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××のした人生最大の失敗

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終わり

嘘、嘘だ。目の前の光景に目を疑う。他人の空似だと思いたかった。信じたくなかった。でも、そこに居たのは…
 
 
「いやぁぁぁぁ!!!!」
 
 
瞬間。体が勝手に動く。
男が数メートル吹っ飛ぶ。念のために持ってきていた伸縮式警棒でぶん殴ったからだ。男が落としたスマホをバキバキに叩き壊す。これで撮影されたことりちゃんのデータは消えただろう。
 
 
「は? おいおいオイ!!! 何してんだテメェ!!!!!」
 
 
よく見るともう1人男がいた。きっとこいつの仲間なんだろう。
 
 
「お前も写真とか動画とか撮ってるんだろ。消すかスマホ壊すか。選べよ」
「あ? てめぇ何様のつもりだ?? 死ねy」
「待て!!」
「カズ!?」
「武器持ちに勝てる訳ないだろ……言う事聞いとけ……」
「……ッこれでいいかよ」
 
 
そう言いながらスマホの写真フォルダを見せてきた。ことりちゃんの写真や動画は無かった。
 
 
「……後は金輪際ことりに近づくな。それが約束できるなら見逃してやる。下手な事は考えるなよ。顧客のデータは残してある。僕に何かあればそこのお前も逮捕だ」
「……いいですよ。そろそろその子には飽きてきたし、あなたみたいな面倒な人に捕まるのももう嫌ですし。行くよ……いたたた……」
「……クソ!! まぁいいよ! そいつとはもうする気無かったしな! ケッ……なぁカズ〜俺来た時あの子リスカしててよ〜マジ気色わるい……」
 
 
そう言いながら2人とも出ていった。とりあえずは成功だ。
 
 
「ことりちゃん!! 大丈……」
 
 
そう言いながら振り向くと床に倒れ涙を流しながらうわごとを呟くことりちゃんの姿があった。
 
 
「注射……はやく……もう何も……考えたくない……」
 
 
見ていられない。薬を使い続けてこうなった人はいくつも見てきたけど、それの対処法なんて考えた事も無かった。救急車?警察?ダメだ。薬の入手経路から僕が売人やってることがバレて捕まるかもしれない。でもこのまま連れて帰ってもこの状態じゃ何をしでかすか分からない。どうしよう。どうすればいい。ことりちゃんが無事に生き続ける事ができて僕も捕まらない方法。何か……何か無いのか……
 
 
そうだ。あるじゃないか。簡単な方法が。僕がことりちゃんと一緒に居続けられる、唯一の方法が。
 
そして僕は……
 
 
 
 
「大丈夫。僕がいるよ。ずっと一緒にいてあげる。だから落ち着いて…ね?」
 
 
 
僕は、ことりちゃんの腕に薬を打ち込んだ。
 
 
 
────────
 
 
楽人家、朝。
 
 
「っ……………ぁ……………」
 
 
ことりちゃんが床に転がって痙攣している。薬の余韻に浸っているようだ。
 
あれから。僕は大学を辞め、学費になる予定だったお金を崩して仕入れた薬を全てことりちゃんの為に使っている。ことりちゃんには辛くなったらいつでも来るように言ってあり、それで今日も朝から来てくれている。
 
しばらくして落ち着いたらしくことりちゃんが起き上がる。
 
 
「……ごめんなさい、楽人くん……」
「いいんだよ」
「私がこんな事になってなければ大学も辞めなくて良かったのに……」
「大丈夫、こうしてことりちゃんと一緒に居られるだけで僕は十分だよ」
「楽人くん……」
 
 
ことりちゃんと見つめ合う。あぁ可愛いなぁ。
 
 
「……ことりちゃん」
「……何?」
「実は……昔から僕は……その、君のことが好きだったんだ」
「…………えっ?」
「こんな事になっちゃったけど……伝えておきたくて……」
 
 
つい言ってしまった。まぁ学費も要らなくなったし薬の事を隠す必要もなくなったし、妥当なタイミングではあった。反応を伺う。
 
 
「………………」ポロポロ
「こ、ことりちゃん!?」
 
 
ことりちゃんが目から涙を流していた。突然の事に取り乱す。
 
 
「どうしたの!? もしかして何かしちゃった!?」
「ううん、私、妹のようにしか思われてないと思ってたから……嬉しくて……。私も楽人くんのこと……好きだよ……」
「ことりちゃん……」
 
 
幸せだ。これが両想いってやつなのか。嬉しすぎる。これからもずっと面倒をみよう。ずっと一緒にいよう。
2人で抱き合う。顔が近い。
 
 
「楽人くん……」
「ことりちゃん……」
 
 
どちらからともなく互いに口を近づける。
 
口と口が触れ合うか触れ合わないかの瞬間。
 
 
「動くな!!! 警察だ!!!」
 
 
いきなりそれなりの人数が家に入ってきた。
思わず立ち上がる。
 
 
「白瀬楽人。麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕する」
 
 
この生活を続ける限りいつかは来るかもなとは薄々思っていた。けど、今か。
ふと、ことりちゃんの方を見る。いつの間にか穂乃果ちゃんと海未ちゃんが居た。怯えるような、蔑むような顔をしてこっちを見ている。そうか。通報したのはこの2人か。きっと窓の隙間かどこかから見たのだろう。
 
 
「待って!! 違うの!! 楽人くんは!! 離して!! 楽人くん!! 楽人くん!!!!」
 
 
「ごめんね、ことりちゃん」
 
 
両手に手錠がかけられる。
 
 
「楽人くん……私たち……信じてたのに……」
 
 
あぁ、そうだ。僕は言い訳をしていただけだ。ことりちゃんを助ける為と言いながら弱っているところにつけこんで、僕なしでは生きられなくした。ことりちゃんと一緒に居たいがために僕のわがままに付き合わせていた。僕は人として、最低な事をしていたんだ。
 
 
「あなたは……あなたは最低です……!!!」
 
 
 
 
 
こうして僕とことりちゃんの日常は、呆気なく終わりを迎えた。 
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