪訝な表情を見せながら、それぞれに言葉を漏らす。
「大したことではない…。お前が知ったところで、何の意味もなさない」
「そうか…君がそう言うのなら、そうなんだね」
ウルキオラの言葉に、ゼレフは口角を上げて声を発した。そんなゼレフの様子を見たウルキオラは、視線をアレンへと向ける。
「お前に、一ついいことを教えてやる」
「へえ、珍しいこともあるもんだな…なんだ?」
ウルキオラの発言に、アレンは小さく目を見開いた。
「…俺の仲間、まあ元だが、第1十刃がこの世界に来ている」
ウルキオラの言葉に、アレンだけでなくゼレフを含め、皆が目を大きく見開いて驚く。アレンはフェアリーテイルのメンバーから、ゼレフやスプリガン12はウルキオラ本人から、ウルキオラの種族や階級、十刃の話を聞いていた。故に、ウルキオラが第4十刃であることは聞き及んでいた。だからこそ、先の第1十刃…ゼレフやスプリガン12の魔導士をもってしても圧倒的と言わしめるアレンとウルキオラを超える存在の登場に、驚きを隠せなかった。
「…ありがたい情報だが…嬉しい話ではなさそうだな…」
「さあ、どうだろうな…」
アレンの言葉に、ウルキオラは低い声で答えて見せる。暫く両社は睨むような形を見せていたが、アレンが一つため息をついたことで、それは終わりを迎える。
「…んじゃ、そろそろお暇するとしますかな…次に会う時は…いや、もうずいぶんと前から敵同士だな…ゼレフ」
「うん、そういうことだね、アレン…残念だよ…」
アレンはゆっくりを座っていた身を立ち上げ、そう呟いた。ゼレフはそんなアレンの様子を見守りながら落ち着いた雰囲気を見せていたが、ある2人の男がそれを制止しようとする。
「逃がすと思いますか?」
「あんたをここで捉えれば、勝ったも同然だな!」
インベルとアジィールがアレンへと攻撃を仕掛けようと魔力を込めるが、ゼレフにそれを制止させられる。
「よせ、インベル、アジィール、目の前のアレンは分身だ…」
その言葉を聞き、インベルはまたも驚きの表情を見せる。
「分身…馬鹿な、実体を持つ分身など…」
「この影分身を見破るか…いや、これを会得したのはお前と共に過ごしている時だったな…ゼレフ」
「…そうだね」
インベルの言葉に反応することなく、アレンはどこか感慨深そうにゼレフへと問いかけた。それに答えたゼレフも、懐かしそうに、それでいて些少の悲しみをもって言葉を発した。…そして、アレンが両の手を合わせると同時に、アレンの身体は白い煙と化し、その姿を消した。

アレンがフェアリーテイルを脱退、そしてフェアリーテイルが解散を果たしてから早1か月が経とうとしていた。フェアリーテイル解散を受け、それをすぐには受け入れられなかったギルドメンバーであったが、解散から1か月も経つと、次第に自身の道を探る様子を見せ、少しずつ己の道を歩みだしていた。
そして、解散から2か月が経った頃。ある衝撃的な事件が起こる。評議院の各支部並びに本部が、何者かの襲撃を受け、木っ端みじんに吹き飛んだのだ。もちろん、フィオーレ王国にある評議院であるフィオーレ支部も完膚なきまでに叩きのめされ、クロフォードを始めとする上級魔導士たちの全てが死亡。フィオーレ王国並びにイシュガルの大陸は魔導防衛機能を完全に失うこととなった。この評議院襲撃事件の首謀者は天彗龍バルファルクであり、フィオーレ王国、並びにイシュガルの大陸に存在する国と住民を戦慄させることとなった。メスト初め、何とか生き残った評議院は、同じく難を逃れたイシュガルの四天王初め、聖十大魔道士を筆頭に、新生評議院を立ち上げようとしているが、幾ばくかの時間がかかることだろう。もちろん、この事件は解散によって散り散りになった元フェアリーテイルのメンバーの耳にも届き、バルファルクはじめ、強者との決戦が近いことを意識していた。
