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向かい合ってくれる人

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第二章

「言われていますので」
「どうしてもですか」
「お礼がしたいとです、お支払いすることを」
「お金ですか」
「そう言われています」
「そうですか、お金ですか」
 無駄遣いはしないが界人も金は好きだ、それでだった。
 会いたくはないが金を貰う為に財布の持ち主と会うことにした、そうしてだった。
 翌日学校帰りに交番に行くと言ってだった。
 行くとそこにだ、白髪頭で皺だらけの顔の小さな優しい目の老人がいた。老人は彼を見て満面の笑みで言ってきた。
「いやあ、貴方がですね」
「はい、広いました」
 界人は老人に答えた。
「そうしました」
「有り難うございます」
「お礼はいいです」
 界人は無表情で答えた。
「別に」
「いいっていいますと」
「ただ拾って届けただけなんで」
 それでというのだ。
「別にです」
「そうですか、ですが言葉ではなくて実際にです」
 そちらのお礼はとだ、老人は話した。
「したいですが」
「それなら」
 界人も応えた。
「お願いします」
「はい、ではあちらで」
 老人は交番の傍の喫茶店を見て話した、そうしてだった。
 二人でそこに入るとだった。
 老人は二人用の席に向かい合って座ってすぐに封筒を差し出した、そのうえで界人に対して笑顔で話した。
「お受け取り下さい、百万です」
「百万って」
「あの財布にはカードが入っていまして」
 金額に驚く界人に話した。
「そこには一千万以上あったので」
「一千万も」
「実はこの辺りのマンションやお店の土地を持っていまして」
「大家さんですか」
「はい、国道沿いの」
「あの車がいつも行き交っている」
「ショッピングモールもありますね」
 老人は微笑んで話した。
「あちらの土地もです」
「貴方がですか」
「持っていまして。その貸している土地代や家賃で」
「それだけのお金がありますか」
「それでカードにもありまして」
 一千万以上の金がというのだ。
「これはほんのです」
「お礼ですか」
「そうです、それで貴方は学生さんですか」
「そうです、大学に通っています」 
 界人は自分から話した。
「そして大学は」
「どちらでしょうか」
「それはです」
 通っている大学と学部のことを話した、すると。
 老人は驚いてだ、こう言った。
「そこは孫も通っていました」
「そうなのですか」
「今は就職していますが」
 それでもというのだ。
「卒業生です」
「そうだったのですか」
「そして私もです」
 老人自身もというのだ。
「その大学にです」
「通っておられましたか」
「引退しましたが教授でした」
「卒業生で」
 それでというのだ。 
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