DQ11長編+短編集
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恥ずかしき呪いの勇者
前書き
恥ずかしい呪い、超恥ずかしい呪いの縛りプレイにて。異変後の展開、最後の砦から。
グレイグと共にゾンビ師団長撃破後。
「お前⋯⋯戦闘中に顔を覆うとは何事だ」
「すっ、すす、すみましぇん⋯⋯あっ、恥ずかしい⋯⋯!」
「何故いちいち恥ずかしがるのだ⋯⋯、今まで対峙してきた中でそのような反応はしていなかったはずだが」
グレイグは怒っているというより呆れているようだ。
「あ、あの時やその時は平気だったんだけど、この恥ずかしい症状は定期的にやってくるから⋯⋯っ」
「恥ずかしい症状とは、何だ」
「だからその、人に話しかけるだとか、戦闘中に不意に襲ってくる恥ずかしい気持ち⋯⋯それを“恥ずかしい呪い”って呼んでるんだけど」
「何だと⋯⋯? そんな恥ずかしい呪いを患っていながらこれまでよく生き抜いてこれたものだな」
感心と呆れが入り混じっているグレイグ。
「そうなんだよね⋯⋯って言ってもこれまで結構それのせいでピンチに陥ったけど⋯⋯何せこの症状、仲間になってくれたみんなにも伝染してしまうものだから───」
「仲間にも伝染する、だと?」
「うん⋯⋯場合によってはみんな恥ずかしがって行動不能になるから大変なんだ⋯⋯それを僕達は、“超恥ずかしい呪い”って呼んでる」
「な、ならば先程お前と共闘した俺にも伝染したのか、その超恥ずかしい呪いとやらは」
「ううん、多分大丈夫だと思う。だって正式な仲間というわけじゃないし⋯⋯」
「そうか⋯⋯とにかく、王に戦況を報告せねばならん。お前も、来るか?」
「恥ずかしい⋯⋯! なんて言ってる場合じゃないよね、付いてくよ⋯⋯」
顔を覆いながら歩き出すジュイネ。
「(本当に大丈夫なのかこいつは⋯⋯)」
デルカダール王に報告を終え、その際に新たな任務を言い渡され二人だけで魔物の巣窟と化したデルカダール城へ潜入する事に。
「⋯⋯⋯⋯」
「デルカダール王の御前では平気だったようだな、恥ずかしい基準というのは何が違うのだ⋯⋯?」
「自分から話し掛けた時、かな。毎回じゃないけど偶に連続して恥ずかしい呪いの発作が出ることもあるよ⋯⋯」
ジュイネは疲れた顔で述べる。
「一体その症状はいつから出始めたのだ」
「イシの村での、成人の儀を迎えた辺りからかな⋯⋯。今まで何ともなかったはずなのに、人に話し掛けると時々猛烈に恥ずかしくなって、顔を覆ってしまうんだ⋯⋯」
「成人の儀を迎えるにあたり、情緒が不安定になったのか⋯⋯? それにしては成人の儀から大分経っているはずだろう、その呪いは克服出来ないのか?」
「うん⋯⋯克服出来ないどころか仲間のみんなにまで伝染してしまう始末だし」
「これから二人だけで魔物の巣窟と化したデルカダール城に潜入するのは、無理があるのではないか⋯⋯俺にも伝染し兼ねんだろう」
「えーっと、さっきも言ったけど正式な仲間じゃない限りは伝染しないのは確認済みなんだ。一時的に共闘してくれる形だと全然平気らしいんだけど、これからよろしく!っていう感じで正式に仲間になってくれた途端恥ずかしい呪いが伝染するみたいなんだ⋯⋯」
「な、成程⋯⋯? ならば今の俺とお前は一時的な共闘目的であるからして、取り敢えずはその呪いには罹らないというわけ、だな?」
