クルティウス
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第二章
「どうもな」
「それはわかったが」
「しかしローマで最も貴重な宝物か」
「それは何だ」
「色々言われているが」
「一体何だ」
「割れ目が閉じられると素晴らしいものがローマに与えられるという」
神託を伺った者はこのことも話した。
「どうもな」
「そうなのか」
「不吉なものではないことはわかった」
「そのことはよかった」
「だがその素晴らしいものが何か」
「そのことも気になるしな」
議員達はあらためて考えた。
「ここはだ」
「是非共だ」
「その貴重な宝物が何か」
「まずはそのことを突き止めるか」
こう考えた、だが議員達が幾ら話してもだった。
それがわからず元老院としてローマの市民達にこの話をした、だが市民達もこれにはわからずだった。
「一体何だ」
「ローマで最も貴重な宝物とはだ」
「そう言われてもわからない」
「どうもな」
「色々あるが」
「一番は何だ」
誰もがわからなかった、それでだった。
市民達も議論をしたがわからなかった、しかし。
ある若い貴族、クルティウスという者がこう言った。長身で逞しい身体で引き締まった顔をしている。黒髪は短く黒い目の光は強い。
その彼がだ、自分の家の鎧兜に全身を包んで言った。
「ローマ一の宝物はこれだ」
「貴方の鎧兜か」
「それに槍に剣に盾か」
「それがか」
「そうだ、戦う為の武器であり」
そしてというのだ。
「ローマ一の勇者である私のものだからだ」
「それ故か」
「それがローマ一の宝というか」
「そうなのか」
「そしてこの馬もだ」
馬に乗っても言った。
「ローマ一の宝だ、その宝を今から割れ目に入れてローマに素晴らしいものが授かる様にしよう」
「あっ!」
誰もがクルティウスの行動に驚いた、見れば。
クルティウスは割れ目に飛び込んだ、それも乗っている馬を躍らせてだった。
市民達が驚く間に彼は割れ目に飛び込みつつ言った。
「愛するローマに最高の宝を!」
「クルティウス殿!」
ローマの者達が叫ぶその中でだった。
彼は割れ目に入った、誇らしい声と彼と共にと鳴く馬と共にそうして。
彼の声が聞こえなくなると割れ目は閉じられた、その後にだった。
割れ目があったそこに芽が出た、芽はみるみるうちに育ち。
木となったがその木はだった。
「無花果か」
「ローマの守護神マルスの木ではないか」
「それが出て来たぞ」
「これがローマの素晴らしいものか」
「そうか、わかった」
ローマのある老人がここで言った。
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