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ケントの木

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第二章

「ウィルスに感染した苗木をそれに使うとね」
「接ぎ木にですね」
「なるから残念だけれど」
 それでもと言うのだった。
「焼却処分が言われているよ」
「あの、それはです」
 山田はここまで聞いて伊藤に切実な顔で話した。
「絶対にです」
「折角日本に来たからね」
「何とかしましょう」
「じゃあ二人で訴えよう」
「はい、そしてこのことは」
「日本の物理学全体でだね」
「訴えましょう」
 伊藤にこうも言った。
「そうしましょう」
「それがいいね」
「はい、あの木を守りましょう」
 こう言ってだった。
 山田は伊藤と共に日本の物理学界にニュートンの木を守る様に訴えた、その声はすぐに広まってだった。
 東京大学理学部からこう言ってきた。
「学術上貴重なものだからね」
「東大の方で、ですか」
「うん、あそこの小石川植物園に移してね」
 そうしてというのだ。
「ウィルス除去の研究対象になったから」
「そこで、ですね」
「あそこでね」
「助かりますか」
「そうなるよ」
「それは何よりです」
 山田は伊藤からその話を聞いて胸を撫で下ろして言った。
「これで助かるなら」
「全くだね」
「はい、そうしてですね」
「除去が成功したら」
 ウィルスのそれがというのだ。
「その時は二人で祝おう」
「そうしましょう」
 山田は伊藤に希望を見出している顔で応えた、そしてだった。
 結果の報告を待った、すると。
「そうですか、成功しましたか」
「そうなったよ」
 伊藤は山田に笑顔で応えた、二人共あれからそれなりに年齢を重ねている。
「有り難いことにね」
「そうですか」
「そしてね」
 山田は伊藤にさらに話した、今は助教授になっている彼に。
「これからは」
「はい、接ぎ木をしていきますね」
「そうなるよ」
「それは何よりです」
「ウィルスに汚染されていない接ぎ穂の切り出しに成功したから」
 だからだというのだ。 
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