「そうだと思う⋯⋯。ただ僕の方がその間かなり足でまといになりそうだけど今までも何とかなってきたから、この作戦は必ず成功させて見せるよ⋯⋯!」
「(顔を覆いながら言わないでくれ⋯⋯)」
「いやーっ、そんな目で見ないで!!」
「先に行くぞ」
荒廃したデルカダール城内での魔物との戦闘中。
「⋯⋯はっ、僕ってイケメンかも? 恥ずかしい⋯⋯!」
「そんな事は誰も聞いてないぞ!」
「あっ、お気に入りのヘアスタイルが乱れちゃってる⋯⋯恥ずかしい!」
「今そんな事を気にしている場合かッ!」
「ひえっ、パンツのゴムが緩んじゃったかも⋯⋯恥ずかしい!」
「何故そうなる!?」
「あれ⋯⋯? あの魔物にトキめいてしまう⋯⋯恥ずかしいっ」
「お、お前という奴は⋯⋯」
「ふあっ、ぱふぱふ思い出しちゃった恥ずかしいー!」
「なんだとッ? どんな⋯⋯ぐあッ」
グレイグは魔物から不意打ちを食らう。
「僕ってどうしようもない勇者だよ⋯⋯恥ずかしい⋯⋯」
「恥ずかしいというより落ち込んでないか?」
「はうわっ、急に身体中くすぐったくなって⋯⋯恥ずかしいっ!」
「どういう状況だッ」
「はぁ、はぁ⋯⋯全く、戦闘の度にツッコミを入れていてはキリがないな⋯⋯」
気疲れするグレイグ。
「───わあっ、何これ放してよー!?」
「(何だ⋯⋯?! 上半身は女の人形、下半身は鳥籠のような魔物に覆い被さられあいつが囚われてしまった。全く世話の掛かる奴めッ)」
グレイグはジュイネを救い出す。
「⋯⋯はぁ、ありがとうグレイグ。助か───はっ」
グレイグの顔を凝視するジュイネ。
「どうした、囚われた際にどこか怪我でも⋯⋯」
「なんて、素敵な方なんだろう⋯⋯心臓がドキドキする⋯⋯恥ずかしくて話し掛けられないっ」
ジュイネはグレイグにときめいて顔を覆う。
「⋯⋯もう勝手にしてくれ」
───ホメロスと対峙、屍騎軍王を倒した後。
「⋯⋯お前、先程の戦闘では涙まで流していたな。それは最早恥ずかしいのではなくて、情緒不安定としか言い様がないのでは⋯⋯」
「何だか色々込み上げて、涙が溢れてしまったんだ⋯⋯散々見苦しいところを見せてごめん⋯⋯」
「それだけお前は苦しい思いをしてきたのだろう、責められるものではない」
「うぅ、グレイグは優しいな⋯⋯。さっきも僕の盾になってくれると言ってくれたし⋯⋯」
ジュイネは顔を覆って嬉し泣きをする。
「泣くほどの事ではないだろう。俺にとってはこれまでの詫びでもあるし、勇者を守る盾となると決めたのは本当だからな」
「え、けどそれって⋯⋯正式に僕の仲間になってくれるってことでもあるんだよね⋯⋯?」
「それが、どうした? まさか駄目だとは言うまいな」
「だって、言ったよね⋯⋯僕の正式な仲間になると、“超恥ずかしい呪い”が伝染してしまうって」
「ぬ、そうだった⋯⋯」
「戦闘中にあんなことやこんなことで恥ずかしくなって行動不能になっちゃうんだよ、それでも⋯⋯僕の正式な仲間に、なってくれるのグレイグは」
「世界を救う勇者の盾となると誓った事に嘘偽りはない。超恥ずかしい呪い如きでこのデルカダールの猛将、グレイグが屈する訳がないだろう」
「あぁ⋯⋯なんて心強いんだろう。こうなったらグレイグがどんな超恥ずかしい呪いの症状に見舞われるか見てみないことには⋯⋯恥ずかしいっ」
