イベリス
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第六十一話 ドーナツその十
「埼玉にもね」
「行きたいのね」
「機会があればね」
「それはいいことね、埼玉に偏見がないなら」
「ないわよ、東京以外の場所でも」
何処でもというのだ。
「行けるわ」
「それはいいことね、将来何処に行くかわからないからね」
「ずっと東京とは限らないわね」
「そうよ」
それこそとだ、咲は話した。
「日本とも限らないわよ」
「他の国に行くこともあるわね」
「場合によってはね」
「お仕事でね」
「日本の何処かもわからないし」
「海外かも知れないのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「それはね」
「そうなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「東京以外でもね」
「暮らせるのならいいのね」
「叔父さんみたいに言うのが一番駄目よ」
それこそという口調での言葉だった。
「本当にね」
「東京じゃないと駄目って」
「そう言うのがね」
まさにというのだ。
「まあ叔父さんの問題点はそれだけだけれどね」
「東京にこだわるだけなのが」
「そうよ、特に悪いことしないから」
だからだというのだ。
「いいと思うわ」
「真面目でいいってことね」
「真面目が一番なのよね」
「人間は」
「多少やんちゃでもね」
それでもというのだ。
「人の道は踏み外さないことよ」
「麻薬やってりいじめやったり」
「そうした外道なことはしないことよ」
「それが真面目なの」
「真面目って私が思うに範囲が広いのよ」
「制服しっかり着てお勉強するだけじゃないの」
「そういうのじゃなくてね」
咲に真面目な顔で話した。
「人の道は踏み外さない」
「それが真面目なのね」
「そう、それでそれが出来ていたら」
それならというのだ。
「もうね」
「真面目なのね」
「そう、それで叔父さんはね」
「人の道を踏み外してないから真面目ね」
「行いも時間厳守で服もしっかりしていてでしょ」
「ガソリンスタンドで働いている時もサラリーマンそのものよ」
「そう、もうそれは私から見れば真面目も真面目で」
それでというのだ。
「生真面目糞真面目ってね」
「そこまでいくのね」
「だから叔母さんと一緒に私のファッションまで言うけれどね」
「最近は言わないわよ」
苦笑いになった愛に話した。
「それはね」
「そうなの」
「だから安心してね」
「まあそれならいいけれどね」
「けれどお姉ちゃん気にしてなかったでしょ」
「気にしてなくても言われないならその方がいいわよ」
言われるよりはというのだ。
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