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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

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霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の終

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇ミーナ・クリード
 本名はヴィルヘルミナ・クラウディス。「伝説世代」の1人であるディノ・クリードの妹であり、兄の背を追って一流のハンターを目指している美少女。武器はヒドゥガーIを使用し、防具はナルガシリーズ一式を着用している。当時の年齢は16歳。
 ※原案はmikagami先生。
 

 

 ――この戦いの後。ギルドから緊急派遣された医療班に救助され、クサンテやデンホルムをはじめとするハンター達は辛うじて一命を取り留めることが出来た。

 アーギル達の救助活動と応急処置が功を奏してか、拠点(ベースキャンプ)に搬送されていたギルドの防衛要員達も、全員生還を果たしている。狩猟設備が全壊するほどの苛烈な戦闘だったというのに、奇跡的にも犠牲者が出ることなく、リュドラキアの砦を防衛することが出来たのだ。

 ラオシャンロンの異常な暴走。特殊個体であるドスイーオスの出現。ミラボレアスの降臨。そして戦闘後に観測された、謎の紅い月と銀の翼。
 老山龍に関するこれまでの記録と照らし合わせても、不可解な点が余りにも多く、原因の究明はギルドの力を以てしても困難を極めているが。少なくとも今はただ、死者を出すことなくラオシャンロンを退けたことを喜ぶ時なのだろう。

 下位ハンターしか即応出来る戦力がいない状況だったというのに、1人の死者も出さずに老山龍を撃退せしめたのである。予想を遥かに上回るこの成果には、ドンドルマのギルドマスターも驚愕を隠し切れなかったらしい。

 旧シュレイド城に出現した伝説の黒龍も、「伝説世代」を筆頭とする英傑達によって討ち取られたのだという。
 現大陸の各地は今、黒龍の暴虐から世界を救った救世主達への賞賛の声に溢れているのだが――クサンテ達の活躍を知る者達は皆、次代の英傑達の将来へと思いを馳せていた。

 やがて彼女達は一人前の上位ハンターとして正式に認められ、その輝かしい戦果は瞬く間にドンドルマ中に知れ渡ることになるのだった。
 あの「伝説世代」の英雄達にも迫り得る、新たな逸材達が現れた。その逸話はやがて、「宝玉世代」という次なる神話の序章として語り継がれて行くことになる。

 ただ、クサンテ達が上位ハンターとしての活動を開始したのは、ラオシャンロンとの死闘が終わってから約1ヶ月が過ぎた頃のことであった。並外れた回復力を持つ彼らでさえ、命の危機に瀕するほどの重傷から全快するまでには、そこまでの期間が必要だったのである。
 怪我の治療、破壊された防具の更新、上位クエストに向けた武器の新調。それらを終えたところで、ようやく上位ハンターとしての新たなスタートを切れるようになったのだ。

「姫様、そのハイメタシリーズ……よくお似合いですぞ。オーダーレイピアの修理も無事に終わりましたし、いよいよ機は熟したようでありますな」
「えぇ……ここまで長かったわね、デンホルム。ついに……ついにこの時が来たのよ」

 次の活動拠点となる村への出発。その新たなる旅立ちの日を迎えたクサンテとデンホルムは、ドンドルマから発つ竜車の前で剣呑な表情を浮かべていた。

 見目麗しく気高い金髪の姫騎士と、その傍らに控えている巨漢の騎士。そんな2人は新進気鋭の有望株として、すでにドンドルマでも有名になっているらしい。
 道行く男達はクサンテの美貌と色香、そして防具でも隠し切れないほどのプロポーションに目を奪われている。隣に立っているデンホルムの威圧感が無ければ、何人もの男性ハンターが彼女に声を掛けていたのだろう。

「あの時、皆が来てくれていなかったら……私達も、きっとここには居なかった。彼らがくれたこのチャンスだけは、絶対に無駄には出来ないわ」

 ほぼ全壊してしまったアロイシリーズに代わり、ハイメタシリーズの防具を新調した彼らの姿に、周囲の人々が遠巻きに注目する中。「因縁の大猪(ドスファンゴ)」を狩るべく上位に駆け上がった姫騎士は、凛々しい眼差しで遥か遠方を見つめている。

 ロエーチェ。
 クゥオ・アルグリーズ。
 アーギル。
 リリア・ファインドール。
 フィレット。
 カヅキ・バビロン。
 エヴァンジェリーナ・アレクセーエヴナ・ゲンナージエヴィチ・グツァロヴァ。
 ルドガー。
 エクサ・バトラブルス。
 ジュリィ。
 ガレリアス・マクドール。
 エレオノール・アネッテ・ハーグルンド。
 ヒスイ・ムラクモ。
 ベン・イライワズ。
 ヴェラ・ドーナ。
 クウド・ウォーウ。
 アルター・グラミリウス。
 ジェーン・バレッタ。
 リリィベル。
 ソラン・ハーシャル。
 イヴ・オーマ。
 ブリュンヒルト・ユスティーナ・マルクスグラーフィン・フォン・ホーエンブルク。
 そしてバンホーと――リルス。

 彼らのおかげで、ここまで辿り着くことが出来た。今頃は彼らも各々の新たな活動拠点に向かい、上位ハンターとしての厳しい狩猟に身を投じているのだろう。
 ならば自分も彼らに続き、己の使命を果たさねばならない。愛する婚約者を目の前で奪った宿敵を、この手で討ち取らねばならない。

「さぁ……行くわよデンホルム! 次の活動拠点……『ロノム村』へッ!」
「ははッ!」

 そのために突き進んで来たクサンテ・ユベルブは。デンホルム・ファルガムを伴い、竜車に乗り込むと――運命の地へと旅立つのだった。
 上位昇格を賭けた老山龍との激闘が、「宝玉世代」の伝説を巡る序章となったように。この旅立ちこそが、クサンテにとっての「始まり」なのである。

(フィオレーネ様……私は必ず、あなたを超える剣士に成長して見せます。そして……愛しきアダルバート様。どうか、このクサンテを天の彼方から見守っていてください……!)

