イベリス
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第六十二話 命の大切さその四
「そっちなの」
「ウォーターバッグなの」
「漫画で読んだの」
「それで知ってるのね」
「そっちの方が拳を痛めないしね」
「お水だから」
「それに人間の身体は七割近く水分でしょ」
六割七分程がそうである、その為身体から急激に水分が出てしまうと生命の危険を迎えかねないのだ。
「その身体にどうダメージを与えるかもね」
「わかるのね」
「殴ってるとね」
そのウォーターバッグをというのだ。
「だから最近はね」
「ウォーターバッグなのね」
「そうなのよ」
「変わったのね、ボクシングも」
「それでそのウォーターバッグをなのね」
「殴ってればいいのよ、空手でも何でもね」
ボクシングでなくともというのだ。
「殴るのをやって」
「すっきりすればいいの」
「そうよ、小さな子殴って何がいいのよ」
母は怒って言った。
「一体ね」
「自分より弱くて抵抗出来ない」
「そんな人がライオン殴る筈ないわね」
「絶対にないわね」
咲も確信して答えた。
「自分より強い相手にはね」
「だからそんな人は最低だし」
「放っておいたら駄目ね」
「放っておいたらどんどん好き勝手するしね」
そうした危険があるからだというのだ。
「通報しなさい」
「見掛けたら」
「そして間違いなかったらね」
暴力を振るっているとだ。
「もう容赦なくね」
「通報ね」
「しかも然るべき相手によ」
「そうしないと駄目ね」
「警察だから絶対に大丈夫じゃないの」
決してというのだ。
「警察官にも警察署にもよるから」
「真面目に取り合ってくれるかくれないか」
「そうよ、実際に人が殺されそうでもね」
「動かない警察署もあって」
「警察官もいるのよ」
「そういう時に動くのが警察でも」
「そうなの、何度通報してもね」
九州のその事件の様にだ。
「そんな警察署もあるから」
「一回駄目だったらもうそこは通報しないで」
「それでね」
「他の署になのね」
「そうしてね」
「暴力の被害を防ぐのね」
「そうしなさいね、お母さんもそうしたことあるし」
母もというのだ。
「暴力受けているお友達がいて」
「通報したの」
「交際相手にね、その時は通報した警察署が動いてくれたけれど」
すぐにというのだ。
「けれどね」
「警察署によってはなのね」
「後で聞いたけれどね」
「そうしたことがあるから」
「児童相談所が動かなくて虐待されて死んだ子もいるし」
こうした悲劇が実際に起こるのも世の中というものだ。
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