そして、そんな元フェアリーテイルのメンバーへ更に驚きを与える事件が起こる。
バルファルクが評議院を襲撃した1か月後、つまるところ、フェアリーテイルが解散して3か月が経った頃、フィオーレ王国の北西でアレンとバルファルクが激突をしたのだ。未だ機能を取り戻せていない評議院であったが、アレンとバルファルクの激突に際し、監視用ラクリマを発動させ、戦いを見守ることとなった。結果としては両者とも途中で戦線を離脱し、決着がつくことはなかった。
この戦闘に際し、王国兵や聖十大魔道士序列4位であるウォーロッドはじめ、数名のフェアリーテイルのメンバーは戦闘跡地へと赴く。そこはまるで天変地異でも起こったかのような様相を呈しており、驚きを生んだのは無理もない。そして、これも予想されていたことではあるが、その場にすでにアレンはおらず、壊滅した土地や自然が残されているだけであった。
そして時は流れ、解散から7か月が経った頃、今度はアレンとアルバトリオンが激突を迎える。場所はフィオーレ王国南西で発生し、これも同じように監視用ラクリマで戦いを見守ることに成功した新生評議院であったが、信じられないような出来事が起こる。魔法の覚醒の最終形態である卍解、『妖精の皇帝』を発動したアレンであったが、その力をもってしてもアルバトリオンに終始押されている様相を見せていた。しかも、それだけでなく、アレンが消耗しているところに、アクノロギアが乱入。アクノロギアとアルバトリオンは手を組む形でアレンと戦闘を始める。アルバトリオンだけでも押されていたアレンに、アクノロギアが加わったことで完全に勝ち目がないと判断した仮設評議員は、この時点で緊急事態宣言を発令する。
元フェアリーテイルの魔導士であり、フィオーレの英雄といわれるアレンが、アクノロギアとアルバトリオン、三天黒龍の内、2体を同時に相手取っているという情報を受けた王宮やマグノリアを始めとした街、そして元フェアリーテイルの魔導士たちは、それぞれが手に着けていたことを即座に中断し、兵士を派遣し、祈るように見せたり、剰え南西へと足取りを急ぐものもいた。
新生評議院はアクノロギアとアルバトリオンから、アレンを救える算段はないものかと模索していたが、有効な手段などあるはずもなく、苦悶の表情を受けべながら戦いの様子を曲がめることしかできなかった。
だが、そんな新生評議院や追い詰められているアレンに転機が訪れる。深い青いニスデールを羽織った男と少女と思われる2人がアレンの元へと現れ、共に戦いを始めたのだ。特に、男の方は少女を吸収したような動作を見せた後、変身して見せ、あの卍解状態のアレンと同等と言わしめるような力を見せたのだ。
それもあり、アレン&謎の男vsアクノロギア&アルバトリオンの戦いは、これまた両者とも引く形で決着を預けた。
そんな地獄のような様相を見せる戦闘の地に、果敢にも歩みを進めていたのは聖十のウォーロッドとジュラ並びに王国兵士、そして元フェアリーテイルメンバーであるエルザ、カグラ、ウル、ウルティア、ミラ、リサーナ、ジェラール、リオンであった。
だが、この全てがフィオーレ王国の東部から向かったこともあり、バルファルク戦と同様、到着した際にはすでに蛻の殻となっていた。いや、到着したというのは語弊があっただろう。
戦闘が繰り広げられていたとされる場所は、土地ごと消滅していたのだ。その様相に酷く怯えた様子を見せる先の集団であったが、エルザやカグラ達はその様相を目に移しながら、握りこぶしを携え、「くそぉぉぉぉ!!!!」と怒号を放つこととなった。
後に、謎の男と少女の存在を新生評議院がエルザ達に話すと、それがスタークとリリネットであることを瞬時に理解し、ことの経緯を話した。ウルキオラと同郷であるという不安はありながらも、アルバトリオンの討伐を目的とする2人の話を聞き、先の2人を一応は味方として認識するに至る。