「お前が恥ずかしがってどうする。⋯⋯そういえばお前は、戦闘中の恥ずかしい呪いでなくても人に話しかけただけで恥ずかしくなるんだったか⋯⋯。いずれその呪いを解く方法が見つかるといいのだが」
「そ、そうだね⋯⋯戦闘中の仲間にも伝染しちゃうし、迷惑かけちゃうから⋯⋯。生姜が無いからしょうがない、なんちゃって」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「渾身のギャグが受けなかった! 恥ずかしいっ!!」
グレイグが正式な仲間になって最後の砦を出発し、勇者ゆかりの地とされるドゥーランダ山を目指す道中の魔物との戦闘にて。
「ひょえッ、顔に小さな虫がくっ付いて変な声が⋯⋯は、恥ずかしいッ」
「(あ⋯⋯、とうとうグレイグにも超恥ずかしい呪いの症状が出始めた。そういえば虫が苦手って言ってたっけ)」
「グレたりツッパっていた時期があったな⋯⋯ハッ、急に何を思い出しているのだ俺は! 恥ずかしい⋯⋯ッ」
「(グレイグがグレる⋯⋯グレイグだけに??)」
「ソルティコで魚を食べすぎて腹を壊した事があった⋯⋯あれは我ながら不甲斐なかったものだ⋯⋯恥ずかしいッ」
「(よっぽど美味しかったのかな⋯⋯?)」
「マルティナ姫に虫が苦手なのを知られて笑われてしまったのを思い出した⋯⋯懐かしいものだが同時に恥ずかしい⋯⋯!!」
「(ふふ⋯⋯何だか想像したらかわいい)」
「タカのツメをずっと武器だと思っていた事があった⋯⋯我ながら恥ずかしい!」
「(あー、それ分かるかも)」
「ハッ、ついムフフな事が頭をよぎってしまった⋯⋯何と恥ずかしいッ」
「(戦闘中にそれはどうなんだろ⋯⋯って、僕も時々ぱふぱふ思い出しちゃうけど)」
「こ、こっちを見るんじゃない⋯⋯!?」
「(超恥ずかしい呪いで悶えてるグレイグを見てたら僕もまた恥ずかしくなってきた⋯⋯顔が熱い⋯⋯真っ赤になっちゃったかも、恥ずかしいっ)」
「二人一緒に恥ずかしがっていては魔物に一方的にやられてしまうではないか⋯⋯! グハッ」
「仕方ないじゃないか、これが僕の仲間の間で伝染してる超恥ずかしい呪いなんだもの! ⋯⋯いたっ」
「ゼェ、ゼェ⋯⋯なんと厄介な⋯⋯顔が熱くてしょうがないな⋯⋯」
「他のみんなの超恥ずかしい呪いが懐かしくなってきちゃったな⋯⋯。セーニャは夢の中で僕にウインクされたらしくて、ベロニカは占いで僕との相性が良かったとか、マルティナは僕がカッコよく見えたとかでよく恥ずかしがってたよ⋯⋯」
「お前それは自慢か??」
「シルビアはヒゲの剃り残しを気にしちゃったり、ロウじいちゃんはこの歳になって恥ずかしいことなどないって言ってたのに色々恥ずかしがってたし、カミュなんか僕のパンツを──あー! 恥ずかしくて言えないっ」
「仲間が揃ってからの方が厄介らしいな⋯⋯。くッ、愛馬のリタリフォンが恋しくなってきて涙が出そうだ、恥ずかしい⋯⋯」
「⋯⋯どうしようグレイグ、僕ちょっとちびっちゃったかも」
「⋯⋯⋯⋯。さっさと戦闘を終わらせて超恥ずかしい呪いを落ち着かせるとしよう」
「ごめん僕の場合戦闘終わっても恥ずかしい呪いは続くから───いやー! こっち見ないで!!」
「(とんだ恥ずかしい勇者の盾になってしまったものだ⋯⋯)」
end
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