母親が同じでも

「はじめまして」
「この度は来て頂いて有り難うございます」
「母も喜んでいます」
「遠いところから来て頂き有り難うございます」
「よく来て頂きました」
「いえ、こちらこそ呼んで頂き有り難うございます」
　浩介は妹達に言葉を返した。
「では母に最後のお別れを」
「お願いします」
「そうして下さい」
　妹達もこう応えてだった。
　二人の父を紹介した、彼とのやり取りは実にあっさりしたものだった。
　葬式が終わると夫婦はすぐに名古屋駅に向かい新幹線に乗った、そして大阪に戻る中で妻は隣に座っている夫に言った。
「何か兄妹とはね」
「思わなかったな」
「見ていてね」
「俺もそう思っていた」
　浩介自身もというのだ。
「どうもな」
「そうだったのね」
「お袋の旦那さんだった人は尚更だったな」
「もう何でもない」
「そうした感じだったな」
「お義母さんを送る時も」
「何かな」
　浩介は難しい顔で述べた。
「物心つく前に別れてずっと会ってないとな」
「お母さんでもなのね」
「何も思わなくてな、妹でもな」
「ずっと会ってなくて初対面だと」
「妹と思えないな」
「そうなのね」
「全くな、だからな」
　そうだったからだというのだ。
「ああしてな」
「他人行儀だったのね」
「あっちもだっただろ」
「そうね、妹さん達も」
「血はつながっていても絆がないとな」　
　そうであるならというのだ。
「何も思わないってことだな」
「そういうことね」
「ああ、もうあそこに行くことはないな」
　妹達のところにというのだ。
「だから二度とな」
「妹さん達ともお会いすることはないね」
「いるっていうだけでな」
　ただそれだけでというのだ。
「終わりだな」
「そういうものなのね」
「血がつながっていても絆がないならな」　
　それならとだ、夫は感慨が何もない顔で述べた。そして二人で家に帰ると名古屋駅で買ったういろうを食べた、そちらはまた食べようと夫婦で話した。


母親が同じでも　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２２・７・２２