そして、その後は特に大きな戦闘や事件はなく、フェアリーテイルの解散から1年が経とうとしていた。

私の名前はルーシィ。
アレンさんのフェアリーテイル脱退後、訳も分からず、その日のうちにフェアリーテイルそのものが解散となり、私は暫く落ち込んでいた。以外にも、他の皆は前向きに別々の道を歩んでゆき、真意はわからないが、マスターの言葉を受け止めている様子であった。でも、私は中々その落ち込みから脱却できなかったんだけど、解散から2か月がたった時点で週刊ソーサラーの記者であるジェイソンから仕事に誘われ、それを二つ返事で承諾した。それもあり、マグノリアから首都クロッカスへと引っ越した。
だけど、どの直後に衝撃的な事件が起こる。なんと、天彗龍バルファルクによって評議員が壊滅…。しかもその一か月後、アレンさんが先の天彗龍バルファルクと接触、戦いを始めたのだ。私はジェイソンさんに休暇を貰って事の経緯を調べていたんだけど、場所は王国の北西…。この首都クロッカスからは1000㎞ほど離れていた。今から向かっても、恐らくアレンさんに会うことはできない。そんなもどかしい気持ちを抱えながら戦いの結果の一報を待っていたんだけど、両者とも引く形で決着がついたみたい。とりあえず、アレンさんは無事なようで安心した。
…でも、その後にもっと衝撃的なことが起きた。なんと、先のバルファルクやアクノロギアをも超えるアルバトリオンと、アレンさんが戦闘していると情報が入ったからだ。
それだけでも驚きなのに、その戦いにアクノロギアが乱入。しかもアクノロギアとアルバトリオンは手を組み、アレンさんに対峙しているとのこと。…勝てるわけがない。さすがのアレンさんでも、三天黒龍を2体同時に相手取るなんて無理よ…。そう思った私は、アレンさんに『逃げて!!』と念を送った。でも、評議院からの情報では尚も戦闘を続けているらしい…。どうして…。その時私は、思わず涙を流して座り込んでしまった。でも直後に奇妙な情報が入ってきた。謎の男と少女がアレンと共に戦闘を開始したとか…。しかもその男は、アレンさんと同等かそれ以上の力を有しているみたいなの。そのかいもあり、アレンさんはその男と共に戦線を離脱。アクノロギアとアルバトリオンも、その謎の男と少女の襲来により戦闘行為をやめたとか…。
私には、一組しか思い浮かばなかった。アレンさんと同等かそれ以上の力を持つ男と少女の組み合わせ…。ロンリネスの森で出会った、スタークとリリネットだ。経緯はわからないけど、きっとアレンさんを助けに行ってくれたんだ…。あの時の言葉は、本当だった…。私は1年前の記憶を探るようにして、先の2人を思い浮かべながら感謝した。
そして、それ以降は特に何の事件もなく、解散から1年が経とうとしていた。私は、首都クロッカスで行われる初めての大魔闘演舞なるものに取材に来ていた。そこで、衝撃的な再会を果たすことになる…。
首都クロッカスの闘技場をボロボロに破壊した男がいたのだ。その男は、黒いマントを羽織っており、炎の魔法を使っていた。…見覚えのある魔法だった。そして、その男の両腕に炎を纏わりつく。私の知っているものよりも数段強力な炎…。だが、マントから見えた白いマフラーと桜髪は見間違えるはずもなかった。
「ナツッ!!」
私は思わず大声で叫んでしまった。その声に反応するように、私の後ろから小さな影が翔ける。
「久しぶりっ!ルーシィ!!」
「ハ、ハッピー!」
覆わず目を見開いてしまった…。そして、辺り一帯の敵を薙ぎ払うと、ナツは笑顔で私に声を掛けてきた。
「よお、久しぶりだな!!ルーシィ!!!」
「ふふっ…元気?」
この時、私の中である声が響いた…。
『フェアリーテイルは…まだなくなってなんかいないって…!』
 
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