| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ケントの木

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第三章

「これからはね」
「あの木を接ぎ木していって」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「日本全土に広まるよ」
「そうなりますね」
「そしてだよ」
 伊藤はここで笑顔になった、そのうえで山田に話した。
「この大学にもね」
「あの木が来るのですね」
「そうお願いしてるから」
「必ずですね」
「来てくれるよ」
 伊藤は笑顔のまま話した、そして実際にだった。
 彼等の大学にもその木が来た、木はすぐに実を実らせた。
 その実がたわわに実った木を見てだ、山田は共に見る伊藤に話した。
「いやあ、この林檎の実が落ちれば我々も」
「ニュートンみたいにだね」
「何かを発見出来ますかね」
「そうかもね、あとこの実は食べられるから」
「そうなんですね」
「基本料理用だけれど」
 それでもというのだ。
「早めに収穫して置いておいてね」
「ああ、熟させるとですね」
「甘くて酸味が利いた味になる層だから」
「そのまま食べてもいけますね」
「そうらしいよ」
「じゃあ今度食べますか」  
 山田は伊藤の話を受けてこう提案した。
「そうしますか」
「そうだね、じゃあね」
「はい、また今度」
「一緒に食べよう」
「そうしましょう」 
「そして」
 山田は確かな顔と声で話した。
「ニュートンの様に」
「学問の発見が得られる」
「そのことを期待しよう」
「それでは」
 こう二人で話して実際に日をあらためて林檎の実を食べた、その実は確かに美味かった。林檎を楽しむ二人を見てだった。
 天国のヴォルテールは共に食べている天国で知り合った友人に話した、見れば彼もその木の実を食べている。
「日本でも食べられるなんてね」
「思わなかったね、あの時は」
「今ではあの林檎の木は世界中に広まっていて」
「実も食べられているね」
「彼女が言ったことは実は本当かどうかわからないけれど」
「今はですね」
「真実になっているね、人々に知恵をもたらした木の実は」
 ニュートンに万有引力を発見させたそれはというのだ。
「今ではだよ」
「世界中で食べられているね」
「そして天国にいる我々もだよ」
「食べているね」
「それも美味しくね」
 ヴォルテールは友人に笑顔で食べつつ話した、そしてだった。
 食べた後で学問に励んだ、ニュートンの様に林檎から学問の発見を得られることを思いながら。日本の二人がそうであった様に。


ケントの木   完


                  2022・4・12 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