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安石国の樹

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第一章

                安石国の樹
 漢の武帝は匈奴の討伐と西域への勢力拡大を推し進めていた。
 その一環として西域の大月氏国に向かわせこの国と同盟を結び共に匈奴にあたろうと戦略を立てていた。
 張騫はその国への使者に命じられ都長安を発ち西域に向かったが。
 安石国に来た時にだった。
 燃える様な朱色の花を咲かせた一本の木を見て目を瞠った。
「これはまた変わった木だな」
「全くですね」
「漢にはない木です」
「この様な木ははじめて見ました」
「我々もです」
 供の者達は黒い短い口髭と頬髭を生やした張騫に言った、色黒で背は高く細い身体が目立っている。
「何という木でしょうか」
「この木は」
「一体」
「この木は石榴といいます」
 国の者が言ってきた。
「この木は」
「石榴というのか」
「はい」
 その者は張騫に答えた。
「その名です」
「そうか、石榴というのか」
「左様であります」
「わかった、いい木だな」
 張騫はその木特に花を見つつ言った。
「これは」
「そう言って頂けますか」
「気に入ったこの国にいる間時間があれば見ていよう」
 こう言ってだった。
 張騫はこの国にいる間時間があれば石榴の木特にその赤い花を見ていった。だがこの辺りは元々雨が少なく。
 日照りが続いた、それでだった。
「まずいな」
「そうですね」
「草木が枯れてきていまして」
「この石榴の木も元気がありません」
「花も萎れてきています」
「日照りが続き」
「木に毎日水を与えよう」
 張騫は共に木を見る供の者達に話した。
「幸い街には泉があるからな」
「はい、豊かな水をたたえている」
「それがあります」
「確かに草木は枯れてきていますが」
「泉に水があり」
「人は暮らせているので」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「我々もな」
「はい、それでは」
「我々はですね」
「泉から水を運び」
「そうして気に水をやしますね」
「そうしますね」
「他の草木にもそうしよう、私もそうする」
 こう言ってだった。
 張騫は供の者達と共に街の草木石榴の木にもだった。
 水をやった、そうしていると街の草木は元気を取り戻した。だがそうしているうちにこの国を発つときが来てだった。
 張騫は出発準備を整えた、その夜に彼が一人部屋で酒を飲んでいるとだった。
 この国の服上着が赤で下は緑の若いはっきりとした目の若い女が来た、女は張騫に一礼するとこう言ってきた。 
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