 彼女の物語は――この旅路の先から、本当の幕開けを迎えることになるのだから。

 ◇

 ――それから、半年以上もの月日が流れた頃。澄み渡る大海に面した観測拠点「エルガド」では、1人の怜悧な女騎士が遠い目で遠洋を眺めていた。
 爽やかな涼風に頬を緩め、凛とした眼差しで海の彼方を見遣るその麗しさは、どこかの王城の肖像画から飛び出して来たかのようである。

「遠い地に居る友人を想うような眼……だな。ユベルブ公国の方角を見ていたようだったが」

 そんな彼女の背に声を掛ける壮年の騎士は、女騎士が見つめていた方角とその表情から、胸中を看破していた。だが、彼の部下である女騎士は首を小さく左右に振り、苦笑を浮かべている。

「……友人と呼べるほどの深い仲ではありません。あまりに愚直で、無謀で、真っ直ぐで……とても放っては置けない。そのような騎士が、この海の向こうに居たのです」
「そうか……。ユベルブ公国は規模こそ小さいが、気高く凛々しい民に溢れた精強な国家だからな。()の国の近辺に居る騎士ならばむしろ、それが普通なのかも知れん」

 港町としての側面も持つこの地で、王国騎士達を率いている壮年の騎士――ガレアス。彼はその長い人生の中で、ユベルブ公国の風土についても熟知しているようであった。
 そんな彼の横顔を一瞥する女騎士――フィオレーネは。未熟な姫騎士の気高い眼差しを思い起こし、微笑を浮かべている。

「……えぇ。あの真っ直ぐさはきっと、彼女に限った話ではないのでしょう」

 次に会った時は、どんな剣士に成長しているのだろう。どれほど腕を上げているのだろう。そんな淡い期待が、その貌に顕れていた。

「さて……それでは、今日も訓練を始めるとしようか。準備は良いな? ミーナ」
「は〜いっ! よろしくお願いします、フィオレーネ教官っ!」

 やがて踵を返した女騎士は、新たな「教え子」に厳しい眼差しを向ける。そのプレッシャーをものともせず、ナルガシリーズ一式の防具を纏う1人の美少女は、溌剌とした声を上げていた。

 ――ミーナ・クリード、本名ヴィルヘルミナ・クラウディス。「伝説世代」の中でも最強格と噂されている、ディノ・クリードことグランディーノ・クラウディスの実妹である。

 ユベルブ公国に代々仕えている武家の名門・クラウディス家。その長兄であるグランディーノの背を追うように、修行の旅に出ていた彼女は今――フィオレーネの弟子として、このエルガドに身を置いているのだ。
 上位ハンターに相当する実力を証明出来なければ、婚姻に自らの意思を反映させることが出来ない……という切実な家の事情故に、彼女はフィオレーネの元で高みを目指しているのである。その小さな背に装備しているヒドゥガーIも、彼女自身のひたむきな努力によって練り上げられて来た逸品なのだ。

「よし……では、今日も私と共に飛竜種の討伐に赴くとしよう。言っておくが、あの『伝説世代最強の武人(ディノ・クリード)』の妹だからといって遠慮するつもりは毛頭ない。覚悟しておくのだな」
「もー、そんなのいつものことじゃないですかぁ! 狩場に居る時の教官が優しかったら、逆に怖いですよぉっ!」
「ふっ、言うようになったな。ならば次のクエストは、私抜きで討伐に向かって貰おうか? 大連続狩猟を単独(ソロ)で、だ」
「え、えぇーっ!? そんなぁ〜っ! フィオレーネ教官っ、待ってくださいよぉお〜っ!」

 小柄で可憐な容姿からは想像もつかない、その意志の強さ。そこに血統だけではない、確かな「素質」を見出したフィオレーネは、今日も教え子と共にクエストへと乗り出して行く。

 それは――ミーナの教導を終えた彼女が、「カムラの里」を救った「英雄」との出会いを果たした運命の日から、約数ヶ月前のことであった。
 
 

 
後書き
 今回の更新を以て、この霊峰編もとうとう完結となりました! 最後まで読み進めてくださった読者の皆様! 最後の最後まで応援して頂き、誠にありがとうございました! おかげ様で、この物語も無事に完結でございまする!(*≧∀≦*)

 シリーズ最新作「モンスターハンターライズ・サンブレイク」の要素も取り入れつつ、本編第1話と第2話の中間に当たるお話を書かせて頂きました。ここから拙作「故郷なきクルセイダー」の本編が始まる……という構成となっております(о´∀`о)
 本章の終盤でチラッと見えていたメル・ゼナとの決着も、ライズ主人公がキッチリ付けてくれるのだと思います(*´꒳`*)

 これにて「サンブレイク」の世界観設定を取り入れた霊峰編、そしてクサンテの前日譚も無事に完結となりました。ではではっ! またいつか、どこかでお会いしましょう〜。失礼しますっ!٩( 'ω' )و

Ps
 フィオレーネの大ファンと化しているクサンテがライズ主人公やミーナと出会ったら、相当めんどくさい感じで突っ掛かっていくんだろうなぁ……(ノД`) 
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