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カミソリシュート

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第三章

「ガラスの肩!」
「今日投げたら今月はもう終わりか!」
「デッドボールだけのピッチャーか!」
 星野は特にヤジった、そのヤジを聞いてだ。
 札幌のファン達は笑って言った。
「これだこれ」
「センさんのお得意のヤジだよ」
「マウンドの闘志もいいけれどな」
「この激しいヤジがいいんだよな」
「もう中日はこの二つがないとな」
「センさんはやっぱりチームの顔だな」
 ファン達は笑って言った、そしてだった。
 星野も波に乗ってだ、どんどんヤジって言った。
「名古屋もいいが札幌もいいな」
「ああ、名古屋だとファンも一緒にヤジってくれるけれどな」
「札幌のこの笑顔もいいな」
「また来たいな」
「そうだな」
「よし、ヤジも調子が出て来たぞ」 
 星野はまた笑って言った。
「じゃあもっとやるか」
「ああ、やってくれ」
「センさんのヤジを出してやれ」
「もっとな」
「そうしてやるか」
 星野はそれならとなってだった。
 平松をどんどんヤジった、横浜ナインはその彼を見て言った。
「センさん今日は絶好調だな」
「マウンドでも闘志剥き出しだけれどな」
「ヤジは特に凄いな」
「波に乗り過ぎだろ」
「中日としてはよくてもな」
「敵としてはたまったものじゃないな」
「ヤジも野球にはあってな」
 昭和の頃はそうした空気も強かった。
「プロなら特にだな」
「甲子園はこんなものじゃないがな」
「あそこはファン全体が凄いからな」
「球場全体でヤジってくるからな」
「いつも満員の甲子園でな」
「何万人が一度にな」
「巨人に対しては特にな」
 阪神ファンの巨人への敵意はあまりにも有名である、全人類普遍の敵をそれだけ憎んでいるということだ。尚平松はこの邪悪の権化である巨人を成敗する巨人キラーとしても有名なピッチャーである。 
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