イベリス
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第六十四話 期末テストその十一
「お腹一杯あげてな」
「肥満や痩せ過ぎには注意ね」
「そしてそうなったらな」
「その時は助けるのね」
「子供にちゃんと寄り添ってこそ親だからな」
父はしみじみとして言った。
「それをしない親もいるんだ」
「育児放棄ね」
「子供をほったらかして遊びに行くなんてな」
こうした親はというのだ。
「もう親じゃないんだ」
「血はつながっていても」
「そんな親もいるからな、代わりに育ててくれる人がいたらいいがな」
「そうでないとなのね」
「もうその子供はどうなるんだ」
「わからないわね」
「子供を大切に出来ない親は自分しかないと思うんだ」
目を怒らせてだった、父は咲に語った。
「いいな」
「自分しかないから子供をほったらかしにして」
「それで遊ぶんだ」
「そうするのね」
「そうした人間もいるんだ」
「そうなのね」
「咲はそんな親になったらいけないぞ」
こう娘に言うのだった。
「絶対にな」
「結婚して子供ができても」
「考えてみるんだ、ご近所にそんな人がいたらどう思う」
「遊んでばかりで子供のことはほったらかし」
「家事も何もしないでな」
「代わりに育てる人がいないならもうお家も滅茶苦茶ね」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「子供が飢え死に、衰弱死なんてな」
「そんなことにもなるのね」
「そんな人がご近所だったら本当にどう思う」
「最低としか思えないわ」
咲も怒った目で答えた。
「人間とは思えないわ」
「そうだな、そこまで思うならな」
「絶対にならないことね」
「最低と思った輩にはならない様に努力するんだ」
「その人を見て」
「ヤクザ屋さんを見て最低と思ったらな」
それならというのだ。
「ヤクザ屋さんみたいにはなるな」
「そういうことね」
「反面教師にするんだ」
自分が最低だと思った輩を見ればというのだ。
「いいな」
「そうするわね」
「そうだ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「努力するんだ」
「そんな人にならない様に」
「そんな最低な親でもない人間を見たらな」
「そんな風にならないことね」
「そうするんだ。碌でもない人間を見るのも勉強だ」
それになるというのだ。
「嫌な思いはするがな」
「ああはなるまいと思って努力する様になるから」
「いいんだ」
「そうなのね」
「本当に嫌な思いはするがな」
それでもというのだ。
「人生の勉強にはなる」
「嫌な思いするのも人生の勉強?」
「それ込みだな」
「嫌な思いしてこんな嫌な奴みたいにはならない」
「それでそいつの悪い部分を全部見てな」
そうしてというのだ。
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